オワハラとは、企業側が就活生(就職活動生)に対し、就職活動を終えて自社の内定に応じるように強要するハラスメントです。
オワハラは社会的信用を大きく損なうだけでなく、損害賠償や罰則の対象にもなる可能性があります。そのため、採用活動を行う際には、オワハラに当たる言動をしないように、採用担当者の教育を適切に行いましょう。
本記事では、オワハラの概要や違法性、予防策などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
オワハラとは、「就活終われハラスメント」の略称です。
これは企業が内定や内々定を条件に、就職希望者に対して他社への就職活動を終わらせるよう、強要することをいいます。
特に近年では、新卒採用の場面において、優秀な学生を早い段階で囲い込もうとする企業が目立つようになりました。
本来であれば、学生は自由に就職活動を行い、時間をかけて自分に合った企業を探すのが望ましい姿です。しかし、企業の都合で学生に不当なプレッシャーが与えられ、不本意な形で就職活動を終えてしまうケースが問題視されています。
こうした状況に加えて、さまざまな種類のハラスメントがやり玉に挙げられる昨今の風潮が合わさり、「オワハラ」が注目されるようになりました。
問題社員のトラブルから、
オワハラの特徴は、他社の採用選考に参加しようとする就活生を妨害するものである点です。
たとえば、オワハラに当たる行為として、以下のような例が挙げられます。
自社の魅力を伝えて内定や内々定を受けてくれるようにアピールすることは、最終的な決断を本人に委ねる限り、正当な採用活動の一環として問題ありません。
しかし、自社の魅力を伝えるだけにとどまらず、他社の採用選考を受けさせないような働きかけをすると、オワハラに該当するので注意が必要です。
オワハラは、憲法で保障された職業選択の自由を侵害する違法行為です。
厚生労働省も、オワハラが違法行為(=不法行為、犯罪)になりうることについて注意喚起をしています。オワハラをした企業は、さまざまなリスクを負うことになるので十分ご注意ください。
参考:「学生の職業選択の自由を侵害する「オワハラ」は行わないでください!!」(厚生労働省)
日本国憲法第22条第1項では、「職業選択の自由」を保障しています。
職業選択の自由に基づき、学生などの就活生は、自分の意思で就職先を選ぶことが可能です。
しかし、企業からオワハラを受けた就職希望者は、採用される機会を失うことをおそれるあまり、就職先の選定について自由な意思決定ができなくなるケースが多くあります。
オワハラを受けたことによって内定や内々定を受諾しても、それは就活生が自由な意思で決めたのではなく、オワハラによる不当な圧力による強制的な決定であると評価されるでしょう。
オワハラは職業選択の自由を侵害するものであるため、不法行為(民法第709条)に該当する可能性があります。不法行為に当たるオワハラをした企業は、被害者である就活生に生じた損害(慰謝料など)を賠償しなければなりません。
企業によるオワハラの中には、就職希望者に対する脅迫的な言動が含まれるケースもあります。
就活生に対して脅迫をした人事などの担当者は、脅迫罪や強要罪によって処罰される可能性があるため、注意が必要です。
オワハラが発覚し、その事実が報道やSNSなどを通じて拡散されてしまうと、企業の社会的信用は大きく失墜してしまいます。
その結果、取引先から契約を打ち切られる、内定辞退が相次ぐ、採用選考に就職希望者が集まらないなどの致命的な悪影響が生じるおそれがあります。
オワハラによって優秀な就職希望者を囲い込もうとしても、中長期的な企業の成長にはつながりません。他社の採用活動への参加を不当に妨害するのではなく、自社の魅力を正面からアピールしましょう。
自社の採用活動においてオワハラを防止するため、企業は以下のポイントを意識した取り組みを行いましょう。
企業としてオワハラを防止する方針を掲げていても、採用担当者が熱心に就職希望者を勧誘するあまり、結果的にオワハラへ発展してしまうケースがあります。
採用担当者の独断専行によるオワハラを防止するためには、担当者向けに明確なガイドラインを示し、定期的な研修や教育を通じて周知徹底を図ることが重要です。
特に面接官として就職希望者と直接向き合う従業員に対しては、オワハラに当たるNG行動の具体例やオワハラによるリスクなどを、事前研修の際に周知徹底しましょう。
実際に採用選考を経験した内定者からフィードバックを受けて、採用活動の改善を図ることも、オワハラを防止する観点から効果的と考えられます。
若い世代の内定者は、上の世代である既存の従業員に比べてハラスメントに対する高い意識を持っていることも多いでしょう。そのため、従来の採用活動では許容されていた言動であっても、現代ではハラスメントとして受け止められる可能性が高くなっています。
内定者からのフィードバックは、世代間における感覚のずれを埋めるためにも役立つでしょう。
採用活動の中でオワハラが行われてしまうとすれば、それは企業の根底にある文化や考え方が反映されたものと考えるべきです。
「上意下達を重視し、部下の意思よりも上司の判断を優先する」という組織文化や考え方が根付いている企業では、それが採用選考の場面でも表れてしまい、オワハラが発生するリスクが高いと考えられます。
これに対して、普段から従業員の自由意思を尊重している会社では、就活生に対しても自由意思を尊重する姿勢が徹底され、オワハラが行われるケースは少ないと思われます。
企業の文化や考え方を変えることは、一朝一夕で成し得るものではありません。しかし、自由意思を尊重する企業文化を醸成できれば、ハラスメントの防止も含めて、現代にマッチした企業として魅力を高めることが可能です。
時代にそぐわない文化や考え方が残っている企業は、経営陣が中心となってそれを払拭するように努めましょう。
そうすれば、おのずとオワハラなどのハラスメントが少なく、従業員が安心して働ける企業へと変わっていきます。
採用活動を含む人事・労務管理については、法的リスクを適切に管理するため、弁護士に相談しながら対応することをおすすめします。
弁護士は、労働基準法その他の労働法令の規制を踏まえて、企業が人事・労務管理に当たり注意すべきポイントを具体的にアドバイスすることが可能です。
特にハラスメントについては、さまざまな種類がやり玉に挙げられている近年の風潮を踏まえつつ、企業の実情に合わせた適切なリスク管理方法を提案することができます。
従業員・内定者・採用選考の参加者などとの間でトラブルが発生した際にも、弁護士が全面的にサポートできるだけでなく、相手方との交渉や裁判手続きについて、代理人として対応することも可能です。
人事・労務管理についてお悩みの企業は、お早めに弁護士へご相談ください。
問題社員のトラブルから、
就活生に対して他社への就職活動の終了を強要する「オワハラ(就活終われハラスメント)」は、不法行為や犯罪に該当する可能性があるほか、発覚して拡散されれば企業イメージの失墜にもつながります。
採用選考の過程でオワハラが行われないように、担当者に対する研修・教育を徹底するなどの対策に努めましょう。オワハラを含むハラスメントを効果的に防止するためには、弁護士のアドバイスも役立ちます。
ベリーベスト法律事務所は、ハラスメントなどの人事・労務管理に関する問題や、その他の法的トラブルなどについて、いつでもご相談いただける顧問弁護士サービスをご提供しております。
ハラスメント予防に取り組んでいる企業や顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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