2025年05月14日
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私傷病休暇とは? 企業が知るべき制度の概要・取得手続き・注意点

私傷病休暇とは? 企業が知るべき制度の概要・取得手続き・注意点

私傷病休暇とは、業務外の怪我や病気で働けない従業員に対して、一定期間就業を免除する制度です。私傷病休暇は、法律上の制度ではありませんので、同制度を導入する場合には、各企業が独自に規定を設けなければなりません。

具体的な内容は、企業が自由に定めることができますが、私傷病休暇制度導入にあたっての注意点を踏まえて適切な制度設計が求められます。

今回は、私傷病休暇制度の概要、取得手続き、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、私傷病休暇とは?

私傷病休暇とは、どのような制度なのでしょうか。

  1. (1)制度の概要・定義

    以下では、私傷病休暇制度の概要と企業が私傷病休暇制度を導入するメリット・デメリットについて説明します。
    私傷病休暇とは、業務外の怪我や病気で働けない従業員に対して、一定期間就業を免除する制度です。
    「私傷病」が業務外で起きた怪我や病気を指す言葉ですので、業務上の怪我や病気に関しては、私傷病休暇ではなく労災保険の適用対象となります。

  2. (2)企業が自由に定めることができる

    私傷病休暇は、法律上の制度ではありませんので、私傷病休暇制度を設けるかどうか、設ける場合にどのような内容にするかは、基本的にはすべて企業が自由に決めることが可能です。

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2、私傷病休暇を導入するメリット・デメリット

  1. (1)導入するメリット

    ① 人材の流出を防げる
    私傷病休暇を導入することで、従業員の雇用を維持したまま療養を認めることができますので、貴重な人材の流出を防ぐことができます

    ② 企業イメージの向上
    また、私傷病休暇制度を設けていることをアピールすることで、企業イメージの向上につながりますので、優秀な人材の確保にも役立つと期待できます。

    ③ モチベーション・生産性の向上
    さらに、私傷病休暇制度があることにより、従業員も安心して働くことができますので、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
    それにより生産性が向上し、売り上げの増加も期待できます
  2. (2)導入するデメリット

    ① 復帰の目途が立たない場合の判断が難しい
    私傷病休暇を利用して療養している従業員がすぐに復帰してくれればよいのですが、復帰の目途が立たない状態だと、新たな補充人員を雇用するかどうかの判断で迷うことがあります。

    従業員を雇用すると簡単には解雇できませんので、従業員の補充の判断が難しいというのが私傷病制度のデメリットといえるでしょう。

    ② 休職期間中も社会保険料の支払いが必要
    後述するように休職期間中も社会保険料の支払いが必要になりますので、その点も企業側のデメリットになります。

3、私傷病休暇中の給料や社会保険料について

私傷病休暇中の給料や社会保険料は、どうなるのでしょうか。

  1. (1)私傷病休暇中の給料は就業規則などの規定次第

    私傷病休暇は、法律上の制度ではありませんので、休職期間中の給料を無給とするか有給とするかは企業が自由に定めることができます
    給料は、労働者による労働の対価として支払われるものですので、休職期間中に労働の提供ができていないのであれば、私傷病休暇中の給料を無給にしたとしても問題はありません

    私傷病休暇中の給料の取り扱いについては、就業規則に定めるのが一般的です。
    どのような制度設計にするか慎重に検討するようにしましょう。

    なお、一般的には、休職期間中は給料を支払わない旨の定めを設けている企業が多いです。

  2. (2)私傷病休暇中も社会保険料の納付は必要

    私傷病休暇中でも健康保険や厚生年金などの社会保険料は発生しますので、労働者負担分は労働者が、会社負担分は会社が負担して納付しなければなりません

    通常は、給料から社会保険料が天引きされていますが、私傷病休暇中は給料の支払いがないケースがほとんどです
    その場合、会社側は給料から労働者負担分の社会保険料を控除することができませんので、以下のような方法で労働者負担分の社会保険料を徴収する必要があります。

    • 休職中の従業員に請求書を送付して振り込んでもらう
    • 傷病手当金を会社が代理受領して、社会保険料を控除した上で、従業員に支給する
  3. (3)会社側が社会保険料を立て替えてるのは?

    会社側で労働者負担分の社会保険料を立て替えて支払うという方法も考えられますが、労働者の怪我や病気が治癒せずにそのまま退職になると、立て替え分の社会保険料の回収が困難になる可能性がありますので、避けた方がよいでしょう。

4、私傷病休暇に関する注意点

私傷病休暇制度の導入および運用に関しては、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)制度内容を従業員に周知する

    私傷病休暇制度を導入した場合には、従業員が私傷病休暇を取得できるよう制度内容や取得手続きの流れなどを周知するようにしましょう。

    私傷病休暇制度を導入しただけで、周知をしていなければ、形式だけの制度導入にしかならず、十分な効果を発揮することができません。
    そのため、制度内容の周知とフォロー体制の整備が重要になります。

  2. (2)健康保険からの傷病手当金の案内をする

    私傷病休暇中に会社から給料が支払われない従業員は、健康保険の「傷病手当金」を利用することにより療養中の収入の補償を受けることができます。
    従業員の中には、傷病手当金の制度を把握していない人もいると思いますので、会社側できちんと案内してあげてください

    傷病手当金とは
    被保険者が怪我や病気のために働くことができなくなった場合に、休業4日目以降から休んだ日に対して手当てが支給される補償制度です。

    会社から給料の支払いがなかったとしても、健康保険の傷病手当金を利用すれば、経済的な不安なく療養に専念することが可能です。

  3. (3)私傷病休暇に代えて有給休暇を取得することもできる

    私傷病休暇は、基本的には無給ですので、従業員が療養中の生活について不安に思っている場合には、有給休暇の取得を促すことも考えられます。

    健康保険の私傷病手当金も利用することができますが、私傷病手当金で補償されるのは給料の3分の2に相当する金額ですので、全額が補償されるわけではありません
    そのため、給料の満額を支払ってもらいたいという従業員がいる場合には、有給休暇の取得が選択肢のひとつとなるでしょう。

    従業員から有給休暇と私傷病手当金のどちらを取得すべきか相談を受けた場合には、それぞれのメリット・デメリットをしっかりと説明してあげましょう

  4. (4)休職中も定期的に状況確認をする

    休職期間中は、求職者から定期的に怪我や病気の状態についての報告を受けるなど、休職者の状況確認を行うようにしましょう

    定期的に状況確認をすることで、仕事復帰の時期などを把握することができますし、復帰時のサポートや受け入れ態勢を整えることも可能になります。

  5. (5)復職できない従業員を解雇する際の注意点

    私傷病休職期間が満了しても、従業員の怪我や病気が治癒せず、職場への復帰が困難な場合には、就業規則の規定に基づき、解雇または自動退職となるのが一般的です。

    休職期間満了を理由に解雇するのであれば、その旨を解雇事由として就業規則に規定しておく必要があります。
    この場合にも解雇権濫用法理の適用がありますが、休職期間満了を理由とする解雇であれば、違法無効と判断されるケースは少ないでしょう。

    不当解雇のリスクを減らしたい場合
    休職期間満了を理由に自動退職となる旨の定めをあらかじめ設けておくとよいでしょう。
    自動退職の定めがあれば、解雇の問題は生じませんので、解雇に関する争いを回避することができます。

5、労働問題に関するご相談は弁護士・社労士へ

私傷病休職制度以外にも、企業が独自に設定することができる休暇制度には、以下のようなものがあります。

  • 病気休暇
  • ボランティア休暇
  • リフレッシュ休暇
  • 慶弔休暇
  • 夏季休暇

このような休暇制度を導入することで従業員のモチベーションも向上しますので、積極的に導入を検討していくとよいでしょう。

ただし、休暇制度導入にあたっては、制度設計や就業規則の変更、従業員への周知、フォロー体制の整備などさまざまな手続きが必要になります。

従業員にとって使いやすい制度を導入するには、弁護士や社労士のアドバイスやサポートが必要になりますので、まずは相談するとよいでしょう。

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6、まとめ

私傷病休暇制度は法律上の制度ではありませんので、制度を導入するにあたっては就業規則の見直しなどが必要になります。
適切な制度設計にするためには、弁護士や社労士のアドバイスやサポートが必要になりますので、まずは相談するのがおすすめです

ベリーベスト法律事務所では、弁護士・社労士が在籍しており、各企業様の実態にあわせた最適なご提案が可能です。
私傷病休暇制度などの導入をご検討の企業は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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