企業法務コラム
マンション購入者向けの情報サイト「マンションコミュニティ」には、購入時の参考になる情報が投稿されている一方で、事実無根の悪評が投稿されることもあります。
自社が販売するマンションの根拠がない悪評を発見したら、弁護士にご依頼の上で削除請求を行いましょう。
本記事では、マンションコミュニティに投稿された口コミを削除する方法や、投稿者に対して損害賠償を請求する方法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
マンションコミュニティには削除ガイドラインが設けられており、その内容を踏まえて削除請求を行えば、不適切な投稿を削除してもらえる可能性があります。弁護士にご依頼の上で、速やかな投稿の削除を目指しましょう。
「マンションコミュニティ」とは、分譲マンションに関する情報が投稿されている掲示板サイトです。
マンションコミュニティは、これからマンションを購入しようと考えている人などに閲覧されています。個別の物件について、マンション住民(居住者)等により実際の住み心地や周辺地域などの情報が投稿されているので、多くのマンション購入希望者が参考にしています。
閲覧者が多い分、マンションコミュニティに悪評が投稿されてしまうと、マンションの販売活動に悪影響が生じかねません。投稿内容が事実であれば仕方がない部分もありますが、中には事実無根の誹謗中傷にあたる投稿も散見されます。
このような不適切な投稿を発見したら、速やかに削除請求を行いましょう。
マンションコミュニティでは、口コミの削除依頼等に関するガイドラインが公表されています。
同ガイドラインでは、建設的な情報交換を妨げる、嫌がらせや誹謗中傷だとすぐにわかる書き込みについては厳しい姿勢で臨む旨が記載されています。
その一方で、「事実無根の内容である」といった点のみの指摘については、事実を具体的に確認することが困難であるなどの理由から、削除や発信者情報の開示に応じることができない場合が多いとも記載されています。
ただし、プロバイダ責任法(プロバイダ責任制限法)に基づく請求があり、開示が妥当であると判断した場合や、裁判所の決定・命令等がある場合については、発信者情報の開示に応じるとしています。
上記の記載内容を踏まえると、フォームを通じた削除依頼に加えて、裁判手続きを通じた請求を併用することが、投稿の削除(および損害賠償請求)を成功させるためのポイントといえるでしょう。
マンションコミュニティの口コミを削除させるためには、主に以下の2つの方法が考えられます。
1つ目の方法は、マンションコミュニティのサイト上に設置されたフォームからの削除(送信防止措置)依頼です。
問題となる投稿の右上部分にある三点リーダ(…)をクリックすると、削除依頼フォームにアクセスできます。① 名前、② 削除すべき理由、③ 立場、④ 理由の詳細を入力して、削除依頼を送信しましょう。
建設的な情報交換を阻害する、嫌がらせや誹謗中傷であると断定できる書き込みについては、運営会社によって速やかに削除される可能性があります。
その一方で、事実無根の内容であるなどの理由による削除請求については、運営会社における事実確認が困難であるため、削除に応じてもらえないケースが多いです。
なお、運営会社が削除しないという決定をした場合、削除依頼者に対する返信・連絡はしない旨が明示されています。数日たっても投稿が削除されなければ、裁判所に対する投稿削除の仮処分命令の申し立て等を検討しましょう。
運営会社が任意の削除に応じない場合は、裁判所に対して投稿削除の仮処分命令を申し立てましょう。
仮処分命令とは、著しい損害や急迫の危険を避けるために行われる、裁判所の暫定的な処分です。誹謗中傷等の投稿がなされた状況では、被害者に著しい損害や急迫の危険が生じ得るため、投稿削除の仮処分命令が発令されることがあります(民事保全法第23条第2項)。
投稿削除の仮処分命令は、誹謗中傷等の投稿がなされたサイトの運営会社を債務者として申し立てます。
その後、裁判所において審尋手続き(運営会社の言い分を聞く手続き)が行われ、仮処分命令の要件について審査が行われます。被害者に著しい損害や急迫の危険が生じるおそれがあり、これを避けるために「必要がある」と判断した場合、裁判所は投稿削除の仮処分命令を発令します。
仮処分命令の発令後、それを提示して再度投稿の削除依頼を行えば、運営会社は削除に応じるのが一般的です。
マンションコミュニティに投稿された悪評により、販売活動に悪影響が生じるなど損害を被った場合は、投稿者に対して損害賠償を請求できます(民法第709条)。
損害賠償請求にあたっては、まず投稿者を特定する必要があります。そのために、発信者情報開示請求という手続きを行います。これは、発信者の情報を開示するようサイト管理者やプロバイダに請求するものです。(この手続きをもってしても、発信者の特定がなされないこともあります)
投稿者が特定できたら、示談交渉や訴訟などを通じて損害賠償請求を行いましょう。
発信者情報開示請求とは、誹謗中傷等の有害な情報により損害を被っている被害者が、投稿先サイトの運営会社や投稿に用いられた端末のインターネット接続業者に対して、投稿者の個人情報の開示を請求する手続きです(プロバイダ責任制限法第5条)。
サイトの運営会社に対し、発信者情報開示請求をすると、運営会社が保有している投稿者のIPアドレス等の開示を受けられます。
それを用いてインターネット接続業者に対する発信者情報開示請求を行えば、端末の契約者である投稿者の個人情報の開示がなされる可能性があります。
また、2022年10月1日に施行された、改正プロバイダ責任制限法により、サイト管理者およびインターネット接続業者に対する発信者情報開示請求は、実質的にひとつの手続きで行うことができるようになりました(=発信者情報開示命令の申し立て)。
従来は投稿者の情報を得るまで数カ月かかることがありましたが、発信者情報開示命令の新設により、この期間が少し短くなるケースもあります。
マンションコミュニティに悪評を書き込んだ投稿者が特定できたら、損害賠償請求を行いましょう。
損害賠償請求を行う際には、まず内容証明郵便で請求書を送付するのが一般的です。請求書には、支払いを求める金額や支払期限を記載します。
実際には、請求書の送付を受けた投稿者から連絡があり、示談交渉が始まるケースが多いです。投稿者が減額等を求めてきた場合には、被害の状況などに照らして応諾するかどうかを検討しましょう。
示談交渉がまとまれば、示談金額や支払い方法などを記載した合意書を締結した上で、その内容に従って示談金を精算します。
示談交渉がまとまらない場合は、裁判所に対して損害賠償請求訴訟を提起しましょう。
損害賠償請求訴訟では、問題となった投稿の内容に加え、その投稿によって被った損害の内容・金額を立証しなければなりません。特に投稿と損害の間の因果関係については、投稿者から反論されることが多いので、慎重な立証活動が求められます。
損害賠償請求訴訟は長期化することが多く、半年から1年程度かかることも少なくありません。弁護士と協力して、粘り強く訴訟を戦いましょう。
書き込まれた悪評の内容が刑法上の罪に当てはまる条件を満たしていれば、威力業務妨害罪・信用毀損(きそん)罪・偽計業務妨害罪など、刑事面で訴えることもできます。書き込んだ相手に刑事的な処分も求めるなら、損害賠償と合わせて弁護士に相談しましょう。
・偽計業務妨害罪・信用毀損罪とは
偽計業務妨害とは、刑法233条に定められている罪です。条文には、
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
と書かれています。
デマを流したり、従業員をだましたりして、仕事の邪魔をする行為が対象です。
・威力業務妨害罪とは
威力業務妨害とは刑法234条に定められている罪です。刑法234条には、
刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
と書かれています。
前条は上述の通り偽計業務妨害罪です。
「威力」というと、けがをさせるといった行為が典型例ですが、インターネット上の誹謗中傷によって人を威迫する場合も「威力」にあたる可能性があります。
マンションコミュニティに投稿された口コミを削除させたい場合は、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は、民法やプロバイダ責任制限法などの法的根拠に基づき、説得的な理由を付して投稿の削除請求を行います。また、投稿者を特定して損害賠償を請求したい場合にも、発信者情報開示請求や示談交渉・訴訟の対応を全面的に代行いたします。
事実無根の悪評による損害を最小限に抑えるには、一日も早く投稿を削除させることが大切です。マンションコミュニティの口コミの削除請求は、弁護士にご依頼ください。
マンションコミュニティに投稿された悪評による損害を防ぐには、一刻も早く投稿を削除させることが大切です。
投稿が削除されるかどうかは状況によりますが、法的根拠に基づいて削除請求を行えば、削除される可能性が高まりますので、弁護士への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、インターネット投稿の削除請求に関するご相談を随時受け付けております。マンションコミュニティの投稿を削除させたい企業のご担当者の方は、当事務所にご相談ください。
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