口コミを投稿できるウェブサイトの管理者は、不適切な口コミについてユーザーから削除請求や発信者情報開示請求を受けることがあります。
削除請求や発信者情報開示請求を受けた場合は、プロバイダ責任制限法のルールを踏まえつつ、弁護士に相談しながら適切に対応しましょう。
本記事では、サイト管理者が知っておきたいプロバイダ責任制限法のポイントを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
プロバイダ責任制限法(※)とは、インターネット等を通じた情報流通による権利侵害に関して、以下のルールや手続きを定めた法律です。
(※正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)
プロバイダ責任制限法の趣旨は、インターネット等を通じた情報流通で権利侵害があった場合について、プロバイダの損害賠償責任の制限、及び発信者情報開示の権利の定めるとともに、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続を規定するというものです(プロバイダ責任制限法1条参照)。
例えば、誹謗中傷などの権利侵害があった場合、プロバイダに対し、迅速な削除を促す仕組みが整備され、また、損害賠償請求等の際に必要な投稿者の情報を開示させることを意図して、必要な規制や手続きなどが定められています。
口コミサイト・掲示板サイト・SNSなどを運営するサイト管理者(特定電気通信役務提供者)は、権利が侵害されている内容の流通および送信防止(削除)に関して、被害者や発信者(投稿者)に対する損害賠償責任が制限されています(プロバイダ責任制限法第3条)。
情報プラットフォームの運営を過度に萎縮させないようにすることと、問題のある投稿の速やかな削除を促すことが目的です。
被害者との関係では、送信防止措置をすることが技術的に可能な場合で、情報流通による権利侵害を知っていたか、または知ることができたと認めるに足りる相応の理由があるときを除き、権利侵害情報の流通について損害賠償責任を負いません(同条第1項)。
また、発信者との関係では、投稿の削除等を行ったとしても、権利侵害があると信じるに足りる相当の理由がある場合、または発信者に対して意見照会を行った後7日以内に送信防止措置をすることに同意しない旨の回答がなかった場合には損害賠償責任を負いません(同条第2項)。
このように、発信者が削除に同意した場合や回答をしなかった場合、プロバイダ側が投稿を削除(=送信防止措置)したとしても、プロバイダ側が責任を負いません。そのため、プロバイダ側による任意の削除が見込まれるため、早期の被害回復が可能となります。
インターネットを通じた情報流通によって権利を侵害された被害者は、サイト管理者やインターネット接続業者に対して、どこの誰が投稿したのかという情報の開示を請求できます(これを発信者情報開示請求といいます。プロバイダ責任制限法第5条)。
発信者情報開示請求を行うことで、被害者は発信者の個人情報を特定でき、損害賠償請求などを行うことが可能となります。
発信者情報開示請求は、従来は裁判所に対する仮処分申立てによって行うのが一般的でしたが、2022年10月以降は発信者情報開示命令の申立て(後述)によって行われることもあります。
発信者情報開示請求は、サイト管理者から投稿に用いられた端末のIPアドレスなどの開示を受け、それをもとに特定したインターネット接続業者から発信者の個人情報開示を受ける、という2段階で行われることが多いです。
従来のプロバイダ責任制限法では、2段階の発信者情報開示請求を独立した仮処分申立てによって行う必要があったため、開示までに時間や費用がかかる点などが問題視されていました。
そこで、2022年10月1日に施行された改正法により、新たに発信者情報開示命令事件に関する裁判手続きが設けられました。
発信者情報開示命令を申し立てれば、2段階の発信者情報開示請求が実質的に1つの手続きで審理されるため、開示までの時間が大幅に短縮されます。
他人が投稿できる機能や口コミ機能を備えたサイトには誹謗中傷等が投稿されることもあるため、もしサイトを運営しているならば、ユーザーから削除請求を受けることも想定しておかなければなりません。
口コミや投稿内容の削除請求を受けた場合は、以下の対応を行いましょう。
口コミや投稿内容の削除請求を受けたら、被害者の主張するような権利侵害が存在するのかどうかを法的に検討しましょう。
口コミや投稿によって生じ得る主な権利侵害は、名誉毀損・プライバシー権侵害・侮辱・脅迫・著作権侵害・性被害(リベンジポルノや児童ポルノ)などです。法律の規定を踏まえて検討することに加えて、あらかじめ削除ガイドラインを策定・公表しておくと、削除の基準を明確化できます。
削除申請フォームなどを通じて直接削除請求を受けた場合は、サイト管理者は、口コミや投稿内容を削除すべきかどうか検討しなければなりません。
明らかな権利侵害に当たる場合は、削除しなければ被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があるので、速やかに削除しましょう。
一方、削除すべきかどうかの判断が難しい場合は、サイトのポリシーによって対応が分かれる傾向にあります。被害者保護を重視して削除するか、それとも表現の自由を尊重して削除せずにおくか、弁護士に相談しながら適切に判断しましょう。
また、判断が難しい場合は、必要に応じて、発信者に対し意見照会の手続きを行い(プロバイダ責任制限法第3条2項)、削除に対応するか否か判断することになります。
口コミや投稿による誹謗中傷等の被害者は、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てることがあります。
その場合は、裁判所の判断に従って対応する必要があります。裁判所によって投稿削除の仮処分命令が発令されたときは、速やかに問題の投稿を削除しましょう。
誹謗中傷等の違法な口コミや投稿が投稿された場合、サイト管理者は、削除請求を受けたり、発信者情報開示請求を受けたりすることがあるため、注意しなければなりません。
削除請求をされた場合、上発信者に対する意見照会を行い(プロバイダ責任制限法第3条2項)、発信者の反応に応じて、削除するかどうか決めることになります。発信者が削除に同意しないことを明らかにした場合、基本的には、裁判手続の結果を待って、その結果に従った対応をすることになるでしょう。
一方で、発信者情報開示請求への対応は、基本的に、裁判手続の結果を待って、その結果に従って行うとよいでしょう。裁判所によって発信者情報開示の決定や命令等がなされた場合は、その内容に従って開示を行いましょう。
他人が投稿できる機能を持ったサイトの管理をしているのであれば、トラブルの予防・対処のために顧問弁護士と契約することをおすすめします。
弁護士は、サイトの管理に関して主に以下のサポートを行っています。サイト管理についてお悩みの方は、一度弁護士へご相談ください。
他人が投稿できる機能を持ったサイトでは、利用規約や削除ガイドラインなどを適切に定めることが大切です。
弁護士は、法律のルールや想定されるトラブルなどを踏まえた上で、サイトの実情に合わせた利用規約や削除ガイドラインなどの作成をサポートいたします。
削除請求や発信者情報開示請求を受けた場合には、権利侵害の有無を検討した上で、プロバイダ責任制限法のルールを踏まえて対応する必要があります。
弁護士は、各種請求への適切な対応についてアドバイスするとともに、裁判手続の対応については代理することが可能です。
サイトを安定的に運営するためには、プロバイダ責任制限法などの法律のルールを踏まえた対応が必要です。ユーザーとのトラブルを予防するため、弁護士のサポートを受けながら適切なサイト設計を行いましょう。顧問弁護士と契約すれば、サイト運営上の疑問点などをいつでも相談できます。
ベリーベスト法律事務所は、インターネット上のサイト運営に関するご相談を随時受け付けております。また、クライアント企業のニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスもたいへん便利です。
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