企業法務コラム
リベートとは、主にメーカー側が販売促進を目的として、流通業者の取引高に応じて、仕入代金の一部を払い戻すことをいいます。
なかには、リベートといえば賄賂のような違法なイメージを持たれる方もいますが、リベート自体が直ちに違法になるわけではありません。しかしリベートの手段・態様によっては、独占禁止法上、違法なリベートになる可能性があるため、注意が必要です。
本コラムでは、リベートとは何か、リベートのメリット・デメリット、リベートに関する法律上の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
最初に、リベートとはどのようなものなのか、概要とキックバックとの違いについて説明します。
リベートとは、主にメーカーが流通業者(卸売業や小売業など)の取引高に応じて、仕入代金の一部を払い戻すことです。
種類としては、大きく分けて「支払リベート」と「受取リベート」の2つに分けられます。
リベートは、仕切価格の修正や販売促進などさまざまな目的で行われ、商品を供給する側、あるいは仕入れる側が取引量を増加させ利益を拡大する手段として直ちに違法になるわけではありません。
リベートと似た言葉に、キックバックというものがあります。両者ともに同様の意味を持つ言葉であり、実質的に大きな違いはありません。
もっとも、キックバックは比較的マイナスな印象を与える言葉になるため、ビジネスシーンでは、キックバックよりもリベートの方がよく用いられています。
2章では、リベートにどのようなメリットとデメリットがあるのかについて、解説します。
リベートを渡すメーカー側には、小売店内で効果的な商品配置や販売促進キャンペーンを実施することができ、競合他社よりも有利な立場で取引を行うことができるというメリットがあります。メーカーが好条件のリベートを支払えば、小売店に対する発言力が高まり、より有利なポジションを確保することが可能です。
リベートを受け取る小売店側には、リベートの割り戻しによる収益を確保することができ、それにより利益率を高めることができます。また、一定の条件を達成することで支払われるリベートであれば、普通に販売するよりもモチベーションを維持することにつながるでしょう。
リベートを渡すメーカー側には、リベートが定着してしまうと特別感がなくなってしまい、取引先からさらなるリベートを要求されるデメリットがあります。
また、リベートが定着すると自社商品の価値を下げることにもつながるため、継続的なリベートはデメリットが生じるケースも多いでしょう。
リベートを受け取る小売店側には、リベートが定着することでメーカーとの取引に特別感が得られなくなり、販売のモチベーションの低下につながるというデメリットがあります。
メーカー側および小売店側にこのようなデメリットが生じると、過剰なリベートの要求により、コンプライアンス上の問題が発生することもあるため、注意が必要です。
リベートの供与自体は違法ではありませんが、リベートの方法によっては、独占禁止法上の違法性が生じる可能性もあります。以下で、その詳細を見ていきましょう。
リベートを手段として、流通業者の販売価格・競争品の取り扱い・取引先・販売地域などの制限が行われる場合、たとえばリベート付与が大きく他の同種の商品の供給が排除される状況が生じた場合には、独占禁止法が規制する排他条件付取引や、拘束条件付取引に該当する可能性があります。
また、ある事業者にはリベートを供与し、他の事業者には同じことをしてもリベートが提供されないことにより、特定の業者だけが有利な取引が行われると、独占禁止法が規制する取引条件等の差別的扱いに該当する可能性があります。
流通業者の取引額全体に占める自社商品の割合や、店舗内に展示された商品全体に占める自社商品の展示割合に応じたリベートを、「占有率リベート」といいます。
占有率リベートが競争品の取り扱い制限としての機能を持つ場合には、独占禁止法が規制する不公正な取引方法に該当するため、違法です。
また、流通業者の仕入れ高に応じてランクを設け、ランク別に累進的なリベートの供与率を設定することを「累進的リベート」といいます。
累進的リベートは、市場の実態に即した価格形成の促進という効果を有していますが、累進度が著しく高い場合、競争品の取り扱いを制限する機能を強く持つことがあります。このような場合も独占禁止法が規制する不公正な取引方法に該当し、違法となりやすいことに注意しましょう。
帳合取引とは、小売業者の仕入れ先として特定の卸業者が決定している取引のことです。
メーカーが小売業者に直接または卸業者を通じて間接的にリベートを供与し、小売業者が特定の卸業者としか取引できないようにすることは、当該商品価格が維持されるおそれがあるため、独占禁止法が規制する不公正な取引方法に該当する可能性があります。
会社に黙って従業員が取引先からリベートを受領していた場合、会社との関係では、詐欺罪や背任罪に該当する可能性があります。
このように、従業員が勝手に行うリベートのことを「裏リベート」といいますが、自社の利益だけでなく取引先との関係性にも影響を及ぼす行為であるため、しっかりと対策していく必要があります。そのためには、企業のコンプライアンス強化が求められるでしょう。
リベートの処理に関してお困りの場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
リベートは、仕切価格の修正や販売促進などさまざまな目的で行われており、リベートの供与があったとしても直ちに違法になるわけではありません。
しかし、リベートの方法によっては独占禁止法違反となる可能性がありますし、コンプライアンス上の問題が発生する場合もあります。
違法なリベートの供与があると企業の社会的信用性が低下してしまうため、リベートの違法性の判断に迷う場合は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。弁護士であれば、リベートの方法など具体的態様を踏まえて違法性を判断することができ、不安なく取引を行うことができるようになります。
社員による裏リベートがあった場合、会社に対する重大な非違行為として、懲戒処分の対象となります。しかし、懲戒処分をする際には、適正な手続きを踏んで行わなければならず、重すぎる処分をしてしまうと、無効になるリスクもある点に注意が必要です。
弁護士に相談をすれば、社員に対する懲戒処分の適正な手続きについてアドバイスしてもらうことができ、社員から「処分が違法である」として争いになるリスクを軽減できます。
また、当該社員を刑事告訴する際の手続きについても、サポートを受けることが可能です。
リベートの供与は、それ自体が直ちに違法になるわけではありません。
しかし、実際の方法や態様によっては違法と評価されることもあるため、慎重に対応することが大切です。
ベリーベストグループには、弁護士だけでなく税理士も在籍しているため、リベートの法的側面だけでなく会計上の処理についても、ワンストップでアドバイスすることができます。
リベートの違法性についてお悩みの方は、まずはベリーベストグループまでご相談ください。各士業が必要に応じて連携しながら、問題解決のために尽力いたします。
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