経営者保証とは、中小企業が融資を受ける際に、経営者が会社の連帯保証人になることをいいます。このような経営者保証は、中小企業の経営者にとって大きな負担となり、将来的な事業展開においても支障になることがあります。
しかし、経営者保証は、「経営者保証に関するガイドライン」の要件を満たせば外すことができる可能性がありますので、M&Aや事業承継の際には、その点も含めてしっかりと話し合っていきましょう。ただし、近年、経営者保証に関してM&Aでの詐欺が横行していますので、被害に遭わないようにするためにも十分に注意する必要があります。
今回は、M&Aや事業承継時に経営者保証を外すための対応や手順について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
経営者保証とはどのようなものなのでしょうか。以下では、経営者保証の仕組みと問題点について説明します。
経営者保証とは、中小企業が融資を受ける際に、経営者が会社の保証人になることをいいます。
経営者保証をすることで中小企業の信用力が保管され、円滑な資金調達を実現できるなどのメリットがあることから、金融機関から融資を受ける際には、経営者保証を求められるケースが多くありました。
経営者保証には、資金調達の円滑な実現というメリットがある反面、以下のような問題点が指摘されています。
上記のようにさまざまな問題点が指摘されている経営者保証ですが、実は経営者保証を外すことも可能です。そのためには、「経営者保証ガイドライン」の理解が必須となりますので、以下で詳しく説明します。
経営者保証のさまざまな問題点を改善するために全国銀行協会と日本商工会議所は、「経営者保証に関するガイドライン」を定めました。
経営者保証ガイドラインは、中小企業・経営者・金融機関に共通する自主的なルールという位置づけですので、法的な拘束力はありません。しかし、関係者には経営者保証ガイドラインを尊重・遵守することが期待されていますので、経営者保証ガイドラインで定められた3要件を満たせば、経営者保証を外せる可能性があります。
経営者保証ガイドラインでは、経営者保証を外すための要件として、以下の3つが定められています。
M&Aや事業承継の際に経営者保証を外すことができる可能性があります。そのためには、以下のようなポイントを踏まえた対応が必要です。
M&Aや事業承継は、経営者保証を外すためのよい機会になります。
そのタイミングで経営者保証を外すためには、経営者保証ガイドラインの3要件を満たすための計画的な準備が必要です。経営者保証ガイドラインの3要件は、短期間に対応できるものではありませんので、将来、M&Aや事業承継を予定しているようであれば中長期的な視点でガイドラインを満たすための対策を進めていきましょう。
また、経営者保証を外すことをM&Aや事業承継の前提条件とする場合には、その旨を契約書に明記することも忘れないようにしてください。
近年、事業承継やM&Aにおいて契約上約束されたはずの経営者保証の解除が履行されないなどの詐欺が横行していますので、注意が必要です。
そのような詐欺事案では、金融機関に対してM&Aが成約するまでM&Aの予定を伝えないように求められていることが多いようです。しかし、経営者保証を外すには金融機関の承諾が必須ですので、金融機関の協力なく経営者保証を外すことを条件とするM&Aを進めていくことはできません。
M&Aの相手や仲介会社からそのような要求があった場合には、詐欺の可能性を疑い、M&Aから撤退することも必要です。不安がある場合には、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
経営者保証を外すためには、以下のような手順で対応する必要があります。
経営者保証を外すには、まずは会社の現状を正確に把握する必要があります。
特に、経営者保証ガイドラインの3要件を満たさなければ、経営者保証を外すのは困難です。自社が経営者保証ガイドラインの要求する3要件を満たしているのかどうかという観点から、経営状況や財務状況、資産状況などを分析していきましょう。
経営者保証を外すには、保証契約を締結している金融機関の承諾が不可欠となります。そのため、経営者保証を外すことを検討している場合は、金融機関への相談も必要です。
相談時点で経営者保証ガイドラインの要件を満たしているようであれば、すんなりと経営者保証を外してもらえる可能性もありますし、その時点では解除できないと言われたとしても、解除するための方法などをアドバイスしてもらえる可能性もあります。
今後の具体的な対策を検討するためにも金融機関との相談は重要になりますので、早い段階で相談してみるとよいでしょう。
金融機関からのアドバイスを踏まえて経営者保証を外すための体制整備を行います。その際には、経営者保証ガイドラインの3要件を満たすことが必要になりますので、中長期的な視点で取り組んでいくようにしましょう。
経営者保証ガイドラインでは、外部の専門家による検証が望ましいとされています。
そのため、弁護士や税理士、公認会計士などに相談して、客観的に評価・判定をしてもらいその結果を金融機関に提出することも有効な手段といえます。外部の専門家と連携することで会社の信用性を高めることにもつながりますので、積極的に協力を求めていくとよいでしょう。
経営者保証は、中小企業の経営者にとって大きな負担となります。経営者保証があることにより、思い切った事業展開ができなかったり、後継者不足による事業廃止に追い込まれるなどの問題点が指摘されています。
このような経営者保証は、ガイドラインが要求する3要件を満たす体制整備を行うことで外すことができる可能性があります。当事務所では、弁護士と税理士が連携して、M&Aや事業承継のお悩み・トラブルに対応できますので、ワンストップで経営者保証に関する問題を解決することが可能です。ぜひ、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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