ホワイトカラー犯罪とは、管理職など企業の上層部の立場にある人が、その地位や職権を悪用して行う犯罪です。
ホワイトカラー犯罪の件数は多くはないものの、発覚した場合の被害は甚大になるおそれがあります。法的措置を視野に入れながら、弁護士のサポートを受け、速やかに事態の収拾に努めましょう。
本記事では、ホワイトカラー犯罪の概要・捜査方法・事例・企業の対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「ホワイトカラー犯罪」とは、会社経営者やビジネスマンなどが関与する、財産や信用に関する犯罪(企業犯罪を含む)の俗称です。犯罪学者のE・H・サザーランドによって提唱されました。
ホワイトカラー犯罪の内容としては、以下の例などが挙げられます。
ホワイトカラー犯罪は、暴行・傷害事件や窃盗事件などと異なり、経営者やビジネスマンの業務の中で行われることが多いのが特徴的です。
そのため、一見すると犯罪であることが分かりにくく、発覚までに時間がかかることがよくあります。
また、企業が取り扱うお金は大規模であるため、被害額が巨額になりやすい点もホワイトカラー犯罪の特徴のひとつです。数億円から数百億円規模の被害が生じるケースも多く、初犯でも実刑となる例が多数見られます。
ホワイトカラー犯罪は、一般犯罪事件と比較すると、その捜査の方法に特色があります。
ホワイトカラー犯罪は、警察における通常の捜査担当部署が担当することもありますが、東京・大阪・名古屋の各地方検察庁に設置された「特別捜査部(特捜部)」によって捜査が行われるケースもあります。
また、脱税事案については国税庁と連携し、金融商品取引法違反(粉飾決算)の事案については金融庁と連携するなど、事案の内容・性質に応じて複数の行政機関が関与した捜査が行われることもあります。
ホワイトカラー犯罪の捜査は、特捜部、国税庁、金融庁など複数の機関が協力して対応するケースが多いのが特徴です。
企業ぐるみのホワイトカラー犯罪に対しては、「突き上げ捜査」と呼ばれる捜査方法がとられることがあります。
「突き上げ捜査」とは、末端の従業員から事件に関する供述を引き出し、それを基にして上層部や企業自体の刑事責任を追及する捜査方法です。
突き上げ捜査の際には、末端の従業員(若手従業員など)との関係で、様々な交渉が行われることがあります。その一つは司法取引です。
司法取引とは、特定犯罪に関する被疑者または被告人が、他人の刑事事件について真実の供述や証拠の提出などの協力をすることを条件に、不起訴・公訴の取り消し・求刑の減軽などを合意する手続きです。日本においても、「合意制度」と呼ばれる形で、刑事訴訟法において法制化がされています。
末端の従業員との関係で司法取引が行われると、上層部や企業自体によるホワイトカラー犯罪を立証し得る証拠の確保につながることがあります。ただ、日本の検察は、犯罪者と合意するという行為に及びごしなのか、伝統的に行われていた暗黙の逮捕回避や不起訴示唆といった、法制度によらない形で必要な情報を取得する傾向が未だに強いように思われます。もっとも、そのような法的担保なき不起訴は、検察審査会において覆されていたりもしますので、ホワイトカラー犯罪の当事者はどのように捜査機関と「取引」するかを悩む場面も多いです。
大々的に報道されたホワイトカラー犯罪の主要事例を3つ紹介します。
大手製紙メーカーの代表取締役会長が、連結子会社から100億円を上回る資金を不正に引き出し、カジノで遊ぶためのお金に流用した事件です。
東京地検特捜部は、特別背任罪の疑いで代表取締役会長を起訴し、東京地裁は懲役4年の実刑判決を言い渡しました。代表取締役会長は控訴および上告を行いましたが、いずれも棄却されて刑が確定しました。
老舗百貨店の社長が愛人と共謀して自らの利益を図り、老舗百貨店に損害を与えた事件です。
社長と愛人は、アクセサリーを老舗百貨店へ納入するに当たり、社長が実質的に経営していた2つの会社を経由させてマージンを抜き取り、老舗百貨店に損害を与えました。
社長は特別背任罪、愛人は社長の共同正犯として起訴され、東京地裁および東京高裁において有罪判決を受けました。社長は上告審中に死亡したため公訴が棄却されましたが、愛人に対する高裁判決は最高裁でも維持され、懲役2年6か月・罰金6000万円の実刑が確定しました。
自動車会社の代表取締役会長が、自身の役員報酬を計約50億円過少に申告していたとされた事件です。
東京地検特捜部は、有価証券報告書の虚偽記載による金融商品取引法違反を理由に、代表取締役会長ともう一人の代表取締役、さらに法人としての自動車会社を起訴しました。
さらに、代表取締役会長については特別背任罪でも起訴しました。
代表取締役会長はレバノンに逃亡したため、刑事裁判を開催することができず手続きが止まった状況です。
一方、もう一人の代表取締役に対しては懲役6か月・執行猶予3年、法人としての自動車会社に対しては罰金2億円の有罪判決が東京地裁によって言い渡されました。代表取締役は控訴し、控訴審の判決は2025年2月を予定しています。法人としての自動車会社は控訴せず、罰金2億円が確定しました。
自社内においてホワイトカラー犯罪が行われると、企業としてのイメージが失墜し、業績に大きな悪影響を及ぼすおそれがあります。
ホワイトカラー犯罪に対しては万全の予防策を講じた上で、万が一発生した際には迅速かつタイムリーな対応に努めましょう。ホワイトカラー犯罪の予防・対応に関しては、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
ホワイトカラー犯罪を予防し、または発生しても初期段階で事態を収拾するためには、従業員が上層部に報告しやすい仕組みを整備し、経営陣がその原因や発生の事実を速やかに把握することが大切です。
ホワイトカラー犯罪に関する従業員の報告を促すためには、「内部通報制度」を整備することが効果的です。
内部通報制度とは、従業員などが社内における違法行為を所定の窓口へ通報した際に、会社による解雇その他の不利益な取り扱いを受けないことを保障する制度です。
社内に内部通報窓口を設置するか、または外部の弁護士などに社外窓口を依頼して、内部通報制度を整備しましょう。
社内においてホワイトカラー犯罪が発生した場合には、迅速かつタイムリーな対応を行い、事態の収拾に努めましょう。
具体的には、以下のような対応を行うことが求められます。
これらの対応を適切なタイミングで行えば、ホワイトカラー犯罪による企業イメージの失墜を最小限に抑えることができます。
ホワイトカラー犯罪の予防や対応策については、弁護士に相談することをおすすめします。
ホワイトカラー犯罪について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
ホワイトカラー犯罪に対して、企業が負うリスクを最小限に抑えるための予防策や対応策を講じるには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。
ホワイトカラー犯罪の予防に努めたい、もしくは、すでにホワイトカラー犯罪の対応にお困りの場合は、お早めに弁護士へご相談ください。
横領・粉飾決算・脱税などのホワイトカラー犯罪が発生すると、企業イメージに対して重大な悪影響が生じる可能性があります。
企業としては、自社内におけるホワイトカラー犯罪の発生を最大限予防するとともに、万が一ホワイトカラー犯罪が発生してしまったら、迅速な対応によって事態に収拾に努めるべきです。そのためには、弁護士に相談して実務的な観点からアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、企業の不祥事対応に関するご相談を随時受け付けております。ホワイトカラー犯罪への対応についても、危機管理対応の実績がある弁護士が全面的にサポートいたします。
ホワイトカラー犯罪の予防策および対応策については、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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