所属タレントが不適切な行動をした場合、芸能事務所は当該タレントとの契約を解除できる場合があります。
ただし、契約解除はタレント側とのトラブルに発展することもあり得るので、弁護士のアドバイスを受けた上で慎重な対応をとることが大切です。
本記事では、契約解除の要件・手続き・注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「契約解除」とは、契約した当事者が相手に対して解除の意思表示をすることで、契約の効力を締結時にさかのぼって無効にすることをいいます。
契約解除は、以下の種類に分類されます。
契約が解除されると、その契約の効力は、契約締結時点にさかのぼって消滅します。
また、契約に基づいて授受された物品や、実施された工事などがある場合には、各当事者が原状回復を行わなければなりません(民法第545条)。
芸能事務所は、YouTuber・タレント・アイドルなど(以下「タレント」と表記)との間で所属契約や業務委託契約などを締結することがあります。
芸能事務所とタレントの間で締結された契約は、タレントに何らかの不適切な行為があった場合には、芸能事務所側から解除することができます。
具体的には、以下のような事情が生じた場合に、芸能事務所はタレントとの契約を債務不履行解除することが可能です。
タレントが芸能事務所の機密情報を漏洩(ろうえい)させることは、芸能事務所に対する重大な背信行為であるため、芸能事務所による契約の債務不履行解除が認められる可能性が高いです。
たとえば、タレントによる以下のような行為は機密情報の漏洩に当たり、債務不履行解除の原因となります。
タレントが上記のような行為をしたことが分かった場合には、タレントとの契約の解除を検討しましょう。
タレントの交際関係や過去の非行などに関して、不適切な動画や画像がSNSなどで拡散された場合には、タレントのイメージを大きく損なうことがあります。
具体的には、以下のような動画や画像が流出すると、芸能事務所としてもタレントをかばいきれないでしょう。
契約において、上記のような行為をしてはならない旨が明記されている場合には、タレント側がその規定に違反したものとして、芸能事務所側は契約を債務不履行解除できる可能性が高いです。
また、動画や画像の流出がタレント自身の行為によらないとしても、流出した時点で契約を解除できる旨が契約上に明記されている場合には、芸能事務所側による約定解除が認められる余地があります。
タレントの不適切な行為により、タレント活動におけるイメージが著しく損なわれた場合には、そのことを理由に契約の債務不履行解除が認められる可能性があります。
たとえば、タレントによる以下のような行為が判明した場合には、芸能事務所側による契約の債務不履行解除が認められる可能性が高いでしょう。
芸能事務所がタレントとの契約を解除する際には、以下の流れで手続きを行いましょう。
芸能事務所側が一方的に契約を解除すると、タレント側の反発を招いて深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
そのため、まずはタレント側と話し合い、契約の合意解除を目指すのがよいでしょう。合意解除の交渉に当たっては、解除の理由を冷静な態度で伝えて、タレント側の理解を求めることが大切です。
タレント側が合意解除に応じない場合は、何らかのメリットを提示することも考えられます。たとえば、解決金などの名目で一定の金銭を支払うことを提案すれば、タレント側も合意解除に応じる可能性が高まるでしょう。
契約の解除について合意できたら、合意解除を定めた書面(=契約解除合意書)をタレントとの間で締結します。
契約解除合意書には、解除について合意した条件(契約解除料など)のほか、「清算条項」を定めることが考えられます。清算条項とは、当事者間に何らの債権債務関係が存在しないことを確認する条項です。清算条項を定めることにより、契約の解除に関するトラブルの再燃を予防できます。一方で、ひとまず契約解除を行って問題を起こした関係を絶った後、詳細な責任の分配を行って行く場合は、清算条項を設けてしまうと、後からタレントに責任を問うことができなくなってしまうため、問題です。
タレントの間で契約解除の合意を得られる見込みがないときは、芸能事務所側から一方的に契約を解除せざるを得ません。
芸能事務所側が契約を解除する際には、タレントに対して内容証明郵便等で契約解除通知書を送付しましょう。
契約解除通知書には、主に以下の事項を記載します。
契約の解除に伴い、芸能事務所側に何らかの損害が発生した場合には、タレント側に対する損害賠償請求を検討しましょう。
損害賠償を請求する際にも、契約の解除と同様に、基本的にはタレントと間で話し合って合意することが望ましいです。損害賠償に関する合意が得られたら、その内容をまとめた和解合意書を締結し、タレント側から支払いを受けましょう。
損害賠償に関する合意が困難な場合には、訴訟などの法的手続きを通じて損害賠償を請求しましょう。特に訴訟の対応は専門的かつ複雑なので、弁護士と協力しながら対応することをおすすめします。なお、契約上の違反にも、契約解除が認められるかどうかと、どこまでの損害が認められるかには濃淡がありますので、損害賠償まで求めるかどうかを検討することがまず適切です。
所属タレントとの契約トラブルについてお悩みの場合は、速やかに弁護士へご相談ください。弁護士に相談することの主なメリットは以下の通りです。
芸能事務所側から一方的に契約を解除するためには、法律または契約における根拠が必要です。弁護士に相談すれば、契約解除が認められるかどうかについて、法的な観点からアドバイスを受けられます。
契約解除が法的に認められないとしても、タレントと交渉した上で契約を合意解除する余地があります。弁護士に依頼すれば、タレント側との交渉についても代行を任せることができので、社内の負担がなくスムーズに契約を解除できる可能性が高いです。
芸能事務所側がタレントとの契約を解除するに当たっては、さまざまな書面を作成する必要があります。
たとえば、解除通知を送付する際には内容証明郵便の作成が必要になりますし、訴訟を提起することになれば訴状・準備書面・証拠書類などの作成が必要です。弁護士に依頼すれば、これらの書面作成を全面的に任せることができます。
弁護士には契約の解除だけでなく、タレントに対する損害賠償請求の対応も一任できます。
特に、タレントの不適切な行為によって芸能事務所側が大きな損害を被った場合は、訴訟を通じた損害賠償請求を要するケースが多いです。弁護士に代理対応を依頼すれば、芸能事務所側として適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。
タレントとのトラブルに起因する契約解除や損害賠償請求などについては、お早めに弁護士へご相談ください。
タレント側に不適切な行為などが認められる場合には、芸能事務所側はタレントとの契約を解除できることがあります。
ただし、タレントとの契約を解除する際には、タレント側の反発によってトラブルに発展するリスクに注意が必要です。タレントから反論されても再反論できるように、弁護士のサポートを受けながら慎重な検討と準備を行いましょう。
ベリーベスト法律事務所は、芸能事務所におけるトラブルのご相談を随時受け付けております。タレントによる不祥事への対応や、タレントとの契約の解除・損害賠償請求などについても、解決実績がある弁護士がサポートいたします。
タレントに関するトラブルにお悩みの場合は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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