宗教法人でも、収益事業によって得た利益は課税対象となります。宗教法人の運営者は、非課税の宗教活動と課税される収益事業を明確に区別した上で、適切に税務申告を行いましょう。
本記事では、宗教法人でも課税対象となる収益事業の種類や、課税の有無の判断基準、脱税を防ぐための対策などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
内国法人には法人税を納める義務を負いますが、宗教法人を含む公益法人等は、収益事業を行う場合などに限って法人税等の納付義務を負います(法人税法第4条第1項など)。
宗教活動の一環として得た利益は非課税であることばかりが注目されがちですが、収益事業によって得た利益には法人税等が課される点に注意しましょう。
宗教法人でも法人税等が課される「収益事業」に当たるのは、以下の34種類のうちいずれかの事業であって、継続して事業場を設けて行われるものです(法人税法第2条第13号、法人税法施行令第5条)。
※上記の34種類に当たる事業であっても、例外的に収益事業に該当しない場合があります。
※宗教法人が行う墳墓地の貸付業は、不動産貸付業に当たりますが、収益事業に該当しません。
宗教法人がよく行っている事業を例に挙げて、法人税等が課される収益事業に当たるかどうかを解説します。
お守り・お札・おみくじなど、売価と仕入れ原価の差額が実質的な喜捨金と認められるような場合は、その物品の販売は収益事業に該当しません。
これに対して、一般の物品販売業者も販売しているような物品を、通常の販売価格で販売する場合は、収益事業に該当します。
宗教法人が行う墳墓地の貸し付けは、収益事業に該当しないものとされています。継続的に地代を徴収するもののほか、最初に永代使用料などを一括で徴収するものも同様です。
これに対して、墳墓地以外の不動産の貸し付けは、国や地方公共団体に対して直接貸し付ける場合などを除き、収益事業に該当します。
宗教法人の境内地や施設を、不特定または多数の者の娯楽・遊興・慰安の用に供するために席貸しすることは、すべて収益事業に該当します。
また、会議や研修など、娯楽・遊興・慰安以外の用に供するための席貸しも、国や地方公共団体に対して直接貸し付ける場合などを除き、収益事業に該当します。
宗教法人が所有する施設に信者や参詣人を宿泊させて宿泊料を受け取ることは、宿泊料がいかなる名目であっても収益事業に該当します。
ただし、宗教活動に伴って利用される簡易な共同宿泊施設で、宿泊料の額がすべての利用者につき1泊1000円以下(食事を提供する場合は、2食付きで1500円以下)であるものの経営は、収益事業に該当しません。
宗教法人が所蔵している物品や、保管の委託を受けている物品を常設の宝物館などに展示して観覧させる行為は、収益事業には該当しません。
宗教法人が特定の技芸を教授する事業は、収益事業に該当します。実際に技芸を教授するもののほか、資格や称号だけを付与するものも収益事業に当たります。
教授が収益事業に当たる技芸としては、以下の例が挙げられます。
宗教法人が境内の一部を駐車場として経営し、利用料金を収受することは収益事業に該当します。時間極めなどで随時駐車させる場合のほか、月極めなどで継続して駐車させる場合も同様です。
また、宗教法人の境内でなくても、駐車場に適する土地を駐車場所として一括して貸し付ける場合も収益事業に該当します。
宗教法人が行う神前結婚や仏前結婚などの挙式は、それが本来の宗教活動の一部と認められる場合は、収益事業に該当しません。
ただし、挙式に関連する以下の行為などは、収益事業に該当します。
宗教法人が幼稚園や保育所を運営することは、収益事業に該当しません。したがって、入園料や保育料などは非課税となります。
ただし、幼稚園や保育所の運営に関連して物品を販売する場合や、幼児に対して特定の技芸を教授する場合などは、収益事業に該当します。
宗教法人は、収益のうち収益事業によるものとそうでないものを明確に区別した上で、前者について、原則として事業年度の終了後2か月以内に法人税等の申告を行わなければなりません。
収益事業による収益を適切に申告しないと、税務署から脱税を指摘されるおそれがあるので要注意です。
宗教法人が税務署に脱税を指摘される事態を防ぐには、以下の対応を行いましょう。
宗教法人に課される税金については、税法によって一般企業とは異なるルールが設けられています。まずは税法のルールを正しく理解し、そのルールに則って税務申告を行うことが大切です。
宗教法人の税務については、国税庁が説明資料を公表していますので、参考にしてください。
参考:「令和7年度版 宗教法人の税務-源泉所得税・法人税・地方法人税・消費税・印紙税-」(国税庁)
宗教法人に課される税金のルールに関する疑問点は、税務署の職員に質問すると答えてもらえることがあります。
予約すれば対面で職員に相談できるほか、電話での相談も可能です。納税地の税務署に連絡してみましょう。
ただし、税務署の回答を踏まえて税務申告を行っても、その内容が誤っているケースはよく見られます。もし税務署の解答が誤っていても、税務署が責任をとってくれるわけではないのでご注意ください。
宗教法人の税金については複雑なルールが設けられているので、適切に税務申告を行うためには専門家に相談することをおすすめします。
税金について幅広く相談できる専門家は、税理士です。また、弁護士にも税金について相談できることがあります。
弁護士には税金だけでなく、宗教法人の運営全般に関する事柄を幅広く相談できます。
税理士と連携している弁護士に相談すると、税金の問題について確かな知見に基づいて対応してもらえる上に、その他の問題についても幅広くアドバイスを受けられるので安心です。
ベリーベスト法律事務所には、弁護士とともに税理士も在籍しております。税金の取り扱いについて分からないことがある宗教法人運営者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
宗教法人が宗教活動によって得た利益は非課税ですが、収益事業によって得た利益には法人税等が課されます。収益事業によって得た利益を適切に申告しないと、税務署に脱税を指摘されて追徴課税を受けるおそれがあるので要注意です。
宗教法人に関する税金のルールは複雑なので、正確な申告を行うためには専門家のサポートが欠かせません。税理士と連携している弁護士と顧問契約を締結すれば、税金を含む宗教法人の運営全般についてサポートを受けられます。
ベリーベスト法律事務所は、宗教法人を運営する方からのご相談を随時受け付けております。弁護士とともに税理士も在籍しているので、税金に関する問題についてもワンストップでのご対応が可能です。
収益事業に当たるかどうかの判断が難しいなど、税金に関する問題にお悩みの宗教法人運営者の方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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