2025年03月19日
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横領の内部調査の進め方|手順・責任追及の方法・注意点などを解説

横領の内部調査の進め方|手順・責任追及の方法・注意点などを解説

役員や従業員による横領が疑われる場合は、弁護士のサポートを受けながら調査を行いましょう。

特に、「横領していることがバレていない」と当事者が思っているケースでは、横領の証拠を収集するためにも、内密に内部調査を行うことが重要です。迅速かつ適切な対応が、事態のスムーズな収拾や会社の評判の低下を防ぐことにつながります。

本記事では、横領に関する内部調査の手順や注意点、横領をした役員や従業員の責任を追及する方法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、役員・従業員の横領が疑われるときの内部調査の手順

役員や従業員による横領が疑われるとき、内部調査はおおむね以下の流れで実施します。

  1. (1)社内調査チームの設置

    最初に、横領に関する社内調査チームを設置するところから始めます。

    社内調査チームのメンバーには、法律やコンプライアンスについての知見を有する人を含めましょう。法務担当者やコンプライアンス担当者に加えて、弁護士などの外部専門家も有力な候補者です。

    関係者に対する調査を円滑化するため、横領が疑われる従業員が所属する部署の上司や同僚を参加させることも考えられます。
    ただし、調査対象者と親しすぎる人を参加させると、情報がリークされるなどして調査に支障を来すおそれがあるので、人選には注意が必要です。

    また、公正な調査を行うことができるように、社内調査チームのメンバーの独立性を確保しなければなりません。特に横領が疑われる方について、調査の内容や結果にかかわらず待遇を保障し、不利益な取り扱いをすることは避けましょう。

  2. (2)事実の調査・証拠の確保

    社内調査チームを組織したら、速やかに横領に関する事実の調査を行いましょう。まずは客観的な資料を当たり、横領の手掛かりを探します。

    【横領の手掛かりを探す際に確認すべきもの】
    • 調査対象者が使用しているパソコンやアカウントの内部データ
    • 調査対象者がやり取りしたメール
    • 会社口座の入出金履歴
    • 会社金庫の鍵の持ち出し状況が分かる資料
    • 防犯カメラの映像
    など

    客観的な資料の調査がおおむね完了したら、調査対象者だけでなく、調査対象者と関係性が近しい人や横領の関係者と思われる人などに対して、ヒアリングを行います。ヒアリングによって新たな情報が得られたら、横領の事実を固めるための追加調査を行いましょう。

    なお、パソコンやメール、会計システムなどのデジタルデータから収集・解析を行い、事実関係を明らかにする作業をフォレンジック調査といいます。法的対応を見据えた証拠確保のプロセスであるため、社内での対応が難しい際は、外部のフォレンジック専門機関に相談するとよいでしょう。

    なお、調査対象者には弁明の機会を与えるべきです。
    弁明の内容が不合理であれば懲戒処分などの根拠になり得ますし、弁明が合理的であれば、会社側の認識の誤りを正すきっかけになります。

  3. (3)横領をした者に対する処分の検討

    調査後に横領の事実が認められる場合は、横領をした者に対する処分を検討しましょう。
    本コラム2章の「横領をした役員・従業員の責任を追及する方法」にて、具体的な責任追及の方法を解説します。

  4. (4)横領に関する再発防止策の検討

    横領が行われた経緯を分析して、再発防止策を検討することも重要です。

    たとえば、金庫内の資金が勝手に持ち出された場合は、金庫の鍵の管理をより厳重に行うべきでしょう。会社口座の資金が勝手に引き出された場合は、入出金に関するセキュリティーや承認のプロセスを厳格化すべきです。

    同じような横領が再び起こることのないように、徹底した再発防止策を講じるようにしてください。

  5. (5)ステークホルダー向けの情報開示

    株主などのステークホルダーに対して、社内で横領が発生した事実をきちんと説明する必要があります。

    特に上場会社では、横領の事実が大々的に報道される可能性が高いため、株主・取引先・債権者などに幅広く情報開示を行うことが大切です。
    非公開会社においても、株主には最低限情報開示を行うべきでしょう。

    適切な形で情報開示を行うことが、不祥事によるレピュテーションの低下を最小限に抑えるためのポイントです。

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2、横領をした役員・従業員の責任を追及する方法

ここからは、横領をした役員・従業員に対して責任を追及するための方法を説明します。

  1. (1)役員の解任

    横領をしたことが分かった役員は、臨時株主総会を開いて速やかに解任しましょう。

    役員の解任は、出席株主の過半数による普通決議で決定することができます(会社法第339条第1項)。ただし、実際には横領の事実がなかったことが後に判明すると、解任した役員に対して、会社は損害賠償責任を負うことがある点にご注意ください(同条第2項)。

  2. (2)従業員に対する懲戒処分

    従業員による横領が判明した場合には、当該従業員に対して懲戒処分を行いましょう。

    会社資金の横領は重大な非違行為であるため、直ちにもっとも重い処分である懲戒解雇としても違和感はありません。ただし、横領が事実誤認である場合には、懲戒処分が無効となってしまいます。

    従業員に対して懲戒処分を行う際には、横領の事実が確かに認められることを、事前にきちんと調査することが大切です。

  3. (3)損害賠償請求・不当利得返還請求

    横領された会社資金は、横領をした役員や従業員に対して、不法行為に基づく損害賠償または不当利得に基づく返還を請求できます。

    また、横領によって会社に生じたその他の損害についても、横領をした者に対して賠償を請求することが可能です。たとえば、横領の調査に要した人件費その他の費用や、横領の発覚に伴って減少した売り上げなどが損害賠償の対象になり得ます。

    被害の状況によっては、損害賠償が極めて多額に及ぶこともあり得るため、横領の調査や責任追及について、弁護士のサポートを受けながら対応しましょう。

  4. (4)刑事告訴

    役員や従業員による会社資金の横領は、業務上横領罪(刑法第253条)によって処罰の対象となります。業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役です。

    刑事告訴をすれば、警察や検察による捜査が行われ、犯人の検挙につながる可能性があります。横領をした者への厳罰を希望する場合は、刑事告訴を検討しましょう。

3、横領に関する内部調査を行う際の注意点

横領に関する内部調査を行う際は、調査対象者や関係者に情報が漏れないように注意を払うべきです。また、ステークホルダーの信頼を失うことがないように、真摯な状況説明を行いましょう。

  1. (1)調査の範囲や担当者をできる限り限定する

    横領に関してヒアリングを行う際は、調査対象者やその近しい人などに狭く限定しましょう。
    ヒアリングの対象者が多すぎると時間がかかり、情報が漏れるリスクが高まるためです。

    また、横領の調査を行う担当者についても、最小限の人数に限定すべきです。多くの人を調査に参加させると、やはり情報が漏れるリスクが高まってしまいます。

  2. (2)本人や関係者へのヒアリングは、短期間で集中的に行う

    横領をしたと思われる本人や関係者へのヒアリングは、できる限り短期間で集中的に行いましょう。
    ヒアリングに時間がかかると、本人や近しい人に調査情報が漏れてしまうリスクが高まります。

    特に横領が疑われる人へのヒアリングは、本人に対して調査情報が漏れないように、実施するタイミングなどを慎重に検討すべきです。

  3. (3)ステークホルダーには真摯に状況を説明する

    社内で横領が発生したことが大々的に報道されると、ステークホルダーは大きな不安を覚えます。

    上場会社の場合は、株価の大幅な下落が避けられないでしょう。非公開会社においても、株主からの信頼を失えば経営が困難になりますし、取引先からの信頼を失えば売り上げの大幅な低下につながりかねません。

    横領の発覚によってレピュテーションが低下することはやむを得ませんが、そこからいかに信頼を回復するかが重要です。

    信頼回復のためにも、ステークホルダーには真摯に状況説明を行いましょう。横領者に対して行った処分や再発防止策の内容などを、ステークホルダーに対してタイムリーに発信するようにしてください。

4、横領の内部調査について弁護士に相談するメリット

横領の内部調査を行う際には、弁護士に相談することをおすすめします

弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 横領の事実を確認するために調査すべき資料やヒアリングすべき人の範囲について、アドバイスを受けられる
  • 迅速に大量の資料を確認してもらえる
  • ステークホルダーに対する適切な情報開示の方法について、アドバイスを受けられる
  • 役員解任や懲戒処分を検討するに当たり、法的に問題がないかどうかを確認できる
  • 横領者に対する損害賠償請求や不当利得返還請求を代行してもらえる
など

弁護士のサポートを受けながら対応することが、横領による不祥事の迅速な収拾につながります。社内における横領が発覚したら、速やかに弁護士へご相談ください。

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5、まとめ

社内での横領が発覚したら、短期間で集中的に調査を行い、会社資金の回収やレピュテーション低下の防止に努めましょう。弁護士のサポートを受ければ、横領の内部調査を効率よく行うことができます。

ベリーベスト法律事務所では、企業の不祥事対応や危機管理に関するご相談を受け付けております。編成している危機管理専門チームには、東京地方検察庁特別捜査部出身の元検事、公認不正検査士資格を有する元検事を含む複数の元検事や企業勤務経験を有する弁護士、裁判所書記官出身の弁護士などが所属しており、さまざまな状況に対応した弁護、アドバイスをさせていただきます。

横領調査その他の社内不正調査を専門家に依頼したい企業は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

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