2025年04月07日
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ガチャと景品表示法|ゲームアプリの法律違反を回避する完全ガイド

ガチャと景品表示法|ゲームアプリの法律違反を回避する完全ガイド

令和4年の国内のゲーム市場規模は、2兆316億円となっており、そのうち家庭用ゲーム機ソフト以外のオンラインプラットフォームが1兆6568億円とゲーム市場全体の約80%を占めています。

このようにスマートフォン向けゲームアプリの市場規模が非常に大きいことから、ゲームアプリの開発を検討している企業は少なくないでしょう。ゲームアプリでよく利用される「ガチャ」システムですが、景品表示法の規制が適用されますので、違法なガチャにならないよう開発にあたっては法的観点からも注意して進める必要があります。

本コラムでは、ゲームアプリのガチャと景品表示法の規制について法律違反を回避するためのポイントをベリーベスト法律事務所 企業法務専門チームの弁護士が解説します。

1、ゲームアプリのガチャはなぜ規制されているのか

ゲームアプリのガチャはなぜ規制されているのでしょうか。以下では、ガチャシステムの問題点と法的規制について説明します。

  1. (1)ガチャシステムの問題点

    「ガチャ」とは、オンラインゲームのプレーヤーに対し、ゲーム内で利用するキャラクターやアイテムを供給するシステムです。プレーヤーは、オンラインゲーム上でガチャを利用することでキャラクターやアイテムなどを入手することができますが、自由に選択することはできず、どのキャラクターやアイテムが排出されるかはランダムに決定されます。

    そのため、希少なアイテムなどを入手するために、高額な課金をすることが社会問題になっており、ゲーム会社側もより多くガチャを利用してもらうために、キャラクターの能力やステータスについて事実と異なる表示をするなどの問題が起きています。

    このような問題が生じると消費者の利益を不当に侵害することになるため、景品表示法によりさまざまな規制が行われています

  2. (2)景品表示法における景品類規制と表示規制

    景品表示法による規制には、主に「景品類規制」と「表示規制」の2種類があります。

    景品類規制とは、景品の提供方法に応じて、景品の最高額や総額を規制する制度で、表示規制とは、商品やサービスの品質・内容・価格などを偽ることを規制する制度です。

    ゲームアプリのガチャシステムのうち、コンプガチャを導入する場合には、「景品類」に該当し景品表示法の景品類規制が適用されます。また、ガチャシステムにおいて消費者に誤認を抱かせるような誇張表現を行うと景品表示法の表示規制違反となるおそれがあります。

    このようにゲームアプリ内のガチャシステムでは、景品表示法上の2つの規制について注意が必要になります。

  3. (3)法律違反になり得るケース

    ゲームアプリのガチャが景品表示法上違法になり得るケースとしては、以下のケースが挙げられます。

    ① 特定のアイテムをコンプリートすることで別のアイテムを入手できるガチャ
    特定のアイテムをコンプリートすることで別のアイテムを入手できるガチャは、いわゆる「コンプガチャ」と呼ばれ、景品表示法の禁止行為に該当します。詳しくは、2章をご覧ください。

    ② レアキャラの出現率を実際よりも有利に表示したケース
    レアキャラの出現率が0.333%しかないにもかかわらず、ゲームアプリ上では3%と表記すると、ユーザーに対して実際よりも優れているまたは有利であると誤解を与えるおそれがあります。したがって、優良誤認表示または有利誤認表示として景品表示法違反です。

    ③ 実際の販売実績がないのに特別価格として表示したケース
    1回ガチャを回すのにかかるお金が1000円であるところ、特別キャンペーンとして100円で提供することがあります。

    この場合、1000円を二重線で消して100円と記載するのは、特別感を演出する効果的な記載方法といえるでしょう。しかし、実際に1000円で販売した実績がないにもかかわらず、その価格を表示することは有利誤認表示として景品表示法違反となります

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2、ガチャ設計で留意すべきポイント

ガチャ設計では、以下のような点に留意しながら開発を進める必要があります。

  1. (1)景品類規制|コンプガチャなどの「カード合わせ」など

    景品表示法における「景品類」とは、顧客を誘引する手段として、取引に付随して提供する物品や金銭などの経済上の利益をいいます。

    有料ガチャにより消費者は、何らかの経済的利益を得ていますが、それは取引に付随して提供されるものではなく、取引そのものによってもたらされる経済利益ですので、「景品類」には該当しません。そのため、有料ガチャは、基本的には景品表示法上の景品類規制の対象外となります。

    しかし、特定のアイテムをコンプリートすることで別のアイテムを入手できる、いわゆる「コンプガチャ」は、取引に付随して提供される「景品類」になってきます
    そして、景品類については、高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限することが認められているところ(景表法4条)、この条文を受けて作られている懸賞景品制限告示5項は、「カード合わせ」を禁止しています。そして、「コンプガチャ」はこの「カード合わせ」に該当しますので、最高額や総額の如何にかかわらず、その提供自体が禁止されています。

  2. (2)景品表示法の規制対象にならないケース

    「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準によると、以下のようなものについては、懸賞商品制限告示5項のカード合わせには該当しないとされています。

    • ① 異なる種類の符票の特定の組合せの提示を求めるが、取引の相手方が商品を購入する際の選択によりその組合せを完成できる場合
    • ② 1点券、2点券、5点券というように、異なる点数の表示されている符票を与え、合計が一定の点数に達すると、点数に応じて景品類を提供する場合
    • ③ 符票の種類は2以上であるが、異種類の符票の組合せではなく、同種類の符票を一定個数提示すれば景品類を提供する場合

    有料ガチャの設計では、複数のアイテムやキャラクターがかぶった場合、それらを合成して強力なアイテムやキャラクターを合成できるという仕様にすることがあります。このような方法であれば景品表示法の規制には該当しません

3、安全なガチャ設計を行うためのチェックリスト

ゲームアプリ開発者の方は、以下のチェックリストを参考に安全なガチャ設計を進めていきましょう。

No チェック項目 チェック欄
1 ガチャアイテムについて、名称、イラストまたは種別などを用いて、獲得可能なすべてのガチャアイテムを表示する
2 有料ガチャにおいてレアアイテムを提供している場合、当該レアアイテムを表示する
3 提供数または提供期間が限定されているガチャアイテムを提供している場合、その提供数または提供期間等の内容を表示する
4 キャンペーン企画などにより販売中のガチャアイテムの提供割合を変更する場合、当該変更の条件および変更の度合いを事前に表示する
5 特定のガチャアイテムの提供割合を上げる場合、比較対象となる有料ガチャの名前や販売期間などを明らかにする
6 ガチャアイテムを重複して入手する可能性の有無およびその条件などを表示する
7 ガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限は、以下のいずれかとする
・ガチャ1回あたりの課金額の100倍以内
・5万円以内
8 ガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限を超える場合、ガチャページにその推定金額を表示する
9 ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示する
10 ガチャアイテムの種別ごとに、その提供割合を表示する
11 有料ガチャ1回の利用時のガチャアイテムの価値は、有料ガチャ1回の価額と同等またはそれ以上とする
12 有料ガチャ10回の利用時のガチャアイテムの提供割合の期待値上の価値は、有料ガチャ10回の価額と同等またはそれ以上とする
13 有料ガチャの利用金額の総計が5000円の場合、ガチャアイテムの提供割合の期待値上の価値は、5,000円と同等またはそれ以上とする
14 ガチャアイテムが何も提供されない可能性がある有料ガチャの提供は行わない
15 有料ガチャの利用条件やガチャアイテムの内容に関して、事実と異なる表示、実際よりも著しく優良、有利、その他誤認されるおそれがある表示をしない
16 有料ガチャについて、景品表示法で許容される範囲を超えた景品類の提供やカード合わせ規制に違反する景品類の提供をしない

なお、チェックリストの項目をすべてクリアしていても、具体的な仕様によっては違法となる可能性もあります。念のため弁護士によるチェックを受けておくことをおすすめします

4、ガチャの景品表示法違反を指摘された場合のリスク

ガチャの景品表示法違反を指摘された場合、以下のようなリスクがありますので注意が必要です。

  1. (1)措置命令

    措置命令とは、景品表示法に違反した事業者に対して、消費者庁や都道府県が違法な広告表示や景品類の提供の停止などを命じる制度です。

    調査の結果、違反の事実が認められなかったとしても、違反のおそれのある行為が認められたときは、指導の措置がとられます。なお、措置命令が出された場合、消費者庁や都道府県のウェブサイトにおいて、その内容が公表されます

  2. (2)課徴金納付命令

    景品表示法が規制する優良誤認表示の禁止または有利誤認表示の禁止に違反すると、課徴金納付命令の対象になります。

    課徴金は、課徴金対象期間における売上額に3%を乗じた金額の支払いが命じられます。ただし、課徴金の金額が150万円に満たない場合には課徴金納付命令の対象外となります。

  3. (3)刑事罰

    景品表示法改正により、令和6年10月1日から直罰規定が適用されるようになりました。優良誤認表示や有利誤認表示などの不当表示をした場合、行政指導や行政命令などを経ることなく、直ちに刑事罰が科されることになります。

    これにより、優良誤認表示や有利誤認表示行為をした場合、100万円以下の罰金が科されます。

  4. (4)社会的評価の低下

    景品表示法に違反して措置命令が出されると、その内容が公表されてしまいます。結果、消費者の信頼を失うなどの社会的評価の低下を招くおそれがある可能性は否定できません。

    消費者の信頼を失ってしまうと多額の資金を投資して開発したゲームアプリが無駄になってしまいますので、非常に大きなペナルティーといえるでしょう。

5、ゲームアプリに関する法規制のご相談は弁護士へ

ゲームアプリの開発時や運用時に留意すべき法規制はガチャだけではなく、プレゼント企画やユーザー対応などでも発生します。

このような法規制に違反しないようにするには、弁護士によるリーガルチェックを受けることが有効です。

弁護士によるリーガルチェックを受ければ、ゲームアプリの開発にあたって留意すべき法的な規制や現状のアプリにおける仕様について、法的問題点の有無を確認できます。つまり、法的リスクのある箇所を漏れなく洗い出すことができるのです。

ゲームアプリは、頻繁な仕様変更を伴うものです。したがって、できれば継続的な法的支援が受けられる顧問弁護士をおすすめします。顧問弁護士であれば、いつでも気軽に相談ができますので、さまざまな法的リスクを未然に防ぐことが可能です。

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6、まとめ

ゲームアプリを開発する際には、有料ガチャを導入するケースが多いです。しかし、有料ガチャは、景品表示法によるさまざまな規制を受けますので、景品表示法違反にならないように開発を進めていかなければなりません。

そのためには、専門家である弁護士のリーガルチェックが有効ですので、顧問弁護士の利用をおすすめします。ベリーベスト法律事務所の顧問弁護士サービスは、月額3980円(税込)から選べる豊富なプランをご用意しています。中小規模のゲーム開発会社でも費用負担を抑えながら顧問弁護士を利用することが可能です。ゲームアプリ開発にあたって法的規制が気になるという方は、ベリーベスト法律事務所の顧問弁護士サービスをご利用ください。

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