キックバックとは、自社で取り扱う商品やサービスを導入してくれる取引先やその関係者に対して、代金の一部を返すことをいいます。
キックバックは必ずしも違法とは限りません。しかし、その態様によっては、詐欺・横領・背任・贈賄などの犯罪に該当することがあります。コンプライアンスの観点から、キックバックを行う際には事前に弁護士へ相談するとよいでしょう。
本記事では、キックバックの概要や問題点、企業がとるべき対策などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
キックバックとは、取引相手から代金を受け取った者が、支払った者または第三者に代金の一部を返すことです。1章では、キックバックが行われる理由や類似している用語との違いを解説します。
キックバックは、主に販売促進の目的で行われます。
たとえば、売り手が買い手に対して自社商品を販売し、買い手がその商品を不特定多数の顧客に販売するとします。これは「販売店契約」と呼ばれるものです。
販売店契約においては、買い手が一定の販売ノルマをクリアすることを条件として、売り手から買い手へのキックバックが行われることがあります。そうして買い手に積極的な販促活動を行ってもらい、売り手側の自社商品の売れ行きをよくして大きな利益を得ることが可能です。
その一方で、賄賂や利益の付け替えなど、違法な目的でキックバックが行われるケースもゼロではありません。適切なキックバックと違法なキックバックをきちんと区別し、違法行為には決して加担しないようにしましょう。
キックバックと似ている用語としては、「リベート」「バックマージン」「キャッシュバック」などがあります。
キックバックは、直ちに違法となる行為ではありません。しかし、キックバックの態様によっては違法行為に該当することがあるため、注意が必要です。
販売促進を目的とするキックバックは、原則として問題ありません。キックバックを含む取引の条件をどのように定めるかは、当事者の自由だからです(=契約自由の原則)。
たとえば、売り上げの達成度などに応じて合理的なキックバックを行うことは、契約自由の原則の範囲内であって問題ありません。
以下のような形で行われるキックバックは違法行為であり、処罰や行政処分などの対象となるおそれがあります。
違法行為に当たるキックバックをした企業は、以下に挙げるようなリスクを負ってしまいます。
キックバックによる脱税・背任・横領、およびキックバックの強要などは犯罪に該当する可能性があります。
犯罪に当たるキックバックに加担した役員や従業員など、重要な職務を担う関係者が逮捕されてしまうと、その穴を埋めるのは非常に大変なことです。その際に社内で不適切な対応がとられた場合は、従業員の信用を下げることにつながるでしょう。
税務調査を受けた際、キックバックが脱税に当たると判断されると、多額の追徴課税を受けることになります。本税だけでなく、重加算税や延滞税の納付も義務付けられるため、税負担が非常に重くなってしまうリスクにも注意が必要です。
買い手が取引上の優越的地位を濫用し、売り手に対してキックバックを強要した場合には、独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令の対象となりえます。
排除措置命令を受けた場合は、その内容に従い、優越的地位の濫用に当たるキックバックを直ちに停止するとともに、キックバックとしてこれまで受領した金銭を売り手に返還するなどの対応をとらなければなりません。
また、キックバックを強要していた期間における、相手方との間の取引額の1%に相当する課徴金の納付が命じられることもあります。
違法なキックバックに加担していたことが行政処分によって公表され、報道やSNSによって拡散されるなどすると、企業としての評判が大幅に低下するでしょう。その結果、売り上げ減少や人材離れなど、さまざまな方面で悪影響が生じ得るため、注意が必要です。
不適切なキックバックは、役員や従業員の独断で行われてしまうことがよくあります。企業としては、不適切なキックバックが行われないようにするため、以下のような対策を講じましょう。
会社資金を役員や従業員が簡単に持ち出せる状態だと、その資金が不適切なキックバックに流用されてしまうおそれがあります。
出金や残高を厳重に管理して、会社資金を勝手に持ち出すことができないようにしておきましょう。
取引先との間の発注や受注を、役員や従業員が単独の判断で行うことができる場合は、担当者の独断で不適切なキックバックが行われてしまうおそれがあります。
発注および受注の手続きを複数の担当者が行うようにして、違法なキックバックなど不適切な取引条件が設定されていないかどうかをチェックしましょう。
キックバックが違法となるのはどのようなケースか、違法なキックバックをしたらどのようなリスクが生じるのかなどについて、十分に理解している方は少ないと考えられます。
違法なキックバックの発生が懸念される場合は、役員や従業員に対して定期的にコンプライアンス研修を行い、その中でキックバックについても講義を行いましょう。
キックバックに関する正しい知識が浸透すれば、不適切なキックバックを回避することにもつながります。
内部通報制度を導入しておけば、万が一社内で違法なキックバックが行われたとしても、速やかにその情報を把握できる可能性が高まります。
内部通報制度の導入方法には、以下のような選択肢があります。
自社の状況に合わせて、効果的と思われる導入方法を検討しましょう。
法令違反を犯さないためのコンプライアンス対策や、実際にコンプライアンス違反が発生した場合の危機管理対応については、弁護士のアドバイスを受けながら行うことをおすすめします。
弁護士と顧問契約を締結すれば、コンプライアンス対策や危機管理対応などについて、いつでも相談することが可能です。
また、顧問弁護士と密にコミュニケーションをとりながら、企業の実情に合わせた効果的なコンプライアンス対策を行うことができます。危機的状況が発生した場合も、収束に向けた迅速な対応も期待できるでしょう。
顧問弁護士の存在は、企業のコンプライアンス強化について大きな支えとなります。顧問弁護士との契約をお考えの際は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
キックバックは直ちに違法となる行為ではありません。販売促進を目的とするキックバックは、原則として適法です。
ただし、キックバックによる脱税・背任・横領や、キックバックの強要などは違法行為です。違法なキックバックが行われないようにするため、顧問弁護士と契約してアドバイスを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所は、クライアント企業のニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスをご提供しております。顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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