2025年07月23日
  • 内部告発とは

内部告発とは? 公益通報との違いや告発されたときの対応方法

内部告発とは? 公益通報との違いや告発されたときの対応方法

従業員から違法行為の内部告発がなされたにもかかわらず、適切な対応を怠ると、会社は想像以上に深刻な影響を受ける可能性があります。

そのため、事実関係の調査やステークホルダーへの説明、再発防止策などを迅速に行わなければなりません。しかし、内部告発後はどのように対処すべきなのか、具体的なことはよく分からないという方もいるでしょう。

本コラムでは、内部告発とはどういうものかを理解するために、内部告発の基本概要や企業が受ける影響、その後にとるべき対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、内部告発とは? 公益通報(内部通報)との違いも解説

内部告発とは、自社で行われている違法行為について、企業の内部者である役員や従業員が主に社外(行政機関や報道機関、SNSなど)で告発を行うことを意味する言葉です。基本的には、社外に向けて違法行為の事実を発信することが「内部告発」と呼ばれます。なお、法律用語ではありません。

一方で、内部告発と似ている用語として「公益通報」が挙げられます。内部告発と公益通報には、下表のような違いがあることにご留意ください。

内部告発 公益通報
法律用語か否か 法律用語ではない 法律用語である
通報先 主に社外
(一例)
・行政機関
・報道機関
・SNS
社内・社外の両方があり得る
(一例)
・内部通報窓口(社内窓口、弁護士など)
・行政機関
・報道機関
法律上の要件 特になし(法律用語ではないため) 公益通報者保護法の要件を満たす必要がある
通報者の保護 公益通報に該当する場合に限り、公益通報者保護法により保護される 公益通報者保護法により保護される

公益通報とは、社内における違法行為の通報のうち、公益通報者保護法の要件を満たすものを指します。公益通報者は法律上保護され、企業が不利益な取り扱いをすることは違法です。
なお、内部通報窓口への通報も、行政機関や報道機関など社外への通報も、いずれも公益通報に当たる場合があります。

内部告発者についても、公益通報者保護法の要件を満たしていれば、公益通報者として保護されます。しかし、保護の対象外となる場合は、告発者に対する懲戒処分などが認められることがあることを覚えておくとよいでしょう。

2、内部告発が行われたときに、企業が受ける影響

役員や従業員によって内部告発が行われると、企業には以下のような悪影響が生じるおそれがあります。

  1. (1)顧客や取引先からの信頼の喪失

    内部告発がなされた事実は、報道やSNSなどによって社会的に拡散されることがあります。

    顧客や取引先にも内部告発の事実が伝われば、今まで築き上げてきた信頼を失ってしまうかもしれません。その結果、売上や収益の低下につながるおそれがあります。

  2. (2)業界全体への悪影響

    内部告発が業界全体に広まる悪習に関する内容の場合は、業界全体に対するバッシングが生じる可能性があります。

    令和7年(2025年)は、特定のテレビ局が関与した性加害事件が報道された際、他のテレビ局でも同じような被害が生じている可能性が指摘され、社会問題となりました。

    業界全体が批判を受ける事態となれば、内部告発の舞台となった企業においては、当然ながら率先して是正の取り組みを行うことが求められます。

  3. (3)損害賠償

    内部告発された違法行為に企業が関与していた場合や、防止措置を怠った場合などには、企業は被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

    また、内部告発をきっかけとして取引が打ち切りになるなど、他社に損害が生じた場合には、その損害についても賠償を求められるおそれがあるため、ご注意ください。

  4. (4)刑事訴追

    内部告発された違法行為が犯罪に当たる場合は、関係者の逮捕や起訴に発展するおそれがあります。

    特に企業の主要人物が逮捕・起訴された場合は、大々的に報道される可能性が高く、社会的な信頼の喪失を招いてしまうでしょう。

  5. (5)監督官庁による行政処分や行政指導

    企業が遵守すべき業法に関する違反行為が内部告発された場合は、その事実が監督官庁の知るところとなり、行政処分や行政指導を受ける可能性があります。
    行政処分の種類としては、措置命令や業務停止命令などが挙げられますが、特に業務停止命令は企業の収益や成長に大きな悪影響が生じてしまうでしょう。

    行政処分に至らなくても、行政指導を受けた場合には、それに従って速やかに違法行為を是正しなければなりません。また、行政処分や行政指導の事実も報道などによって拡散されることがあり、その場合は社会的な信頼の喪失が懸念されます。

3、内部告発された企業が行うべき対応と予防策

内部告発を受けた企業は、以下の対応を迅速などに行いましょう。
実際にとるべき対応については、企業の状況や不祥事の内容、法律のルールなどを踏まえて総合的に検討する必要があるため、弁護士への相談をおすすめします

  1. (1)内部調査委員会や第三者委員会の設置

    まずは、内部告発された違法行為について調査を行うための組織を設置しましょう。きちんと調査組織を設置することが、透明性の確保や見落としの防止につながります。

    違法行為の調査のために設置する組織としては、主に「内部調査委員会」と「第三者委員会」の2つがあります。

    内部調査委員会は、企業内部の経営者や従業員などを中心に組織する調査チームです。顧問弁護士などを加えるケースもあります。第三者委員会は、企業から独立した外部の専門家などで構成される調査チームです。弁護士などが委員となって調査を行います。

    内部調査委員会はコストを抑えられる反面、調査の透明性に疑義が呈されるおそれがあります。一方で、第三者委員会の設置にはコストがかかりますが、透明性が確保された形で調査を行うことができるのが大きなメリットです。

    不祥事の規模や報道の状況などに応じて、内部調査委員会と第三者委員会のどちらを設置すべきか適切に判断しましょう。

  2. (2)事実関係の調査

    内部調査委員会または第三者委員会は、内部告発された違法行為に関する事実調査を行います。主な調査方法としては、関係者に対するヒアリングや、社内文書のチェックなどが挙げられます。

    違法行為をしたとされる本人に対しても、適切なタイミングで事情聴取を行いましょう。証拠の隠滅などを避けるため、先に他の関係者へのヒアリングや文書のチェックなどを済ませることが望ましいです。
    また、本人に対する処分等を検討するため、弁明の機会を与えましょう。

  3. (3)ステークホルダーに対する説明

    社内不祥事が発生すると、株主などのステークホルダーは大きな不安を覚えます。信頼の喪失を最小限に抑えるため、ステークホルダーに対する説明を迅速かつ丁寧に行うことが大切です。

    社内調査の進捗状況や結果、違法行為をした人に対する処分の内容などを、透明性の確保された形でステークホルダーに開示しましょう。

  4. (4)警察や監督官庁への協力

    違法行為について、警察の捜査や監督官庁の調査が行われる場合は、誠実に協力しましょう。企業自体が刑事罰や厳しい行政処分を受けるリスクを抑えられるとともに、社会からの信頼の回復につながります。

  5. (5)再発防止策の検討・実施

    社内において同じような違法行為が二度と起こらないように、再発防止策を検討したうえで実施しましょう。違法行為が発生した経緯を詳しく分析し、その原因となったポイントについて徹底的に対策を行うべきです。

    また、違法行為に関する内部告発を防ぐためには、内部通報制度(公益通報制度)を導入することが考えられます。
    内部通報制度とは、社内窓口や社外窓口を設けて違法行為の通報を受け付け、通報者を保護する制度です。社内窓口は独立性の確保されたコンプライアンス担当者など、社外窓口は弁護士などが担当する例がよく見られます。

    内部通報制度の導入を検討する際には、弁護士のアドバイスを受けましょう

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4、内部告発をした労働者に対する処分の可否

自社の従業員(労働者)が違法行為の内部告発をした場合、それを理由に懲戒処分を安易に行うべきではありません。

内部告発が公益通報に当たる場合は、通報者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをすることは禁止されます(公益通報者保護法第3条、第5条)。
上記の規制に違反した企業は、解雇の無効や損害賠償などのリスクを負うことに要注意です。

公益通報の対象となるのは、公益通報者保護法により定められた法律(対象法令)の違反行為です。たとえば以下のような行為が挙げられますが、これらに限らず幅広い違法行為が通報対象となります。

  • 横領
  • 行政機関に対する虚偽の届出、申告
  • 業務改善命令に反する運用
など

企業が設置した内部通報窓口への通報は幅広く公益通報に当たるほか、行政機関や報道機関に対する通報も公益通報に当たるケースがあります。

内部告発が公益通報に当たるかどうか、告発者に対する懲戒処分が認められるかどうかなどについては、弁護士に相談しながら慎重に判断しましょう。

5、まとめ

内部告発とは、従業員などが企業内における違法行為について、主に外部(行政機関や報道機関、SNSなど)で告発することです。

内部告発がなされた場合は、社会的な信頼を回復するため、迅速かつ適切な対応が求められます。また、内部告発が公益通報に当たる場合は、告発者に対する懲戒処分などを行うことはできない点に注意が必要です。

ベリーベスト法律事務所は、企業の不祥事対応に関するご相談を随時受け付けております。従業員によって自社内の違法行為が内部告発され、どのように対処すべきか悩んでいる事業者は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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