2025年08月28日
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就業規則変更届とは? 記載内容や手続きの流れ、注意点などを解説

就業規則変更届とは? 記載内容や手続きの流れ、注意点などを解説

就業規則の変更とは、すでに作成・周知されている就業規則の内容を、事業場の実情や必要性に応じて改訂することをいいます。

企業の成長や法改正、裁判実務の変動、社会情勢の動向などさまざまな事情から、就業規則の変更が必要になる場面は少なくありません。労働時間や賃金、育児・介護休業といった労働条件の変更を伴う場合には、就業規則の変更が必要です。そして、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の変更に「就業規則変更届」の提出が法律上義務付けられています。

本コラムでは、企業が押さえておくべき就業規則変更届の書き方、手続きの流れ、注意点を、弁護士の視点から解説します。

1、就業規則変更届とは?

就業規則変更届とは、就業規則の内容を変更する際に、その変更内容を所轄の労働基準監督署長に届け出るための書類をいいます。
労働基準法(以下「労基法」といいます。)第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を新たに作成した場合だけでなく、変更した場合にも、所轄の労働基準監督署長に対して届け出ることが義務付けられています

この制度は、所轄の労働基準監督署長が事業場における労働条件の適法性を監督するうえで、就業規則の内容を把握しやすくすることを目的としています。

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2、就業規則変更届の書き方と提出方法

ここでは、就業規則変更届の記載方法および提出する際の手順について、具体的に解説します。

  1. (1)就業規則変更届の書き方

    就業規則変更届に法定様式の定めはありませんが、実務上は、厚生労働省の様式に準じて作成するのが一般的です。様式は、厚生労働省のホームページや労働基準監督署の窓口で入手可能です。

    参考:「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」(厚生労働省)

    就業規則変更届の記載事項としては、以下のものがあります。

    • ① 事業場の名称および所在地
    • ② 事業の種類(製造業、小売業、サービス業など、事業の主な種類)
    • ③ 労働者数(変更届を提出する時点における、事業場の労働者数)
    • ④ 変更年月日(就業規則を変更した年月日)
    • ⑤ 変更の概要(「賃金規程の改定」「育児休業に関する規定の新設」など)
    • ⑥ 使用者の職名および氏名(代表取締役など、事業の代表者の職名と氏名)
    • ⑦ 管轄労働基準監督署長欄(提出先の労働基準監督署の名称)
  2. (2)添付書類

    就業規則変更届を提出する際には、以下の書類を添付する必要があります。

    ① 変更後の就業規則
    変更後の全文を記載した就業規則を添付します。その際は、正本(提出用)と写しの2部を用意し、労働基準監督署の受付印を受けた写しは自社で保管しておきましょう。

    ② 労働者代表の意見書
    就業規則の変更の届出をするにあたっては、労働者側の意見を記載した「意見書」を添付します(労基法第90条)。この意見書には、事業場ごとに、事業場ごとに、労働者の過半数で組織された労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者から意見を聴取し、文書に記載します。
    なお、いわゆる「管理監督者」(労基法第41条2号に該当する者)は労働者代表になれないことには注意が必要です(労基法施行規則第6条の2第1項1号)。
    意見書には、署名押印は不要ですが、誰が意見書を作成したかを明確にするために記名(氏名の記載)は必要です。
    労働者側に意見がない場合、意見書には「特になし」等、意見がない旨を記載してもらいましょう。
  3. (3)提出先

    作成した就業規則変更届および添付書類は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。管轄の労働基準監督署については、厚生労働省のホームページや最寄りの労働基準監督署で確認することができます。

  4. (4)提出方法

    就業規則変更届の提出方法には、以下の3つがあります。

    ① 窓口提出
    作成した書類を、管轄の労働基準監督署の窓口に直接持参して提出します。

    ② 郵送提出
    作成した書類を、管轄の労働基準監督署宛に郵送します。郵送する際は、書留など配達記録が残る方法で送付することが望ましいです。

    ③ 電子申請
    厚生労働省が提供する「e-Gov(イーガブ)」というオンライン申請システムを利用して提出します。電子申請を利用するには、事前に電子証明書の取得などの準備が必要となりますが、時間や場所を問わず提出できるため、近年では利用が増加しています。

    参考:「就業規則(変更)届(各事業場単位による届出)」(e-Gov電子申請)

3、就業規則を変更する際の手続きの流れ

就業規則の変更にあたっては、単に書類を提出するだけでなく、社内での適切な手続きを踏むことが求められます。一般的な手続きの流れは以下のとおりです。

それぞれの手順について、順に解説します。


  1. (1)就業規則の変更案を作成する

    なぜ就業規則の変更が必要なのかを明確にし、現行規則の課題や問題点を洗い出します。その上で、課題が解決できかつ法令にも適合した内容であることを確認し、社内での議論を経て変更案を策定します。

  2. (2)労働者から意見を聴取する

    変更案を策定したら、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合に、ない場合は労働者の過半数代表者に対して、就業規則の変更案を提示し、意見を聴取します。意見は「意見書」という形式で提出してもらう必要があります

  3. (3)就業規則変更届を提出する

    就業規則変更届および添付書類(変更後の就業規則、労働者代表の意見書等)を準備し、所轄の労働基準監督署長に提出します。

  4. (4)変更後の就業規則を労働者に周知する

    就業規則を変更した際には、その内容を労働者に周知しなければなりません(労基法第106条)。労働者への周知は、社内掲示、イントラネットへの掲載、書面配布などの方法で、労働者が常時確認できる状態にしておく必要があります

4、就業規則変更届を作成する際の注意点

就業規則変更届を作成・提出する際には、以下のような点に注意が必要です。

  1. (1)変更内容が多い場合

    変更内容が多く様式内に収まりきらない場合、就業規則変更届の「主な変更事項」には、主な変更事項の概要を記載すれば差し支えありません。加えて、変更後の就業規則に新旧対照表を添付することにより、変更内容がより明確になり、手続上もスムーズです。

  2. (2)届出の期限

    常時10人以上の労働者を使用するに至った場合は、遅滞なく、就業規則の届出をしなければならないということが、労基法施行規則に定められていますが(同規則第49条1項)、就業規則を“変更”した場合の届出の期限は定められていません。ただ、後述するように就業規則変更の届出義務を怠った場合は罰則の対象となるため、実務上は、就業規則を変更したら速やかに届出を行うべきでしょう。

  3. (3)労働者から意見書の提出が拒否された場合

    労働者代表が意見書の提出を拒否した場合は、「意見書不添付理由書」を作成し、就業規則変更届に添付することで対応可能です。労働者代表への意見聴取は会社の義務であり、これを怠った場合は、労基法第120条第1項に基づき30万円以下の罰金が科される可能性があります。たとえ意見書の提出が拒否されることが明らかな場合であったとしても、意見聴取自体は必ず実施してください

  4. (4)届出を怠った場合

    就業規則変更の届出義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科されることがあります(労基法第120条1項)。就業規則の変更届出の義務は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が労基法第89条各号に挙げられている労働条件を変更した場合に発生します。

  5. (5)事業場が複数ある場合

    就業規則は事業場ごとに作成・変更の届出をすることが必要ですが、内容が全事業場で共通している場合には、本社を管轄する労働基準監督署長に一括して届け出ることができます(本社一括届出)。ただし、この場合でも、労働者からの意見聴取は各事業場で行う必要があり、就業規則変更届に添付する意見書は各事業場で作成する必要があることに注意が必要です。

    なお、本社の就業規則と各事業場の就業規則は同一の内容であることが必要ですので、就業規則の変更の届出を行う場合は、各事業場の就業規則が変更前および変更後のいずれも本社と同一内容である旨を届け出る必要があることに注意してください。

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5、まとめ

就業規則の変更は、企業の運営方針や労働環境の変化に柔軟に対応するために不可欠なプロセスです。ただし、その実施にあたっては、法的な要件や手続きを遵守する必要があり、変更案の策定から労働者の意見聴取、「就業規則変更届」の書類の準備・提出、そして労働者への周知まで、一連の流れを適切に踏むことが求められます。

就業規則変更の必要性や合理性を十分に検討し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することが、リスク回避の観点からも有効です。

ベリーベスト法律事務所では、労務分野に詳しい弁護士が、就業規則の作成および変更に関する各種支援を提供しています。
就業規則変更届について不明点やお悩みがある場合は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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