YouTubeで動画を見ていたところ、自社制作の作品やキャラクター画像が無断で使用されている事態に遭遇し、どう対応すべきか戸惑っている方もいらっしゃるでしょう。
第三者による画像の無断使用は、企業のブランドイメージや知的財産を脅かす深刻な問題です。特に、YouTubeのような拡散力のあるプラットフォームでは、一度公開されたコンテンツが短期間で大量に視聴される可能性があり、被害が広がりやすくなっています。
たとえ使用者に悪意がなくても、著作権者の許諾なしに画像が使われている場合は、原則として著作権侵害に該当する可能性が高いです。そのまま放置していると、自社の権利や利益を損なうおそれがあるため、注意してください。
本コラムでは、YouTube動画における著作権侵害の判断基準や、実際に画像などを無断使用されていた際の削除申請や損害賠償請求の方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
YouTubeにアップロードされた動画内で、自社の作品やキャラクター画像などが無断で使用されている場合、著作権侵害にあたる可能性があります。
1章では、著作権侵害が成立する要件や「引用」として認められる使用との違い、さらに肖像権との関係性について説明します。
著作権侵害とは、著作権者の許諾なく著作物を使用する行為のことです。
自社が制作したアニメのキャラクター画像や場面カットなどは、著作物に該当するときには、著作権によって保護されます。
YouTubeでの画像無断使用が著作権侵害と認定されるには、次の3つの要件を満たさなければなりません。
たとえば、動画の背景にキャラクター画像を表示したり、解説動画で場面カットをそのまま挿入したりする行為は、公衆送信権や複製権の侵害に該当する可能性があります。
以上の3つの要件のうち、一番の出発点になるのが、自社が制作したアニメのキャラクター画像や場面カットなどが、著作権法上保護される著作物に該当するかどうか、という点です。
著作権法上、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています(著作権法第2条第1項第1号)。
自社で制作したアニメキャラクターの画像、テレビやゲームソフトを介して表示される個別の画像などは、「創作的に表現したもの」である限り、著作物として保護されます。
自社の作品についても、「文芸、学術、美術又は音楽」といったいわば文化の範囲に属するものである限り、著作物として保護されます。なお、文化の範囲に属さないもの、典型的には工業製品を想定していますが、工業製品のデザインは、意匠権によって保護されます。
著作権法では、一定の条件を満たす場合には、著作権が制限され、著作者の許諾を得ることなく著作物を利用できる場合があります。
YouTubeの動画において自社制作の作品やキャラクター画像が無断で使用されていた場合、適用されうる制限規定としては、いわゆる「写り込み」というものがあります。
著作権法上、写り込みとして著作物の利用が認められるには、著作権法30条の2第1項所定の要件を満たす必要があります。条文そのものは長い文章で読みにくい内容になっていますが、大きく分けて次の4つの要素に分割することができます。
「複製伝達行為」は、「写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為」と定義されています。すなわち、写真撮影などに限らず、スクリーンショットや生配信なども、写り込みの対象となります。
「付随対象著作物」は、その対象とする事物又は音(…)に付随して対象となる事物又は音(…)に係る著作物をいいます。そして、その著作物は、当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(…)のうち、…「軽微な構成部分となる場合」における著作物に限られます。すなわち、自社で制作したアニメのキャラクター画像や場面カットなどをメインに写したような場合には、この条文の要件には当てはまらないこととなります。
写り込みの要件は、法改正によって緩和傾向にありますが、それでも、以上のような要件を満たさなければ、無許可での利用はできません。
そのため、「ちょっとだけ使った」「宣伝になると思って使った」などの事情は、容易には通用しないといえます。
YouTubeの動画内に実在の人物が写っている場合は、肖像権の侵害にも注意が必要です。
肖像権は、本人の許可なく容貌や姿を撮影・使用されない権利であり、芸能人や個人に関する画像に適用されます。
一方、自社制作のキャラクターに肖像権が認められることはありません。キャラクター画像に関しては、肖像権ではなく著作権の侵害が問題となります。
このように、肖像権と著作権は権利主体も保護内容も異なるため、権利侵害を判断する際には混同しないように注意しましょう。
著作権侵害を放置すると、企業の信用やブランド価値に深刻なダメージを与える可能性があるだけでなく、長期的には売り上げや事業展開に影響を及ぶような重大なリスクがあります。
ここからは、YouTube動画での画像の無断使用を放置することで生じうる、主なリスクを3つ解説します。
無断で使用された画像が意図しない文脈や表現で扱われている場合、YouTubeの視聴者に誤った印象を与えるおそれがあります。
たとえば、作品とは無関係な風刺的なコンテンツや、品位を欠くコンテンツにキャラクターが登場していたり、事実と異なる解説で場面画像が使われていたりすると、作品や企業のブランドイメージが損なわれてしまうでしょう。
一度傷ついたブランドは、容易にイメージを回復することはできません。視聴者やファンの信頼を維持するためにも、無断使用に対しては毅然と対応する姿勢が求められます。
無断使用を放置すると、自社のライセンスビジネスや販促活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、本来は契約を結んで使用許諾を得たうえで画像を活用すべきところ、第三者が自由に使っている状況が放置されていれば、「契約を結ぶ必要がない」「無断で使っても問題ない」との誤解が広まりかねません。
その結果、本来得られるはずだったライセンス収入やコラボ案件が失われるなど、ビジネス上の損失につながる可能性があります。
著作権侵害に対して適切な対応をとらなければ、今後も同様の無断使用が繰り返される可能性が高くなります。
YouTubeのような拡散力の強いプラットフォームでは、1件の放置が「使用しても問題ない」という誤った前例となり、さらに被害が広がってしまうおそれも否定できません。
また、侵害行為が終わってから時間が経つと、損害賠償請求の時効などにも影響する可能性があります。
法的措置をとるにしても、早期に証拠を確保しておかなければ対応が困難になる場合もあるため、放置は非常に危険です。
自社制作の画像が無断でYouTubeに使用されていると判明した場合は、速やかに対応を検討しましょう。ここからは、著作権侵害に対して企業が取り得る、主な4つの対応策を紹介します。
まず検討すべきは、YouTubeを通じた削除要請です。
著作権侵害が疑われる場合は、YouTubeの「著作権侵害申し立てフォーム」から、対象動画の削除を申請しましょう。
YouTubeでは「コンテンツID」により、著作権者が自社コンテンツの使用状況を管理できる仕組みがあります。また、コンテンツIDに登録していない場合でも、手動で削除を申し立てることが可能です。
著作権侵害の申し立てには、以下のような情報が必要になります。
虚偽の申し立てはペナルティの対象となるため、事実関係をよく確認したうえで慎重に行うようにしてください。
YouTube側が削除に応じない場合や悪質なケースでは、裁判所を通じて「差止請求(さしとめせいきゅう)」を行うこともできます。
差止請求とは、著作権者が侵害行為の停止や予防を求めて、裁判所に申し立てる法的措置のことです。
差止請求が認められれば、裁判所が相手方に対して該当動画の削除や配信停止を命じる判断を下します。その際に、より簡易迅速な対応を求めたいときは、仮処分を利用することも検討すべきでしょう。
なお、裁判手続きでは、著作権の保有者であることや侵害事実の立証が必要なため、証拠の確保や準備には専門的知識が求められます。
迅速かつ適切に対応するためにも、画像の無断使用に関する問題は弁護士に相談することがおすすめです。
侵害の程度や影響が大きい場合は、損害賠償請求を検討することも選択肢のひとつです。
損害賠償を求める際は、著作権侵害があること、自社に損害が生じたこと、そして因果関係があることを証明しなければなりません。
損害額の算定方法としては、以下のような基準が用いられます。
侵害者との交渉が難航する場合は、民事訴訟や仮差し押さえといった法的手段に移行することも考えられます。
いずれの場合も弁護士のサポートが必要なため、早い段階で相談することが望ましいです。
同じ投稿者による無断使用が繰り返されていたり、削除申請を無視して継続的に著作権を侵害されていたりする場合は、YouTubeに対してアカウント全体の通報を行うことも可能です。
YouTubeでは、著作権侵害の常習者に対して、以下のような処分を行うことがあります。
繰り返しの侵害はYouTubeの利用規約違反に該当するため、適切に通報することで再発防止や抑止効果が期待できます。
YouTube上で自社の画像が無断で使用される場合、企業だけで対応するには限界があります。削除申請や損害賠償請求には専門的な知識や法的判断が必要で、誤った対応をすると逆に不利になる可能性もあります。
4章では、著作権侵害の場面で弁護士がどのようなサポートを提供できるかを解説します。
弁護士に相談することで、「その画像使用が本当に著作権侵害にあたるのか」「写り込みとして認められる余地があるのか」など、専門的な視点からの法的判断を得ることが可能です。
著作権侵害の成立には、著作物性や使用の態様、「写り込み」の要件の充足など、複雑な法的要素が関わります。判断を誤ると、YouTubeへの削除申請が却下されたり、逆に相手から反論されたりするリスクもあるため、注意が必要です。
弁護士の見解をもとに、適法・違法の境界線を明確にしておくことで、その後の対応方針を的確に定めることができます。
削除要請や損害賠償請求を弁護士に依頼すれば、企業側は交渉や手続きに煩わされることなく、すべての対応を任せることができます。
民事訴訟や仮処分などの法的手段も含め、状況に応じて柔軟に対応することが可能です。
著作権侵害への対応は、単発的な削除・賠償請求で終わらせるべきではありません。
弁護士に依頼すれば、今後の無断使用を防ぐ体制づくりや契約書の整備など、企業全体としての知財リスク管理についてもサポートを受けることが可能です。
たとえば、YouTubeでの二次利用や業務委託先への権利帰属の明記など、契約内容の見直しや利用規約の整備を通じて、トラブルの未然防止が図ることができます。
弁護士は「権利を守る」だけでなく、「侵害されにくい仕組みを作る」役割も担いながら、トラブル解決に向けて尽力いたします。
YouTubeで自社の作品やキャラクター画像などが無断使用されている場合、著作権侵害に該当する可能性が高く、放置すればブランド毀損や損失の拡大につながりかねません。
このような状況に直面したときは、削除申請や差止請求、損害賠償などの対応を検討し、再発防止も視野に入れることが重要です。
ただし、著作権問題は法的判断が難しいケースも多いため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、大切な知的財産を守るために知見・経験豊富な弁護士がサポートいたします。画像の無断使用などでお困りの際は、まずは当事務所までご相談ください。
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