法人名義で賃貸契約を締結する場合、個人契約とは異なるルールがあります。物件を借りる用途や契約内容によっては、思わぬトラブルが生じることもあるため、事前に契約の流れや注意点を理解しておきましょう。
今回は、法人が賃貸契約(賃貸借契約)を結ぶ際の流れや注意点、契約時に気をつけるべき項目について紹介します。また、万が一トラブルが起きた際の対処法などもベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
会社などの法人が契約当事者となり、賃貸物件を借りる際には、主に以下の2つの目的があるケースが一般的です。
賃貸契約の名義が法人の場合、審査基準や必要になる書類が個人契約とは異なります。
審査基準は、個人であれば収入、勤務先、滞納歴の有無などが考慮されますが、法人は企業としての信用度や、財務状況が考慮されます。一般的には個人より法人の方が信用性は高く、入居審査に通りやすい傾向ですが、設立後間もない法人の場合は審査が厳しくなるとされます。
また、申請時の必要書類として、個人であれば住民票、収入証明書(給与明細、源泉徴収票など)、身分証明書などが欠かせませんが、法人は以下の書類が求められることが多いです。
法人名義で賃貸契約をするための手続きの流れを紹介します。個人契約と似た部分もありますが、法人特有の手続きもある点に注意が必要です。
希望する物件が見つかったら、賃貸申込書に必要事項を記入して、不動産会社に提出しましょう。その際、先述の法人登記簿謄本などの書類も併せて用意しておきます。
申込書と提出書類をもとに、貸主や保証会社による審査が行われます。審査では、主に以下の項目がチェックされます。
審査には通常、1~5営業日程度かかりますが、1週間以上かかるケースもあります。
先述のとおり、法人契約は個人契約よりも審査が通りやすい傾向にありますが、審査に落ちることもあります。たとえば、新設法人や赤字決算が続いている企業は、家賃滞納のリスクが高いと評価されてしまい、審査が厳しくなることもあるでしょう。
また、法人契約でも連帯保証人を求められるケースがありますが、その場合は法人の代表者が保証人になります。
審査を通過すると、賃貸借契約書の締結に進みます。法人契約では、法人の代表者による代表印の押印が求められるため、審査の通過後スムーズに契約締結手続きができるよう、社内稟議(りんぎ)・承認を得ておくべきでしょう。
なお、賃貸借契約書に署名押印をする際には、後述するように定期借家であるかどうかや物件の使用用途や解約条件、原状回復義務などをよく確認するようにしてください。
契約締結後、入居前に初期費用を支払います。法人契約も個人契約と同様に、以下のような費用がかかります。
オフィス用物件などでは、敷金(保証金)が家賃の6~12か月分と高額に設定されていることもあるため、費用の総額は事前に確認しておくと安心です。
初期費用の支払いが完了すると、鍵が引き渡されて正式に入居できるようになります。
法人の場合、社内のレイアウト設計やITインフラ整備など、実際にオフィスとして使うまでに準備が必要なこともあるため、その期間を考慮しておくようにしましょう。
法人が賃貸契約を締結する際に注意すべきポイントとして、以下の3つが挙げられます。
賃貸借契約の中には、所定の手続を経ることにより一定期間で必ず賃貸借契約を終了させられる定期借家契約という類型が存在します。この定期借家であった場合、賃貸借契約の更新は保証されず、新たに賃貸人が定める条件にしたがって契約をすることでしか、当該建物の利用を継続できません。この場合、賃料増額を求められた場合、断れなくなります。
事業拡大(縮小)や移転などにより、契約期間中に物件を退去しなければならないこともあります。そのような場合に備えて、あらかじめ契約書の中途解約条項を確認しておくことも重要です。
解約予告の期間、違約金の有無や金額、原状回復義務の内容などを把握しておくことで、思わぬ損失のリスクを避けることができるでしょう。
退去時の原状回復義務についても、個人契約と異なる扱いとなる場合があります。たとえば、オフィス内装の取り壊し費用やクリーニング費用について、どの程度契約書で明示されていれば借主負担になるかについては、裁判例上も解釈が分かれており、原状回復の範囲をめぐってトラブルが生じる可能性もあり得るでしょう。
クリーニング費用については、退去時にどこまで原状回復義務を負うのかもめないよう、適宜入居後の物件の状態を写真などで記録しておくことをおすすめします。
また、敷金の返還条件や時期についても契約書で明確にされているかを確認すべきです。
不動産に関する契約トラブルにお悩みの方は、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。弁護士に相談する主なメリットを3つご紹介します。
法人名義の物件については、賃貸借契約の種類に応じた賃料増額リスクの有無や、原状回復の範囲や保証金の返還、中途解約時の違約金などをめぐってトラブルが生じることもあります。さらに、個人契約とは異なるルールがあり、トラブルが生じたときの金額も高額になることから、簡単に解決できないケースも少なくありません。
このようなトラブルに直面したときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、契約内容や関連法令などに基づいて、適切な法的対応策をアドバイスすることができます。専門家の判断を仰ぐことによって、無駄な損失やリスクを最小限に抑えることが可能です。
法人契約の賃貸物件でトラブルが生じた場合、まずは賃貸人との話し合いにより解決を図ることになります。しかし、当事者同士の交渉では、感情的になることや、適切な主張・反論ができずに不利な条件を押し付けられてしまうリスクがあります。それを回避するには弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士であれば、代理人として賃貸人と直接交渉をすることができるため、冷静かつ適切に交渉を進められます。面倒な交渉をすべて任せることができるため、法人の担当者の負担を軽減することができるでしょう。
トラブル発生後の対応にとどまらず、顧問弁護士を活用すれば、契約前の内容確認やリスク分析といった予防的な対応も可能です。
契約書のリーガルチェックや、事前の相談体制を整えておくことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができ、安心して法人契約を進めることができます。
法人の賃貸契約は、個人契約とは異なるルールがあります。法人契約のルールや特殊性をしっかりと理解しておかなければ、思いもよらぬ損失が発生するリスクもあるでしょう。さらに、トラブル発生時の損失も個人契約より大きくなるため、トラブルを未然に防ぐためにも弁護士に相談することを検討しましょう。
法人の賃貸契約でお悩みの方や、物件トラブルに巻き込まれてしまった方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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