2025年10月29日
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休憩時間中の仕事は違法? 残業代が発生する? 弁護士が解説

休憩時間中の仕事は違法? 残業代が発生する? 弁護士が解説

昼休み中も従業員に電話対応や来客対応をさせてはいませんか?

このような状況は、休憩時間の自由利用が確保されていないため、労働基準法に違反する可能性があります。休憩時間に関する労働基準法違反を防ぐには、休憩時間の基本的なルールをしっかりと押さえておくことが大切です。

休憩中も電話対応などの業務を指示している場合、適切な休憩時間が確保されておらず労働基準法違反に当たる可能性があります。企業が知っておくべき休憩時間の法的ルールやトラブル事例、リスクについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、休憩時間の仕事は違法?

労働基準法34条では、労働時間に応じて法定の休憩時間を与えることを使用者に義務付けています。
具体的には以下のとおりです。

  • 労働時間が6時間を超える場合:45分以上の休憩
  • 労働時間が8時間を超える場合:1時間以上の休憩

この「休憩」とは、労働から完全に解放され、従業員が自由に利用できる時間を指します。そのため、企業が休憩時間中に従業員へ業務(例:電話対応・来客対応)を命じている場合や、何かしら連絡が入ればすぐに対応しなければいけない状態にある場合、形式的に「休憩」を与えていても、実態として労働時間と評価される可能性があります。

特に、以下のような職種では休憩時間の確保が難しいとされる場面も少なくありません。

  • トラックやバスなどのドライバー
  • 介護、福祉職
  • 医療職(看護師など)
  • 保育士、幼稚園教諭

これらの業種では、業務の性質上、完全な自由利用が難しいケースがあるため、企業としても特に注意が必要です。

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2、休憩時間に関する3つの原則とその例外、注意点

休憩時間に関する労働基準法違反を防ぐには、休憩時間の3つの原則とその例外を正確に理解しておく必要があります。

  1. (1)休憩時間に関する3つの原則とその例外

    労働基準法では、休憩時間に関して以下の3つの原則を定めています。

    ① 途中付与の原則
    休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりません
    出勤直後や退勤直前にまとめて与えることは、原則として認められません。

    ② 一斉付与の原則と例外
    事業場では、原則として全従業員に一斉に休憩を与える必要があります
    ただし、以下の業種に該当する場合または労使協定を締結した場合には、一斉付与の原則は適用されず、例外的に休憩時間を一斉に付与しなくても違法にはなりません。

    • 道路、鉄道、軌道、索道、船舶または航空機による旅客または貨物の運送の事業
    • 物品の販売、配給、保管もしくは賃貸または理容の事業
    • 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内または広告の事業
    • 映画の製作または映写、演劇その他興行の事業
    • 郵便、信書便または電気通信の事業
    • 病者または虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
    • 旅館、料理店、飲食店、接客業または娯楽場の事業
    • 官公署の事業

    ③ 自由利用の原則と例外
    休憩時間は、従業員が自由に使える時間でなければなりません
    業務指示がある状態では「休憩」として評価されず、労働時間とみなされます。
    ただし、以下の業種については休憩時間の自由利用の原則が適用されません。

    • 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員、および児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
    • 乳児院、児童養護施設、および障害児入所施設に勤務する職員で、児童と起居をともにする者
    • 児童福祉法6条の3第11項に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者
  2. (2)休憩時間に関する注意点

    休憩中に電話対応や来客対応をしなければならないケースでは、休憩時間の自由利用の原則に違反しますので、労働基準法違反となります。また、明示的に休憩時間中の業務を指示していなかったとしても、以下のようなケースでは黙示の業務指示があり、休憩時間にはあたらないと判断される可能性があります。

    • 電話が鳴ったら対応するよう無言のプレッシャーがある
    • 来客対応できる人を用意していないため、来客対応せざるを得ない状況になっている
    • 管理職が「このぐらい対応して当然」と暗に期待している

    このような状況では、本人が「嫌とは言えない」立場にあるとみなされ、自由利用の原則
    が守られていないと評価される可能性があります。

3、休憩時間に関する労働基準法違反の具体例

企業の現場では、「形式的には休憩を取っている」ように見えても、実態として休憩時間が確保されていないケースが散見されます。企業としては、無意識に行ってしまいがちな運用が、違法となるおそれがあることを理解し、適切な対応が求められます。

以下に、労働基準法に違反する可能性が高い代表的な事例を紹介します。

  1. (1)休憩時間中も業務対応を指示

    「昼休み中でも電話が鳴ったら出てください」「来客が来たら対応して」と指示しているようなケースは、労働から完全に解放されていませんので、労働基準法違反となる可能性が高いです。

    特に注意が必要なのは、「本人が好意で対応している」というケースです。職場全体として対応を期待されている雰囲気がある場合には、労働時間と評価される可能性がある点に注意しましょう。

  2. (2)休憩を与えない代わりに出勤・退勤の時刻をずらしていいと言う

    「昼休みは取らなくていいから、その分早く帰っていいよ」といった運用をしていませんか?

    このようなケースでは、たとえ労働者が納得していたとしても、休憩を「労働時間の途中」に付与するという法令上の要件を満たしておらず、違法とされる可能性があります

    労働基準法は、一定時間以上の連続した労働に対して休息を与えることを義務付けており、労働者が疲労や健康上のリスクを蓄積しないよう保護することを目的としています。
    「前倒し」や「後ろ倒し」では、この目的を達成できないため違法と評価されます。

  3. (3)残業が発生しているのに休憩時間を増やさない

    労働基準法34条では、以下の休憩時間の付与が義務付けられています。

    • 労働時間が6時間を超える場合:45分以上
    • 労働時間が8時間を超える場合:1時間以上

    たとえば、6時間勤務の従業員が2時間残業をしたのに45分しか休憩を与えていない場合、15分の不足が発生し、これは労働基準法違反となります。「繁忙期だから」「人手不足だから」などの理由は、法的には通用しません。

  4. (4)タイムカードや勤怠管理システムでの「見かけ上の休憩」

    タイムカードや勤怠システム上では「休憩1時間」と記録されていても、実際にはその時間中に電話番や来客対応、メール確認などの業務を行っていた場合、打刻内容と実態が乖離していますので違法と判断されます。

    労働基準法では「実態がすべて」であり、帳簿上の「休憩時間」だけでは足りません。従業員が休憩中も「労働せざるを得ない」状態にあった場合、それは労働時間と評価され、休憩を与えていなかったと判断されます。

4、休憩時間に関するトラブルが起きた場合のリスクと対応

以下では、休憩時間に関するトラブルが起きたときのリスクとその対応について説明します。

  1. (1)休憩時間に関するトラブルが生じた場合のリスク

    休憩時間の管理が不適切である場合、企業には以下のようなリスクが生じます。

    ① 労働基準監督署からの是正勧告や指導
    従業員からの申告を受けて、労働基準監督署が調査に入り、是正勧告や指導が行われることがあります。場合によっては企業名が公表されることもあります。

    ② 未払い賃金の請求
    「実質的に労働していた」として、休憩時間中の労働が時間外労働と認定されれば、残業代の支払い義務が生じます。場合によっては、時効になっていない過去3年分の遡及請求が認められることもあります。

    ③ 職場の信頼関係・雰囲気の悪化
    休憩時間が十分に確保されていない職場では、従業員の不満が蓄積しやすく、離職率の上昇職場トラブルにつながるリスクがあります。企業イメージの低下にも直結します。
  2. (2)休憩時間に関するトラブルの対応方法

    休憩時間に関するトラブルを未然に防ぐためには、日常の業務運用を見直し、労働実態に即した就業管理を行うことが重要です。特に「名目上の休憩」や「不明確な業務指示」が常態化している職場では、労働基準法違反とされるリスクが高まります。

    こうした法令違反を回避し、適法な運用体制を整えるためには、顧問弁護士の活用が非常に有効です。顧問弁護士を利用することで、以下のようなメリットが得られます。

    ① 実態に応じた労務管理・対応のアドバイスが得られる
    業種や職場ごとの業務実態を踏まえたうえで、「どこまでが労働時間か」「どのような運用がリスクになるか」など、専門的な視点から判断してもらえます。

    ② 就業規則や休憩時間の運用ルールを合法的に整備できる
    企業の就業規則や休憩時間の管理方法が、法令に適合しているかを点検し、必要に応じて修正・改善するサポートを受けられます。
    また、従業員からの申告や労基署の調査といったトラブルが発生した場合でも、顧問弁護士が迅速に対応方針を助言することで、損害や風評被害を最小限に抑えることが可能です。
    企業が安心して雇用を継続していくためにも、法令遵守のための予防的な法務対策として、顧問弁護士の導入を検討することをおすすめします
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5、まとめ

休憩時間は、労働者の健康や生産性を確保するために不可欠な制度です。企業側としては、形式的に「休憩を与えている」とするだけでなく、実態として休憩が確保されているかどうかをしっかりと確認するようにしましょう。

特に、現場対応が求められる業種では、柔軟な制度設計と運用ルールの整備が不可欠です。トラブル防止と職場環境の改善のために、就業規則や労務管理を見直す際には、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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