企業法務コラム

2019年11月18日
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人事・採用担当者必見! 採用の法律・罰則、人材募集で気を付けるべきこと

人事・採用担当者必見! 採用の法律・罰則、人材募集で気を付けるべきこと

人事採用では売り手市場が続いており、各社の人材獲得競争はますます激しさを増すばかりです。

優秀な人材を集めたいがために、本来知らせるべき情報を求人票に明示しなかったり、面接で聞くべきではない事項を質問したりする企業もあり、注意が必要です。場合によっては、「法律違反」になって罰則を適用される可能性もあります。

今回は人事採用に関する法律や罰則をご紹介しますので、人事採用担当者の方はぜひとも参考にしてみてください。

1、企業側の採用の自由と公正な採用選考の必要性

そもそも、企業の採用活動は法律で規制されるものなのでしょうか?
各企業には「採用の自由」があり、募集方法や採用人数、採用基準について企業は自由に決めることができます。
一方、憲法は1人1人の国民に「職業選択の自由」を保障しています(憲法22条)。

そして、個々の国民の職業選択の自由を十分に保障するためには、採用者である企業側が差別をせず公正な方法で選考することを求められます。不公平かつ差別的な採用活動が行われて門戸が閉ざされてしまったら、個々の国民の職業選択の自由は実質的には保障されないのと同じになるためです。

公平で不合理な差別のない採用を実現するためには、企業の自主性に任せるだけではどうしても難しいでしょう。そこで、雇用者である企業側の採用活動に対しては、さまざまな法律による規制がもうけられ、これによって不公正な採用が行われることを防止しているのです。

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2、法律上求人票に記載すべきこと、記載してはならないこと

まずは企業が求人募集する際に適用される、法律による制限をみていきましょう。
求人票には法律上記載しなければならない項目が決まっています。

また、法律によって求人情報として記載してはならないとされる項目もありますので、求人広告を出す際に合わせて確認しましょう。

  1. (1)法律上、求人票に明示しなければならない項目

    職業安定法5条の3と職業安定法施行規則4条の2において、以下の事項を求人票に記載しなければならないとされています。

    • 労働者が従事する業務内容
    • 労働契約期間
    • 就業場所
    • 始業と終業の時刻
    • 所定労働時間を超える労働の有無
    • 休憩時間と休日
    • 賃金の計算・決定方法、締め日と支払い日
    • 健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用有無など

  2. (2)法律上、求人票に記載してはいけない事項

    以下のような記載は法律上禁止されています。

    ア 性差別的な表現(男女雇用均等法5条)

    イ 年齢制限(雇用対策法10条)
    ただし、以下のような場合には例外的に年齢制限をすることが可能です。
    (ア)65歳を定年とする企業において、64歳以下の人に限定して期間の定めなく募集する場合など定年年齢を上限とする場合
    (イ)18歳以下は働いてはいけない危険有害業務など、労働基準法その他の法律による年齢制限がある場合
    (ウ)長期勤務を前提としたキャリア形成目的で若年層を期間の定めなく募集する場合
    (エ)技能やノウハウ継承のため、特定職種の特定年齢層(30~49歳のうちの5~10歳の範囲内の年齢層)を対象に、期間の定めなく募集する場合
    (オ)子役など、芸術や芸能分野で表現のために必要な場合
    (カ)60歳以上の高年齢層を対象とする場合や、国が実施している特定年齢層の雇用促進施策の対象となる場合

    ウ 応募者に誤解を与える表現(職業安定法38条等)
    たとえば営業職募集の際、実際にはあり得ないような過大な歩合給を提示したり信用性の高い親会社の名前を使って子会社が求人募集をしたりする場合などです。

  3. (3)法律に違反するとどのような罰則を受けるのか

    応募者に誤解を与える表現をすると職業安定法違反となり、6か月以下の懲役刑又は30万円以下の罰金刑が適用される可能性があります(職業安定法65条)。

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3、法律上、面接で回避すべき質問事項、提出を求めるべきではないもの

採用面接の際にも、応募者への質問を回避すべき事項や提出を求めてはならないものがあります。以下で順番にみていきましょう。

  1. (1)面接で回避すべき質問事項

    厚生労働省の「採用先行自主点検資料」によると、以下のようなことは、面接で質問することは回避すべきと記載されています。

    ア 本人に責任のない事項
    • 本籍や出生地、国籍
    • 家族に関する情報(職業や続柄、学歴、収入、資産や社会的地位、健康状態など)
    • 住宅状況に関すること(家の間取り、住宅の種類、所有する不動産、近隣の施設など)
    • 生活環境や家庭環境など

    イ 本来的に本人の自由であるべき事項
    • 宗教
    • 支持政党
    • 人生観や生活信条
    • 尊敬する人物
    • 思想
    • 労働組合への加入状況や活動歴
    • 学生運動などの社会運動への参加歴
    • 購読している新聞や雑誌、愛読書など
  2. (2)面接で提出を求めるべきではない書類とは?

    以下のような本人の適性や能力と関係のない情報が記載された書類は面接の際に提出を求めるべきではありません。

    • 戸籍謄本
    • 住民票
    • 家の間取り図、周辺地図
    • 健康診断書(ただし、採用後に予定されている業務を遂行することができるかを確認するために提出を求めることが認められる場合もあります。)
  3. (3)法律に違反した場合の罰則

    厚労省が資料の中で示した上記基準は法律ではないため、違反しても罰則を受けるわけではありませんが、職業安定法5条の4は、本人の同意がある場合やその他の正当な事由がある場合を除いて、業務の目的達成に必要な範囲を超えて求職者の個人情報を収集してはならない旨を定めています。

    この法律に違反すると行政から改善命令が発せられますが、その改善命令にも従わない場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(職業安定法65条)。

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4、採用するとき交付が必要な書類と明示しなければならない項目

  1. (1)採用するとき法律上交付が必要な書類

    企業が従業員を雇い入れるとき、労働基準法15条第1項及び労働基準法施行規則第5条で、労働者に「労働契約書(雇用契約書)」または「労働条件通知書」という書面を交付して労働条件を明示しなければならないと定められています。

    しかし、2019年4月以降は労働者が希望した場合には、メール等の方法で労働条件を通知する方法も認められるようになりました(労働基準法施行規則第5条4項)。

  2. (2)労働条件として明示しなければならない項目

    ア 労働条件通知書等に記載して明示しなければならない項目
     ① 雇用契約の期間
       雇用契約期間が無期か有期か、有期の場合にはいつまでか
     ②(有期契約労働者の場合)労働契約の更新基準
       契約更新の有無と契約更新の判断基準
     ③ 勤務場所、業務内容
       勤務する場所や職種・業務内容
     ④ 勤務時間、休憩、休日関係
       始業と終業の時間と休憩時間、休日の曜日と日数、休暇など
     ⑤ 賃金
       賃金計算方法、時給か日給か月給か、締め日と支払日、支払い方法など
     ⑥ 退職や解雇について
       退職の申出方法(口頭か書面かなど)、申し出るべき時期、解雇事由など

    イ 口頭での明示でも可能な項目(⑧~⑭は企業に以下の制度がある場合のみ明示が必要)
     ⑦ 昇給について(昇給の有無や基準、条件など)
     ⑧ 退職手当について(退職金の有無や計算方法、支払い方法など)
     ⑨ 臨時に支払われる報奨金などの賃金や賞与について
     ⑩ 安全及び衛生に関する事項
     ⑪ 職業訓練に関する事項
     ⑫ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
     ⑬ 表彰及び制裁に関する事項
     ⑭ 休職に関する事項

    ウ パートタイム労働者に対して書面による明示が必要な項目(パートタイム労働法6条・パートタイム労働法施行規則2条)
     ⑮ 昇給の有無
     ⑯ 退職金の有無
     ⑰ 賞与の有無
     ⑱ 相談窓口

  3. (3)労働条件を明示しなかった場合の罰則

    上記(2)①~⑭までの労働条件明示義務に違反すると、30万円以下の罰金刑(労働基準法120条1号)、上記(2)⑮~⑱までの義務に違反すると10万円以下の過料(パートタイム労働法31条)が適用される可能性があります。

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5、採用内定を取り消すとき注意すべきことと手続き・方法

企業が採用活動を行うとき、いったん採用を内定したにもかかわらずこれを取り消すことにはリスクがあります。

  1. (1)いったん採用を内定したら、自由に取消しはできない

    判例上、採用内定者と企業との間には、採用する企業の側が一定の場合に行使できる解約権を留保しているものの、採用内定の段階で既に労働契約(解約権留保付労働契約)が成立していると考えられています。 採用内定すると一種の「労働契約」が成立するので、「試用期間」と同じような状態になります。

    すると、「内定取消し」は解雇と同じですから、採用内定者側の同意がない限り、企業側の一方的な都合で取り消すことは認められません。

  2. (2)採用内定を取り消せる場合

    企業が採用内定を取り消せるのは、以下のようなケースです。

    採用内定通知や誓約書等に明示された「内定取消事由」があるとき

    あらかじめ明示された取消事由に該当すれば、採用内定取消が認められます。

    あらかじめ定めた内定取消事由が無い場合、判例では、「採用内定当時が知ることができず、また、知ることを期待できない事実であって、これを理由として採用内定を取消することが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる」(最小昭和54年7月20日)理由がある場合にのみ採用内定取消しを認めています。

    たとえば、以下のようなケースでは採用内定を取り消せる可能性があります。

    採用内定を取り消せる可能性があるケース

    • 労働者が提出した書類に重大な虚偽記載があったとき
    • 採用内定者の健康状態が悪く勤務に耐えられないことが発覚したとき
    • 採用内定後、採用内定者が重大な犯罪で逮捕されたとき
    • 新卒の採用内定者などが学校を卒業できなかったとき
    • 会社の経営状態が想定外に悪化して、リストラ等が不可欠な場合

  3. (3)採用内定取消しの手続き

    採用内定を取り消す際には、以下のように手続きを進めましょう。

    ① 法律上、採用内定を取り消せる事案かどうかを検討する
    まずは採用内定を取り消せる場合に当たるかどうかを検討します。
    違法な採用内定取消しをすると、採用内定者から損害賠償請求等の訴訟を起こされる可能性があるので注意が必要です。

    ② 公共職業安定所に採用内定取消しの通知を行い、その指導に従う
    採用内定を取り消す場合には、公共職業安定所(ハローワーク)に採用内定取消しの通知をして、その指導を尊重しなければなりません。

    ③ 採用内定者の次の就業先各保険会社のための努力をする
    採用内定を取り消す場合には、できる限り採用内定者の次の就業先確保に協力するとともに、採用内定取消しを受けた採用内定者からの補償の要求には誠意をもって対応しなければなりません。

    ④ 30日前に取消予告を行う
    採用内定取消しは解雇の一種なので、厚生労働省の見解によると、基本的に30日前の解雇予告が必要です。
    予告しない場合には、不足日数分の解雇予告手当を支払わねばなりません。

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6、まとめ

企業が採用活動を行うときには、法律を守りながら進める必要があります。
法律による規制を知らずに適当な方法で求人募集を行うと、知らない間に違法行為をしてしまい、罰則を適用されたり応募者から裁判を起こされたりするリスクも発生します。

このようなリスクを避けるため、当初から弁護士に相談しながら安全な方法で優秀な人材を募集しましょう。

ベリーベスト法律事務所では、企業経営者への法的支援や各種ビジネスサービスに積極的に取り組んでおります。
法務関係でお悩みや不安をお持ちの企業様は、ぜひともお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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