企業法務コラム

2022年10月13日
  • 労働審判
  • 流れ
  • 答弁書

労働審判を起こされたらどうなる? 流れや答弁書の重要性などを解説

労働審判を起こされたらどうなる? 流れや答弁書の重要性などを解説

会社と労働者との間に労働問題が生じたとき、まずは当事者同士の話し合いで解決を試みることになります。しかし話し合いでは決着がつかない場合には、最終的に裁判によって解決を図ることになります。

ただし、労働問題については裁判以外にも「労働審判」という特別な手続きが設けられています。労働審判は、裁判よりも迅速に解決することができることから会社側にとってもメリットのある手続きです。ただし、労働審判の概要や流れ、答弁書の重要性などについて理解していないと、思わぬ不利益を被るおそれもあります。

本コラムは、労働審判の概要や流れについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労働審判とは?

まず、労働審判の概要から解説します。

  1. (1)労働審判の概要

    労働審判とは、不当解雇や残業代未払いなどの労働者と使用者との間で起こる労働問題について適用される手続きです。

    労働審判では裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が審理を行うことで、実情に即した、迅速かつ適切な解決が図られます。また、労働審判では訴訟と同様に裁判所を利用しますが、非公開の手続きであり、原則として3回以内の期日で審理を終えることになっているため、訴訟に比べて迅速な解決が期待できます

    また、労働審判では、当事者同士の話し合いという調停を行い、それでも解決が難しい場合には、審判によって事案に即した判断が下されます。そのため、訴訟に比べて柔軟な解決が可能であるという点も特徴になっています。

    なお、労働審判に不服がある場合には、異議申し立てを行うことができます。異議申し立てがなされると労働審判が失効して、労働訴訟の手続きに移行することになります。

  2. (2)不利な結果になると、どのようなデメリットが起きるか?

    労働審判には「迅速な解決が期待できる」というメリットがありますが、期日が限られているために、当初から適切な主張立証を行っていかなければ不利な判断が出てしまうというリスクもあります。

    たとえば、不当解雇の事案であれば、解雇の正当性が認められるかどうかによって、最終的な解決金の金額が大きく異なってきます。解雇の正当性についての主張や立証が不十分である場合には、多額の解決金の負担を命じられるおそれもあるのです。

    また、労働審判では、会社側だけでなく労働者側からも異議申し立てを行うことができます。そのため、会社側としては納得できる内容であっても労働者から異議申し立てがなされて訴訟手続きに移行してしまい、労働審判よりも不利な結果になる可能性もあります

    さらに、労働審判と異なり訴訟は公開されるため、自社が「労働問題を抱える企業である」ということが世間に明らかになってしまい、自社の評判が低下するというリスクも存在するのです。

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2、労働審判の流れについて

以下では、労働審判の手続きの流れなどについて説明します。

  1. (1)労働審判の手続き

    労働審判は、以下のような流れで進行します。

    ① 労働審判の申し立て
    労働審判の手続きを利用するためには、まずは地方裁判所に対して労働審判の申立書や証拠の提出を行う必要があります。
    労働審判の申し立てがなされると、申立日から原則として40日以内の日が第1回期日として指定されて、相手方に対して申立書の写しや期日呼出状などが送付されます。

    ② 答弁書の提出
    裁判所から期日呼出状などが届いた相手方は、申立書の内容を確認したうえで、反論がある場合には、答弁書を作成して、期限までに裁判所に提出する必要があります。
    答弁書に記載した事実を裏付ける証拠がある場合には、証拠の提出も必要となります。

    ③ 労働審判手続き期日
    当事者双方は、裁判所から指定された期日に裁判所に行き、労働審判手続期日に参加します。
    労働審判では原則として3回以内の期日で争点を整理して、紛争解決に向けた調整が行われます。

    ④ 調停成立または労働審判
    労働審判手続期日での審理の結果、当事者同士の話し合いによる解決の見込みがある場合には、労働審判委員会から調停案が提示されたり、説得を受けたりすることがあります。当事者間で話し合いがまとまった場合には調停成立によって労働審判の手続きは終了します。
    話し合いがまとまらなかった場合には、審理の経過をふまえて、事案の実情に即した判断(労働審判)が示されることになります。
  2. (2)労働審判の期間

    労働審判は、原則3回以内の期日で判断が下されることになりますので、訴訟手続に比べると期間は大幅に短くなります。
    裁判所の統計では、平成18年から令和元年までの間に終了した事件において、平均審理期間は77.2日であり、約7割の事件が申し立てからわずか3か月以内に終了しています。

  3. (3)労働審判の参加者

    労働審判では、労働者側と使用者側の当事者が参加して審理が行われることになります。
    労働者側では労働者本人が出席することになりますが、使用者側では、以下のような方が出席することになります。

    • 社長(法人の代表者)
    • 人事労務の担当者
    • 直属の上司

    労働審判では、「期日に出席している当事者から話を聞く」という形式で審理が進められます。
    迅速に終了してしまう手続きであるために、第1回期日においてしっかりと自己の主張を伝えることができなければ、不利な判断をされるおそれがあります。したがって、労働審判期日には、意思決定が可能な会社の代表者だけでなく、争いとなっている事項について具体的な事情を知る人物を参加させることが重要です。

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3、答弁書の重要性とは?

労働審判では答弁書の内容が非常に重要です。

  1. (1)答弁書とは?

    「答弁書」とは労働審判の申立書に記載されている、申し立ての趣旨に対する答弁や申立書に記載されている事実に対する認否や反論を記載した書面のことです。
    簡単にいえば、「労働審判の申し立てをした労働者の言い分に対して、会社側の言い分を記載した書面」ということになります。

  2. (2)労働審判で答弁書の内容が重要とされる理由

    労働審判では、迅速な解決を図るために、第1回期日において集中的に事実確認が行われて、それによって労働審判員会はある程度の心証を形成します。
    第2回期日以降は、第1回期日において形成された心証に基づいて、調停や労働審判が行われます。したがって、どのような心証が形成されるかが非常に重要となってきます。

    ただし、第1回期日という限られた時間のなかでは、当事者の言い分をすべて伝えることはできません。基本的に、期日での事実確認は申立書(答弁書)の内容をふまえたものが主となります。

    そのため、労働審判委員会が形成する心証は、申立書や答弁書の出来次第で決着の方向性を左右することになります。答弁書の内容によっては、言い分が認められなかった場合の支払額に数百万円もの差が出るということもあり得るので、充実した答弁書を作成することが重要になります。

  3. (3)答弁書に記載すべき内容とは?

    答弁書には、主に以下のような内容を記載します。

    • 申し立ての趣旨に対する答弁
    • 申立書に記載された事実に対する認否
    • 答弁を理由づける具体的事実
    • 予想される争点、争点に関連する重要な事実
    • 予想される争点ごとの証拠
    • 当事者間においてされた交渉などの経緯

    これらの事項を限られた提出期限までにまとめて記載することは、法律の専門知識がなければ困難です。また、期限までに答弁書を提出しなければ、会社側に不利な労働審判が出されてしまう可能性もあります。

    労働審判の申立書が届いた場合には、お早めに、弁護士にご相談ください。

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4、労働審判の決着はどのようにつく?

労働審判の解決方法は、合意による解決と審判による解決の2つが主となります。
以下では、それぞれの解決方法の特徴などについて解説します。

  1. (1)調停(合意)による解決とメリット

    労働審判では、第1回期日において事実確認が行われて、その結果をふまえて話し合いが行われることが一般的です。

    申立書・答弁書の内容や第1回期日での聴取内容、証拠などに基づいて形成された労働審判委員会の心証が開示されます。企業側としては、開示された心証をふまえたうえで、調停による解決をするかどうかを判断することが可能です。

    調停で解決することのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

    ① 早期解決が可能
    調停で解決をすることができれば、労働審判を待つことなく手続きが終了となるので、早期に解決できるというメリットがあります。

    審判の場合には、異議申し立てが行われると訴訟手続きに移行してしまいますので、紛争が長期化するおそれがあります。調停であれば、そのようなリスクを回避することができるのです。

    したがって、解決金の金額によっては、多少は譲歩しても調停で解決した方がよい場合があるでしょう。

    ② 柔軟な解決が可能
    調停では当事者の話し合いによって解決が図られるため、法律に縛られない柔軟な解決が可能というメリットがあります。

    訴訟に移行してしまうと法律に従った判断になりますので、はっきりと白黒をつけることになりますが、調停であればグレーな解決も可能です。

    たとえば、不当解雇の事案については、解雇の有効性については判断することなく、解決金を支払うことによって一切の争いを解決する、ということができるのです。

  2. (2)労働審判での解決

    当事者間に合意が得られる見込みがない場合には、労働審判によって一定の判断が下されることになります。

    調停の際には、労働審判委員会の心証が開示されるため、審判になった場合にも、基本的には開示された心証に基づいた審判が下されることになります。
    そのため、調停によって解決するか、審判によって解決するかは労働審判委員会の心証をふまえて判断するとよいでしょう。

    ただし、調停によって解決しない場合には、労働者側から労働審判に対して異議申し立てがなされる可能性があるという点に留意する必要があります。

    労働審判の結果が会社側に有利な内容であるということは労働者側にとっては不利な内容であるということになるため、納得できない労働者側から異議申し立てがなされる可能性は高いでしょう。

    異議申し立てがなされた場合には、訴訟手続きに移行することになります。その場合の費用、時間、手間などを検討することも必要です。

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5、労働審判を起こされた際に弁護士に依頼する理由

労働者から労働審判を起こされた場合には、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。

  1. (1)労働審判の際に弁護士ができること

    労働審判において、充実した答弁書を作成することは、労働審判委員会の心証を左右するといってよいほど重要です

    裁判所から労働審判の申立書が届いてから答弁書の提出する期限までは、あまり時間がありません。限られた時間のなかで充実した答弁書を作成するためには、労働審判の手続きを熟知した弁護士のサポートが不可欠となります。

    弁護士に依頼をすることによって、当事者や関係者から事情を聴取するなどしたうえで、労働者側の言い分に対しても説得的に反論できる答弁書を作成することができます

    また、労働審判期日にも弁護士が同行するため、法的観点から会社側の主張を補充することによって、有利な心証形成が期待できるでしょう。

  2. (2)顧問弁護士の利用も有効

    労働審判などの個別事案に関する対応を弁護士に依頼することも重要ですが、そもそも紛争が発生することを未然に予防するために、顧問弁護士を利用することもおすすめします。

    顧問弁護士であれば、法律的な問題に発展することを防ぐためのアドバイスを行うことができます。これにより、労働審判に発展するような労働問題を未然に回避することもできるでしょう。

    また、顧問弁護士は、普段から会社の相談を受け付けることによって会社の内部事情も熟知することになります。実際に紛争が生じた場合でも、会社の実情をふまえて、迅速かつ適切に対応することが可能です。

    労働問題が発生した後では、被害を最小限に抑えることはできてもゼロにすることは難しいでしょう。企業経営に関するリスクを少しでも軽減するためにも、普段から顧問弁護士を利用することを検討してみてください。

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6、まとめ

労働審判には調停または審判といった解決方法があります。どちらの解決を選択するかについては、労働審判委員会から開示される心証をふまえて慎重に判断する必要があります

会社側に有利な心証を形成してもらうためには、充実した答弁書の作成や期日での対応が重要になります。法律の専門知識も不可欠となりますので、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

労働問題でお困りの経営者の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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