企業法務コラム
最近「パタハラ」という言葉を耳にする機会が増えました。
パタハラは「パタニティ・ハラスメント」の略で、男性の育児休業取得を妨害する行為等を指します。実はパタハラは「違法行為」になる可能性もあるので要注意です。
今回はパタハラとはどのようなものなのか、企業が男性の育児休暇取得を推奨するにあたって注意すべき点や対策方法について弁護士が解説いたします。
そもそも「パタハラ」とは何なのでしょうか?
パタハラとは、「父性」を意味する「パタニティ」に対するハラスメント(嫌がらせ)を指します。
つまり、男性が育児休業を取得しようとしたときに妨害や嫌がらせをしたり、降格や退職勧奨などの不利益な取り扱いをしたりするのがパタハラです。
妊娠・出産する女性に対するハラスメントは「マタハラ」として知られていますが、その男性版と考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、以下のような例がパタハラの典型です。
問題社員のトラブルから、
パタハラが起こる原因の1つとして、日本ではまだまだ「育児は女性が行うもの」という根強い意識があることが挙げられます。
実際、男性の育児休業取得率はどのくらいなのでしょうか?
厚生労働省の「平成30年度雇用均等基本調査」結果概要によると、平成28年10月1日から平成29年9月30日までにおける男性の育児休業取得率と取得日数は以下の通りです。
まず、配偶者が出産した男性の育休取得率は6.16%でした。
前年度は5.14%だったので大きく上昇していると言えばそうですが、女性の育児休業取得割合は82.2%なので比べると雲泥の差があります。
次に、男性の育児休業取得日数は「5日未満」が36.3%ともっとも多く、次いで「5日~2週間未満」が35.1%となっており、2週間未満が7割を超えています。
これに対し、女性の育児休業取得日数は「10か月~12か月未満」が31.3%ともっとも多く、次いで「12か月~18か月未満」が29.8%となっていますので、やはり男性は育児休業を取得しにくい現状にあることがわかります。
故意であれ過失であれ、パタハラ行為は違法な行為です。
予防・早期発見・改善などの対策を講じるにあたっては、どのような行為がパタハラに該当するのか、きちんと把握する必要があります。
では実際にどのような事実関係が「パタハラ」になるのでしょうか?
企業担当者の方は以下のチェックリストで、一度確認してみましょう。
御社の社内で上記のようなことが起こっていたら、それはパタハラに該当する行為かもしれません。早急に、事実関係を把握する必要があるでしょう。
パタハラは、違法な行為です。企業には、パタハラの事前防止に向けた対策や、パタハラが生じてしまった場合の迅速・適切な対応が求められます。
これを怠ると、パタハラ被害を受けた男性従業員側から企業側へ損害賠償請求が行われるなど、事態がさらに悪化してしまう可能性があります。
また、企業の行ったパタハラがマスコミに取り上げられ「育児休業を認めない悪質な企業」として報道がなされれば、企業の評判が低下するなど、企業が受けるダメージは大きなものになります。
パタハラを防止し、社員が働きやすい職場を作るためには、企業が積極的にパタハラ対策を行う必要があります。
以下では具体的な対策をいくつかご紹介します。
日本企業でパタハラが発生しやすいのは、まだまだ社会で男性が育児参加する意識がないからです。そこでパタハラへの対策法として、まずは自社内に男性が積極的に育児参加するという意識を根付かせましょう。
経営者による訓示や挨拶、社内報や社内メールなどで男性の育児休業取得を推進することを明らかにして、企業全体に男性は育児休業を取得するものという風潮を作っていきましょう。
また、自社内での男性従業員による積極的な育休取得事例を紹介し、「男性が育児休業を取得するなんておかしい」「みっともない」という思い込みを払拭し、抵抗感を減らすのも効果的な対策方法です。
中小企業などでは、そもそも育児休業制度がしっかり構築されていないケースもみられます。パタハラ対策をするなら
企業側が男性従業員の子育て参加を推進し育休取得を認めていても、他の従業員が育休社員に嫌がらせを行う可能性はあります。
他の従業員からの嫌がらせを防止する対策として、パタハラ被害を受けた男性従業員が気軽に利用できる社内の相談窓口を設置しましょう。
相談を受けたらすぐに調査を開始し、実際にパタハラが行われていたら適切に対処します。
とても基本的なことですが、パタハラ被害を受けた男性従業員への対応を適切に行うことで、パタハラトラブルが大事になるのを避けることができます。
パタハラ対策として、厚生労働省が実施している「イクメン企業アワード」などに参加する方法も考えられます。これは、男性が積極的に育児休業を取得できている模範的な企業等を表彰するものです。
育児休業を取得する男性従業員をバックアップしている企業が表彰対象となります。
企業が男性の育児休業取得を推進するモチベーションとなるでしょう。
どんなにパタハラ防止対策をしていても、残念ながら社内でパタハラが発生してしまう可能性はゼロではありません。
もしもパタハラが起こってしまったら、以下のように対処しましょう。
まずは、パタハラ被害の状況について、正確に確認する必要があります。
本当にパタハラが行われたといえるのか、どのような内容のパタハラが行われたのか、誰が加害者でどのような被害が出ているのか、被害者や関係者からの聞き取り調査などによって正確に把握しましょう。
現実にパタハラ被害を確認したら、速やかに被害者に配慮した措置をとりましょう。
具体的には、被害者に対する不利益な処分が行われていたら当該処分を撤回し、また、育休取得が認められなかった経緯があればきちんと育休取得を認めましょう。
調査に当たっては被害者のプライバシーが侵害されないように配慮することも重要です。
パタハラの加害者を確認できたら、加害者に対する措置も検討しましょう。
まずは加害者本人に直接注意をして、それでもパタハラ行為をやめない場合やパタハラが悪質な場合には、加害者の配置転換や異動などの懲戒処分も検討すべきです。
ただし、行為に対してあまりに重い懲戒処分をすると裁判で争われて結果的に処分が無効であると判断される可能性もありますので、適正な範囲での処分を心がけましょう。
社内でパタハラ問題が発生したら、将来に向けての再発防止措置を講じる必要があります。
トラブルが発生した理由を分析し、その原因を取り除きましょう。
具体的な対策方法がわからない場合には弁護士がアドバイスすることも可能ですので、お気軽にご相談ください。
問題社員のトラブルから、
企業が人を雇用すると、どうしてもさまざまなハラスメントやトラブルが発生します。
最近ではパパによる育児参加も推奨されており、古い世代の従業員との意識の差がトラブル要因となる事例も多数あります。
これからの企業が日本や世界で活躍の幅を広げるには、男性の育児休業取得を始めとした意識改革や適切な対策が必要となるでしょう。
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