企業法務コラム

2021年12月02日
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契約社員やパートを正社員に転換させるには? 法律の規定や助成金を解説

契約社員やパートを正社員に転換させるには? 法律の規定や助成金を解説

社内に優秀な契約社員やパートの従業員を抱えていれば、正社員として登用したいと考えるのは自然です。

「働き方改革」のもと、パートタイマーから正社員への転換を促すべく、企業がとるべき措置が法律上も規定されています。これからは、企業として正社員への登用制度をもうけておくべきといえるでしょう。

今回は、有期契約労働者を正社員に転換させるときに企業がとるべき措置や検討しておきたいこと、利用できる助成金制度について弁護士が解説します。

1、正社員への転換措置が義務づけられている労働者の範囲

パートタイム労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では、「パートタイム労働者」や「有期雇用労働者」の正社員への転換措置を義務づけています。

① パートタイム労働者の場合
ここでいう「パートタイム労働者」に該当するのは、次の条件にあてはまる労働者です。

パートタイム労働法 第2条1項
1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。


簡単にいうと、正社員よりも労働時間が短い労働者がパートタイム労働者です
労働時間が短いかどうかは、1週間の所定労働時間によって確認することができます。一般に、アルバイトやパートタイマーなどと呼ばれている方が該当するでしょう。

② 有期雇用労働者の場合
「有期雇用労働者」は、次の条件にあてはまる労働者が該当します。

パートタイム労働法 第2条2項
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者


たとえば、正社員と同じくフルタイムで働いていても、契約期間が定められている場合は、有期雇用労働者に該当します。
契約社員や準社員という名称で労働契約を結んでいるケースが多いです

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2、正社員に転換させるときは時短正社員制度も検討を

パートやアルバイトなどの短時間労働者を正社員に転換させるとき、フルタイム勤務にすることで、不都合が生じるケースも考えられます。

たとえば、介護をしているため勤務時間を延ばせないなどの事情がある場合です。
このような場合は、「短時間正社員制度」を導入することをおすすめします。

短時間正社員とは
短時間正社員とは、所定労働時間はフルタイムの正社員より短い正社員であって、以下の2つの条件を満たしている労働者のことです。

  1. ① 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
  2. ② 時間あたりの基本給、賞与、退職金などの算定方法などが、同じ事業所に雇用される等同種のフルタイム正社員と同等


短時間正社員制度は、社員の働き方の幅を広げることができるだけではなく、多用な働き方を促進することができるので、優秀な人材の獲得にも有益に働くことが期待できます。

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3、正社員への転換を推進させるために企業がとるべき対応

パートタイム労働法第13条の規定により、各企業は積極的にパートタイム労働者や有期雇用労働者を正社員に転換させる措置が求められます。
では、具体的にどのような対応や社内環境の整備が求められるのかを確認していきましょう。

  1. (1)パートタイム労働者や有期雇用労働者への周知

    正社員を募集する際には、パートタイム労働者や有期雇用労働者にも、その旨を周知する必要があります。
    業務内容や賃金、労働時間などの募集要項をまとめて、オフィス内に掲示したりメールで流したりして、広く周知することが大切です。

  2. (2)正社員に応募する機会を与える

    企業が正社員のポストを新たにもうけるときには、パートタイム労働者や有期契約社員に対し周知することにくわえて、応募の機会も与えなければなりません

    たとえば、応募はさせるもののパートタイム労働者であることを理由に選考から外すなどがあった場合には、応募の機会を付与したとは認められない可能性があるため、選考ルールなどもしっかりと決めておくことが大切です。

    なお、応募の機会を与えれば良く、パートタイム労働者等を優先的に採用することなどは、求められません。

  3. (3)試験制度をもうける

    事業主が講ずべき措置とされている3つ目は、「一定の資格」を持つパートタイム労働者や有期雇用労働者に対して、正社員への転換のための試験制度をもうける措置です。
    いわゆる、登用試験と呼ばれる措置です。

    「一定の資格」とは、正社員への転換を認めるにあたり必要な条件のことをさします。
    たとえば、次のような条件を設定することが考えられます。

    • 月に〇〇時間以上の労働時間を維持しつつ、〇年以上勤務した者
    • 指定する資格(TOEICや宅建業、技師など)を取得した者
    • 過去〇か月間における営業成績が〇〇以上となった者
  4. (4)正社員への転換を推進するための措置を講じる

    正社員への転換を促進するためのものであれば、(1)~(3)以外でも構いません。
    企業によって独自に決めることが可能です。

    たとえば、資格取得のためのサポートを行う、社員登用にむけた研修会を開くなどが考えられるでしょう。

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4、弁護士へ相談するメリット

正社員の登用制度をもうける際には、制度内容の検討や社内規則の整備が必須です。
しかし、社内の人員だけでは、適切な内容の制度を整えたり規定を作ったりすることが難しいケースも少なくありません。

そのような場合は、弁護士に相談したうえで、アドバイスを受けることをおすすめします。

弁護士は、企業の規模や事業内容を把握したうえで、その企業に適した進め方や社内ルールの整備などについて、アドバイスすることができます。
また、制度の新設や運用に関し、労働者とトラブルに発展した場合なども、サポートを受けられるので安心です。

企業の状況に合致した最適な制度をもうけることができれば、企業にとっても労働者にとっても利用しやすい有益な正社員登用制度となるでしょう。

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5、活用したいキャリアアップ助成金

企業がパートタイム労働者や有期雇用労働者を正社員に登用する際には、「キャリアアップ助成金」という制度を利用できる可能性があります。

  1. (1)キャリアアップ助成金とは?

    キャリアアップ助成金とは、パートタイム労働者や契約社員の正社員への転換や人材育成、待遇改善などを目的とした厚生労働省の助成金です。条件を満たしていれば、助成金が支給されます。

    キャリアアップ助成金には賃金規定の改定、諸手当制度の共通化などいくつかのコースがありますが、「正社員化コース」として、正社員への転換を適用した場合にも対象となります。
    フルタイムの正社員に限らず、短時間正社員へ転換した場合にも受給できるので、該当する場合は利用することをおすすめします。

  2. (2)正社員化コースで助成金を受給するための流れ

    助成金を受給するためには、次のような流れで手続きを進める必要があります(令和3年9月時点)。

    ① キャリアアップ計画書を提出
    対象者や目標、期間といった取り組み内容をまとめた「キャリアアップ計画書」を作成します。
    キャリアアップ計画書の作成にあたっては、労働組合等の意見を聞いたうえで、作成しなければいけません。また、キャリアアップ管理者も決める必要があります。

    ② 就業規則の改定と提出
    助成金受給のためには「正社員への転換制度」を、もうける必要があります。
    就業規則に転換制度がない場合は、改定しなければなりません。
    就業規則を改訂した場合は、管轄の労働基準監督署への提出も忘れずに行いましょう。

    ③ 制度を運用する
    有期雇用労働者などを正社員へ転換します。
    具体的には労働条件を告げたうえで、新しい雇用契約書を作成します。

    ④ 支給申請
    正社員への転換後、6か月分の給与を支払った日の翌日から2か月以内に、助成金の支給を申請します。
    なお、申請にあたっては、正規雇用に転換前の6か月と転換後の6か月の賃金を比較して、3%以上増額している必要があります。

    賃金には、賞与や実費補てんに該当するような手当類は含まれないため、注意が必要です。

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6、まとめ

現在、法律上もパートタイマーや有期雇用労働者の正社員への登用が推奨されています。
また、働き方改革のもと無期転換ルールも導入されており、あらゆる企業が非正規労働者の正社員転換を考えていく必要があります。

これから積極的に正社員へ転換しようと考えている企業も、対応に迷って二の足を踏んでいる企業も、一度弁護士のアドバイスを受けておくことをおすすめします。

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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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