企業法務コラム

2021年01月06日
  • 労働問題
  • 継続雇用制度
  • 65歳
  • 定年
  • 高齢者雇用
  • 弁護士

継続雇用制度とは?65歳以上を雇いたい企業が知っておくべき制度のポイント

継続雇用制度とは?65歳以上を雇いたい企業が知っておくべき制度のポイント

「人生100年時代」と言われて久しいですが、「定年年齢を過ぎても働きたい」と考える方が増えています。一方、少子高齢化がますます加速する中で、高齢者の方にも引き続き社会の一員として活躍してもらえるよう環境を整備する必要も生じています。

今回は、継続雇用制度について、令和3年4月より施行される予定の高年齢者雇用安定法の改正点もふまえて解説します。

1、継続雇用制度とは?制度の基礎知識を知ろう

少子高齢化が急速に進む中で、働く意欲のある高齢者の方が引き続き社会で活躍できるよう就業機会を設けることが求められています。
その一環として企業が導入を検討しなければならないのが、継続雇用制度です。

  1. (1)継続雇用制度の概要

    継続雇用制度とは、65歳未満の定年年齢を定めた企業が、従業員の希望に応じて定年後も引き続き雇用する(雇用機会を確保する)制度のことです(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」といいます。)第9条第1項第2号)。

    年金制度改革によって定年退職の時期と年金の支給開始時期との間に空白が生まれ、無収入者の続出が懸念されました。
    そうしたことから、収入を途絶えさせないために定年を超えても継続して所得を維持できるような制度設計が必要となったのです。

    詳しい背景については後述します。

  2. (2)継続雇用制度は再雇用制度と勤務延長制度に分かれる

    継続雇用制度は、「再雇用制度」と「勤務延長制度」に分かれます。

    ① 再雇用制度
    再雇用制度とは、いったん定年退職した従業員を再度雇用することです。
    この制度の場合、退職金は、定年退職をしたときに支払われることになるでしょう。

    再雇用時には、給与や勤務時間・日数、業務内容などの労働条件を変更することもできます。ただし、再雇用時に労働条件を変えられるからといって、極端に給与を引き下げると違法となることがあります。この点については後述します。

    ② 勤務延長制度
    勤務延長制度とは、定年になっても雇用を維持したまま雇用契約を延長する制度です。
    雇用を維持するため、労働条件や就労形態もそのまま引き継がれることになるので、会社の負担は再雇用制度よりも重くなる傾向があります。
    この制度の場合、退職金は延長期間の終了時に支払われることになるでしょう。

2、平成25年に施行された高年齢者雇用安定法について

高年齢雇用安定法について深く知るために、まずは平成25年までさかのぼって、どのような点が改正されたのかを見てみましょう。

  1. (1)改正の背景・なぜ高齢者雇用が必要とされるのか?

    定年の引き上げや継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかの措置を取ることは、平成25年以前から、すでに義務化されていました。

    しかし、平成25年の年金制度改革により、老齢厚生年金の報酬比例部分(いわゆる「2階建て部分」)の支給開始年齢が段階的に引き上げられることとなりました。
    その結果、60歳で定年を迎えた方は、その後にさらに働くことができなければ、年金が支給される年齢(例えば63歳)になるまで無収入となってしまう可能性が生じます。

    そこで、定年年齢から年金の支給開始時期まで収入を得られない労働者を減らすための取り組みが必要となったのです。

  2. (2)改正の概要・おさえておくべき3つのポイント

    平成25年改正の概要としては、次の3つをおさえておきましょう。

    ① 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
    改正前には、労使協定により継続雇用制度の対象となる高年齢者を労使協定で定めた基準により限定できるようになっていました。
    しかし、改正後はこの仕組みが廃止されることになりました。

    ただし、継続雇用の対象者を限定する基準のある企業では、老齢厚生年金の受給開始年齢に到達したあとは、その基準を令和5年3月31日まで12年間引き続き利用できる経過措置を設けることとなりました。

    ② 継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大
    継続雇用制度の対象となる高年齢者が雇用される企業の範囲が、子会社や関連会社などのグループ企業にまで拡大されました。
    なお、ここでいう子会社・関連会とは、以下のような企業を指します。

    子会社:基本的には議決権の過半数以上を有する企業
    関連会社:基本的には議決権の20%以上を有する企業

    ③ 義務違反の企業に対する公表規定の導入
    継続雇用などの高年齢者の雇用確保措置をまったくとらないなど、高年齢者雇用安定法に違反する行為をした企業に対しては、社名を公表することを可能とする規定が導入されました。

    違反行為があった場合は、まずは労働局、ハローワークから指導を行いますが、改善しない企業には勧告が行われます。それでもなお、勧告を無視するようであれば社名が公表される可能性があります。

3、2021年4月に施行される改正高年齢者雇用安定法について

少子高齢化がますます加速する中で、働く意欲のある高年齢者に引き続き能力を十分に発揮してもらうために環境を整備することが急務です。

そこで、70歳まで安定した雇用を確保することで高年齢者のさらなる活躍ができるような法整備が進められることとなり、再び高年齢者雇用安定法が改正され、令和3年4月1日より施行されることとなりました。

  1. (1)70歳まで就業機会を確保するための努力義務を創設

    • これまで65歳とされてきた定年を70歳以上に引き上げること
    • 70歳までの継続雇用制度の導入
    • 65歳以上70歳未満の定年制の廃止

    これらがそれぞれ努力義務として新たに規定されました。

  2. (2)雇用以外の措置も導入する

    また、高年齢者の希望に応じて、再雇用以外に創業支援など雇用以外の措置を取るために以下のような選択肢をつくることも努力義務として規定されました。

    1. ①70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    2. ②70歳まで継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業または事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度を導入すること

    ただし、このような措置を導入するには、あらかじめ労働者の過半数を代表する労働組合または労働者(過半数労働組合・過半数代表者)の合意を得ることが必要です。

4、企業は再雇用制度、勤務延長制度のどちらを選択すべき?

継続雇用には再雇用制度と勤務延長制度の2つの制度がありますが、企業はどちらを選択すべきなのでしょうか。

①ほとんどの会社が再雇用制度を採用
現状をみると、勤務延長制度よりも再雇用制度の導入を選択する企業のほうが多数派を占めています。
平成30年に行われた人事院の調査によれば、定年制がある企業のうち、継続雇用制度のある企業の割合は97%で、そのうち再雇用制度がある企業の割合は95.3%にものぼっています(※)。

②再雇用制度を導入する企業が多い理由
これは、労働条件を変更したいために再雇用を選択しているというのが1つの理由でしょう。労働条件を変更する予定なのであれば、再雇用制度を採用するのが良いでしょう。

(※)人事院「平成30年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」

5、定年後再雇用する場合の注意点やポイント

  1. (1)極端な賃下げは違法

    再雇用後、以前と業務内容が変わらないのに極端に賃下げをすることは違法となる可能性があります。過去の裁判例では、定年後再雇用されたときの賃金が月収ベースで75%減となったことが違法であるとされました(※)。
    再雇用時に賃金の減額をするときは、担当業務や責任の重さの程度に応じた額を設定することが必要です。

    (※)九州総菜事件・福岡高裁平29・9・7労判1167号49頁

  2. (2)異なる業種での再雇用は違法とされる可能性がある

    定年後再雇用時の業務内容や就労形態、労働条件については、労働契約法や最低賃金法などの法令に反しない範囲で労働者との合意のもと決定することができます。

    しかし、定年前とまったく異なる業種で再雇用し、継続雇用としての実質を欠くような場合には、従前の職務全般について適格性を欠くなど通常解雇を相当とする事情がない限り許されないとした裁判例があるため、注意が必要です。

    この裁判例では、定年前は事務職に従事していた労働者を再雇用時に清掃業務に従事することを提示したことが違法とされ、会社側に慰謝料の支払いが命じられています(※)。

    (※)トヨタ自動車事件・名古屋高裁平28・9・28労経速2300号

  3. (3)無期転換ルールの特例

    有期雇用契約が更新されて雇用期間が通算5年を超える労働者については、その求めに応じて、無期雇用契約に転換しなければならない「無期転換ルール」があります(労働契約法第18条)。

    これについては、継続雇用の高年齢者については無期転換申込権が発生しない特例がありますが、この特例の適用を受けるためには労働局長の認定を受けることが必要です。

6、継続雇用制度における注意点や知っておくべきこと

継続雇用制度を導入するなら、以下のようなことを知っておいたほうがよいでしょう。

  1. (1)若年層が多い会社でも継続雇用制度などの整備が必要

    20代・30代が中心のベンチャー企業など若年層の多い会社では、継続雇用制度はまだ必要ないだろうと考えがちです。
    しかし、継続雇用制度の整備はすべての企業で求められているため、当面の間定年を迎える従業員がいないような企業でも、制度の導入は進めなければなりません。

  2. (2)継続雇用制度のない会社で60歳定年により退職した場合は無効?

    高年齢雇用安定法では、個々の労働者を65歳まで雇用することまでは義務づけられていません。そのため継続雇用制度のない会社で60歳定年による退職はただちには無効とはならないでしょう。

    ただし、65歳未満の定年制を採用しつつ、継続雇用制度を導入していない場合には、高年齢者雇用安定法違反になりますので、助言・指導、勧告の対象となります。
    また、労働者側から損害賠償請求をされる可能性もあるので注意が必要です。

  3. (3)派遣社員やアルバイト・パートの場合

    定年は通常正社員に対して設けられるものであり、派遣社員やアルバイト・パートの方については通常は問題とならないでしょう。

    ただし、派遣社員やアルバイト・パートの方で、無期転換ルールにより無期雇用契約に転換した方については、定年制が妥当し、継続雇用制度の対象となることがありますので、定年制の適用範囲について確認が必要です。

  4. (4)継続雇用を拒否されたときに継続雇用しないのは違法?

    定年後も引き続き働いてもらいたいと思って継続雇用を打診しても、従業員から拒否されてしまうこともありえます。

    しかし、高年齢雇用安定法は個々の従業員を65歳ないし雇用することを義務づけているわけではないので、従業員が継続雇用を希望しない結果、その従業員が退職することになったとしても、高年齢者雇用安定法違反にはなりません。

  5. (5)高年齢者雇用に関する助成金が使えることがある

    継続雇用を導入している企業は、高年齢者雇用に関する以下の助成金を受け取ることができる可能性があります。

    特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
    高年齢者や障がい者など就職の難しい者を、ハローワークなどの紹介を通じて継続雇用する労働者として受け入れる事業主に支給されるもの。

    特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
    65歳以上の離職者を、ハローワークなどの紹介により、確実に1年以上継続雇用する労働者として受け入れる事業主に支給されるもの。

    65歳超雇用推進助成金
    65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備、50歳以上かつ定年年齢未満の労働者を有期雇用から無期雇用に転換した事業主に支給されるもの。

7、まとめ

「定年を過ぎても働きたい」という方は少なくありません。そのような意欲ある高齢者の方にとっての受け皿となる制度が継続雇用制度です。
特に社歴の長い高齢者の方は、豊富な知見や実務経験を活かして、後進の育成にも力を発揮してくれるはずです。

ベリーベスト法律事務所では、継続雇用制度の導入支援をしております。
導入のための就業規則の整備など、お困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
ご希望の顧問契約・企業法務に関するご相談について伺います。お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00
土日祝除く

同じカテゴリのコラム

顧問弁護士サービス リーガルプロテクト
50種類の契約書ひな形付 顧問契約特典
リーガルチェック見積もりフォーム
PAGE TOP