企業法務コラム
事業経営では「契約書」が必要になる場面が多々あります。
インターネットを探すと、無料のテンプレートなどを簡単にみつけることができますが、安易にテンプレートやひな型を利用してしまうと、契約書が適切に作成されていなかった、あるいは最新の法律に適応していなかったなど、トラブルにつながりやすいので要注意です。
契約書は、弁護士によるリーガルチェックを受けることが望ましいでしょう。本コラムでは、契約書のリーガルチェックが必要な理由や、リーガルチェックを依頼するときのポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
契約書のリーガルチェックとは、法的な観点から契約書の様式や内容が適切であるか確認することです。契約書のリーガルチェックが適切に行われていないと、以下のようなリスクが発生するおそれがあります。
契約書の種類によっては、法律により記載が必須とされる事項(法定記載事項)がある場合や、たとえ契約書に記載したとしても無効になる事項があります。
法定記載事項が抜けている契約書は無効となるほか、公序良俗違反や消費者契約法違反、借地借家法違反、独占禁止法違反などの法律に違反する内容を定めた場合、その条項は無効となります。
契約書の記載内容に不備があると、大きなトラブルに発展するリスクがあります。不測の事態やトラブルが発生したとき、対処方法やルールが契約書で明文化されていなければ、解決指針にならないからです。
契約書を作成する目的のひとつは「トラブル予防」です。弁護士からアドバイスを受けて実際に起こりそうなトラブルを想定し、効果的に予防ができる内容にしておく必要があります。
取引相手から提示された契約書の場合、相手方に極端に有利な内容の契約書になっている可能性があります。その点に気がつかないまま調印してしまえば、将来問題が起こったときに自社が大きく不利益を被るおそれがあります。
「法律の専門家」には、弁護士や司法書士などいくつか種類がありますが、契約書のリーガルチェックは弁護士に依頼すべきでしょう。弁護士に依頼するメリットをご説明します。
契約書の種類は賃貸借契約、売買契約、取引基本契約、秘密保持契約、リース契約、フランチャイズ契約など多岐に及ぶため、チェックの際には非常に広範囲の法的知識を要求されます。弁護士は、深く広く法律の知識を有しているのはもちろんのこと、特に企業法務に詳しい弁護士であれば、契約に関する知識も経験も非常に豊富です。
企業法務に詳しい弁護士は、法的観点以外の視点からもさまざまなアドバイスを行います。たとえば「違法ではないけれども不公平になっていないか」「相手とウィンウィンの関係を構築できるか」「ビジネスの目的を達成するのに適切といえるか」などです。
原案に不足している点や、盛り込んでおいた方がいい点などについてアドバイスを受けられるメリットは大きいでしょう。
外国企業との取引などでは、英語やフランス語、ドイツ語、中国語などとの相互翻訳が必要となるケースもあります。渉外法務に対応している法律事務所であれば、翻訳も任せられて安心です。
契約書をチェックするだけではなく、新たに契約書を作成したいケースもあるでしょう。弁護士であれば、テンプレートやひな形を使わずに個別の状況に応じた契約書を作成できるので、ビジネス目的を実現しやすくなります。
契約書のチェックを弁護士に依頼するのとあわせて、「顧問契約」を締結することも可能です。
顧問弁護士契約をした場合、経営上で何か気になることがあればいつでも相談できるほか、取引先や従業員などとのトラブルが発生したときにも、優先的に対応してもらえるので安心です。トラブル拡大を未然に防止することができるでしょう。
弁護士に契約書のチェックを依頼するときは、スムーズに状況を理解してもらうため、事前に情報や資料を用意しておくことをおすすめします。
● 契約書
取引相手から渡された契約書や、自社で作成した契約書など、チェックを依頼したい契約書を用意します。
● 事業の説明資料
会社の事業内容を説明する資料があると望ましいです。パンフレットやホームページ、手書きの資料などでもかまいません。
● 勤務形態
勤務形態別の従業員の人数や、事業規模がわかる資料もあれば持参しましょう。
● 合意を取りたい内容
契約書に特に盛り込みたい内容、相手と合意しておきたい内容、気になっていることなどがあれば、まとめておきましょう。たとえば「途中解約されたら困る」「損害賠償の予定額を入れておきたい」などの具体的な希望です。メモ書きなどでも、かまいません。
● 原案とビジネスプランを伝える
まずは契約書の原案を弁護士に渡し、具体的なビジネスプランを伝えます。取引の全体像や実現したい内容、相手方の事業内容や事業規模、関係性などを含め、契約締結の目的や注意点を具体的に説明しましょう。
特に「契約によって実現したい目的」と「絶対に避けなければいけない事態」については詳細に伝えておくと良いでしょう。
● スケジュールや要望
「いつまでにチェックを終える必要がある」「いつまでに契約締結する必要がある」など契約書作成のスケジュールが決まっている場合は、必ず事前に伝えましょう。
また、契約書のチェックを弁護士に依頼すると、費用が発生します。予算についても事前に確認し、合意しておくことが望ましいといえます。
● 問題点の抽出
弁護士は契約書について、法的な問題点やリスクの有無、改善した方が良い点などについて指摘します。
このとき、必ずしも弁護士の指摘通りに修正すれば、すべてが解決するわけではないという点に注意が必要です。
弁護士は取引現場にいるわけではないので、弁護士が懸念していても現場では融通が利くので問題ないケースもあるでしょう。また、契約を修正することによって、取引が滞るなどのリスクが生じることもあるかもしれません。
疑問点や要望があれば、遠慮なく弁護士に伝え、それらを踏まえた上で最適な契約書が作成できるように検討を重ねることが重要です。
● 契約書の修正と完成
企業の要望や疑問点を解消した上で弁護士が修正を加え、リーガルチェックは完了し、契約書が完成します。
新しく契約書をつくるケースばかりではなく、すでに締結されている契約書の内容を変更したいというケースもあるでしょう。この場合、契約書を作成し直すことも可能ですが、一部のみの改訂であれば「覚書」の作成によって対処することが可能です。
契約書を更新する場合には、相手と協議を行い変更について、双方が合意する必要があります。いったん契約をしている以上、一方当事者からの希望だけで変更することはできないからです。まずは相手に「変更したい」という希望を伝えて、話し合いを行い変更内容を決定します。
合意ができたら、次に挙げるふたつの方法からどちらかを選択して、書面を作成します。
以前に作成した契約書を破棄し、新たに契約書作成をやり直す方法です。契約内容の大幅な改定が必要となるケースでは、こちらの方法を採用します。
ただし、契約書の全てを改定するのは大変な作業となるため、一部の契約見直しなどの場合は、次に紹介する「覚書」による改定方法を利用するのが一般的です。
覚書とは、必要な内容を書きとどめて、当事者が署名(記名)押印する書類です。
覚書において「契約書の内容を一部変更する」と記載し、当事者双方が署名(記名)押印して日付を入れることにより、過去に作成した契約書の一部が無効となって覚書に書かれた内容が有効となります。覚書で改訂されなかった部分は、以前の契約書の内容が有効です。
作成した覚書の内容についても、弁護士によるリーガルチェックを受けることが可能です。不安がある場合や、リスクを抑えて確実な対応をしたい場合は、弁護士に相談しておくと安心です。
契約書を作成する際には、ひな形やテンプレートに頼ってしまいがちですが、それらはあくまで一般的な内容を網羅しているにとどまるケースも多く、事業や事案に沿っていないおそれがあります。そのため、トラブルを予防できず、契約書を作成した意味がないという可能性もでてきてしまいます。
契約書によってビジネスの目的を達成し、相手企業と円満な取引を続けていくためには、弁護士による契約書のリーガルチェックは、必要不可欠といえるでしょう。
ベリーベスト法律事務所は、法人や個人事業主の方の契約書チェックや作成を積極的に受け付けております。
弁護士へ依頼するにあたっては、費用面が気になるとおもいますが、ベリーベスト法律事務所では各種契約書や利用規約、就業規則などのリーガルチェックに関して、事前にお見積もりを発行することが可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。
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