企業法務コラム

2020年12月24日
  • 著作権法改正

改正著作権法が成立! 海賊版対策を中心に規制内容はどう変わる?

改正著作権法が成立! 海賊版対策を中心に規制内容はどう変わる?

2020年6月5日、改正著作権法が参院本会議で可決・成立しました。

目玉である海賊版対策の強化を中心に、企業としては、改正著作権法の施行に向けたビジネスの確認・点検が急務となるでしょう。

この記事では、改正著作権法の内容・施行日や、企業が取るべき対策などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、著作権法とは?

今回の著作権法改正の内容を解説する前提として、まずは著作権法がどのような法律であるかについて簡単に押さえておきましょう。

  1. (1)著作権者の権利を守るための法律

    著作権法は、簡単に言えば著作権者の権利を守るための法律です。
    文芸・学術・美術・音楽に関する創作を行った場合、その創作物について、創作者の著作権が認められます。

    著作権者は、著作物を複製したり、頒布したり、改変したりする権利を独占的に有するとされています。
    このルールによって、著作権者以外の人は、著作権者に無断でその著作物を利用することができません。

    著作権者は、他の人に著作物の利用を許諾することの見返りに対価を得ることによって、著作物を収益化し、次なる創作活動に役立てたりすることもできます。

    このように著作権法は、著作権者の権利を守ることによって、創作活動を促進し、文化の発展に寄与することを目的とした法律なのです。

  2. (2)時代の流れ・背景とともに改正され続けている

    創作の在り方は、時代の流れ・背景や、その時々の流行・技術などによってさまざまに移り変わります。
    この変化に合わせて、著作権法も年々改正によるアップデートが続けられています。

    特に今回の改正の目玉の一つである違法ダウンロード規制については、2012年に初めて映像と音楽の違法ダウンロードが刑事罰化されて以来、さらなる制度の見直しについての議論が続けられてきました。
    改正の論点に関する度重なる議論の結果、現在の状況に合わせた法規制の在り方が見定められ、今回の改正に至っています。

    著作権法の改正は、時代ごとに移り変わる社会と向き合いながら、今後も続けられていくことでしょう。

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2、なぜ著作権法改正が行われることになったのか?

2020年の著作権法改正に関して、なぜ著作権法改正が行われることになったのか、その背景を解説します。

  1. (1)最大の目的はインターネット上の海賊版対策

    今回の著作権法改正の最大の焦点となっているのは、インターネット上に横行する海賊版への対策です。

    日本で近年特に大きな問題となったのは、漫画の海賊版サイトです。

    2019年には、海賊版漫画のリーチサイト(アップロード先ではないものの、リンクを集めたサイト)である「はるか夢の址」、および海賊版漫画のアップロードで「漫画村」の運営者が、相次いで著作権法違反による有罪判決を受けました。
    他にも多数の海賊版サイトが現在も存在しており、出版社や漫画家が権利の侵害を訴えています。

    漫画以外にも、雑誌・写真集・文芸書・専門書・ビジネスソフト・ゲーム・学術論文・新聞など、さまざまな種類の著作物について、海賊版被害が発生しています。
    こうした状況を受けて、今回の著作権法改正では、①リーチサイト対策と②違法ダウンロード規制の強化という2本柱が設けられました。

    詳しい内容については、次の項目で解説します。

  2. (2)その他、ビジネス動向や社会実態の変化を踏まえた種々の改正が行われた

    海賊版対策以外にも、昨今のビジネス動向や社会実態の変化などを踏まえて、著作物の利用円滑化のための措置や、他の知的財産法との整合性を図るための措置などが行われました。

3、2020年著作権法改正の内容と施行日について

2020年著作権法改正の具体的な内容について解説します。
なお、今回の著作権法改正は、項目ごとに施行日が異なるものとされていますので、それぞれのルールがいつから適用されるのかについても注意して見ていきましょう。

  1. (1)リーチサイト対策(令和2年10月1日施行予定)

    リーチサイトについては、改正著作権法第113条第2項第1号において、以下の2パターンが定義されています。

    <リーチサイトの定義>
    1. ① 公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
      サイト運営者が、侵害コンテンツへの誘導のためにページを作り込んでいる場合が想定されています。
    2. ② 主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
      掲示板などの投稿型サイトで、ユーザーにより違法リンクが多数掲載されることにより、結果として侵害著作物等の利用を助長している場合が想定されます。

    また、上記と同様の性質を有するプログラムについても、同じく改正著作権法の規制対象となります(同項第2号、「リーチアプリ」)。

    リーチサイト・リーチアプリに関しては、改正著作権法の施行後、以下の行為について刑事罰が科されます。

    <リーチサイト・リーチアプリに関する犯罪行為>
    1. ① 侵害コンテンツへのリンクを提供する行為
      リンクを提供したユーザーについては、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれらが併科されます(改正著作権法第120条の2第3号)。
    2. ② リーチサイトを公衆に掲示し、またはリーチアプリを公衆に提供する行為
      リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者については、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処し、またはこれらが併科されます(同法第119条の2第4号、第5号)。

      なお、リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者が、ユーザーによる違法リンクの提供を知りまたは知ることができた場合に、リンクが削除できるにもかかわらず削除せずに放置した場合も、同様に侵害行為とみなされます(同法第113条第3項)。

    なお、自ら直接的にリーチサイトの運営やリーチアプリの提供を行っていない「プラットフォーム・サービス提供者」については、上記の規制の対象外となります(同法第119条第2項第4号括弧書き)。
    たとえば、YouTubeの特定のチャンネルがリーチサイトに該当する場合のYouTube自体などが挙げられます。

    また、リーチサイト・リーチアプリに関する犯罪はいずれも親告罪とされているため、刑事訴追のためには被害者からの告訴が必要です(同法第123条第1項)。

  2. (2)著作物の円滑な利用を図るための措置(令和2年10月1日施行予定)

    著作物の円滑な利用を図る観点から、一定の場合には著作権を制限する必要性が生じる場合があります。

    今回の著作権法改正では、昨今のビジネス動向や社会実態の変化を踏まえて、著作権の制限に関する以下の改正が行われました。

    ① 写り込みに関する権利制限規定の対象範囲拡大
    現行法では、写真撮影・録音・録画を行う場合の写りこみが認められています。
    これに加えて、今回の著作権法改正により、新たにスクリーンショットやインターネットによる生配信の際の写り込みも認められるようになりました(改正著作権法第30条の2)。

    ② 行政手続に関する権利制限規定の整備
    地理的表示法に基づく地理的表示の登録、種苗法に基づく植物の品種登録に係る手続きに関して、必要な資料の複製などが認められるようになりました(同法第42条第2項)。

    ③ 著作物の利用許諾に関する権利の対抗制度の導入
    著作権者から許諾を受けて著作物を利用する権利について、著作権を譲り受けた者などに対しても対抗することができるようになりました(同法第63条の2)。

  3. (3)違法ダウンロード規制の強化(令和3年1月1日施行予定)

    現行法では、コンテンツをダウンロードする側については、違法アップロードされた映像と音楽のダウンロードのみが刑事罰の対象となっています。

    しかし、今回の著作権法改正により、音楽・映像以外の著作物についても、違法アップロードされたものをダウンロードする行為が、一定の要件の下で、私的利用目的であっても違法とされ、正規版が有償で提供されているものを継続的又は反復してダウンロードした場合には、刑事罰の対象とされるようになりました。

  4. (4)著作権の適切な保護を図るための措置(令和3年1月1日施行予定)

    先行する2018年の特許法・不正競争防止法の改正に倣って、今回の著作権法改正において、著作権者の権利保護のために仕組みが一部強化されました。

    ① 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
    訴訟における立証の円滑化に寄与するため、侵害者に対する書類提出命令手続に関して、

    • 裁判所が事前に対象書類を閲覧して提出命令の要否を判断すること
    • 裁判所による要否の判断に関して専門委員のサポートを受けること
    • ができるようになりました(改正著作権法第114条の3)。

      ② アクセスコントロールに関する保護の強化
      ライセンス認証を回避する行為についても、著作権侵害行為であることが明確化されました(同法第113条第7項など)。

  5. (5)プログラムの著作物に係る登録制度の整備(公布日から1年以内に施行予定)

    プログラム登録に関する関係者のニーズなどを踏まえて、訴訟などで係争中となった著作物について、著作権者がプログラム登録されている著作物と自ら保有する著作物が同一であることの証明を請求できるようになりました。
    また、令和3年1月1日より、国または独立行政法人が登録を行う場合の手数料免除規定が廃止されます。

4、著作権法改正により、今後企業に求められることは?

今回の著作権法改正で注目すべきは、やはりリーチサイト規制の新設と違法ダウンロード規制強化の2点です。
これらの改正に対応して、企業はどのような対策を講じるべきなのでしょうか。

  1. (1)ユーザーによる著作権侵害行為を抑制|利用規約の見直し・違法排除の仕組み作り

    重要な観点の一つは、「ユーザーによる著作権侵害行為を抑制する」ということです。

    リーチサイト規制との関係では、ユーザーがアップロードした違法コンテンツを理由として、自社が運営するサイトやアプリがリーチサイト・リーチアプリであると判断されるリスクを排除する必要があります。

    また、映像・音楽以外にもあらゆるコンテンツが違法ダウンロード規制の対象となったことから、コンテンツをダウンロードするユーザー側の違法行為を取り締まることもコンプライアンスの観点から重要です。

    ユーザーによる違法行為を抑制するためには、第一義的には利用規約の見直しや注意喚起により、ユーザーが自発的に違法行為を差し控えるように促すことが大切です。
    一方で、万が一ユーザーにより違法コンテンツのアップロードが行われた場合に、速やかに当該コンテンツを排除できるように、モニタリングの仕組みや自動プログラムなどを備えておくべきでしょう。

  2. (2)知財法務部門のリソース拡充

    著作権法の規定は、コンテンツ・ビジネスを運営する事業者にとってますますセンシティブなものになってきています。
    最新の著作権法改正に関する情報をキャッチアップし、自社のビジネスを安定的に運用するためには、知財法務部門のリソース拡充が急務です。

    しかし、社内で法務人材を確保することが現実的に難しいという場合もあるかもしれません。
    その場合には、外部弁護士に相談することも一つの手段となります。
    ベリーベスト法律事務所には、知的財産関係に詳しい弁護士も在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。

5、まとめ

コンテンツ・ビジネスを運営していく上では、著作権法の改正や、著作物利用に関する社会情勢などに合わせて、自社のビジネスをアップデートしていくことが重要です。
自社で利用している契約や規約などの文言を定期的に見直し、最新の法規制等に対応した状態を保っておきましょう。

ベリーベスト法律事務所では、知的財産関係を含めて、業種別・分野別の専門チームを設置しており、幅広い分野でアドバイスをご提供しております。

著作権法などの法改正対応についてのアドバイスをお求めの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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