企業法務コラム
会社で新しいWEBサービスやアプリなどを始める際には、「利用規約」が必要となりますが、「利用規約」とはどのようなものかご存じでしょうか。
契約との違いや、利用規約に違反した場合の効力など詳しいことは知らないという方も少なくありません。
そこで、本コラムでは利用規約の概要や、作らなければならない理由、正しい作成方法などについて解説いたします。
「利用規約」とは、サービスを提供する事業者がユーザー向けにサービスの利用上のルールをまとめたものです。よく見るのがアプリ等をダウンロードする際に、利用規約の画面が表示され、それに「同意する」または「同意しない」を選択するというものです。
「同意する」を選択しなければ、ダウンロードはできないので、事実上サービスを利用するためには同意が強制されます。ダウンロード以外では、SNS、クラウド型サービス、マッチングサービスなどのインターネットサービスではほとんど利用規約の同意が条件になっています。
利用規約の内容は、サービスを提供する事業者が一方的に決めたものであり、個別の条項についてきちんと認識していない利用者が存在する可能性も高く、サービスを受けるためには同意が事実上強制されるものなので、利用規約に利用者に不利な内容が含まれている場合、その効力が有効といえるのか問題になります。
利用規約を定める意味は、大量の利用者にサービスを提供することから、個々に契約を締結することが困難であることと、ユーザーとの間でのトラブルに際し規約がないと対処が難しいことにあります。なお、利用規約が有効と言えるためには、ユーザーがいつでも容易に利用規約を閲覧できるようにしておく必要があります。
利用規約は法律上作らなければならないというものではありません。では、なぜ利用規約を作成する必要があるのかというと、利用者との関係においてトラブルになった際に、対応しやすくするためです。また、利用トラブルで裁判になった際に、対応が正しかったとする根拠になるからです。
たとえば、利用者が法令に反する不適切な投稿を行った場合に、事業者の判断で削除することができないと困るわけですが、利用規約に「投稿が法令に違反し、事業者が不適切と判断した場合には、利用者の了解を得ることなく削除することができる」と規定しておけば、事業者の判断で削除できるわけです。
もし、利用規約がなければ、民法が適用され、債務不履行や不法行為が問題になります。利用規約による損害賠償の予定がなければ、通常損害について無限定のリスクを負うことになります。
利用規約を作成するにあたり、一般的に盛り込むべき内容については次のとおりです。
なお、平成29年の民法改正により、利用規約が「定型約款」に該当する場合には、「定型約款」に関する民法の規制が適用されることになります(民法第548条の2以下)。そのため、利用規約を作成するにあたっては、「定型約款」に関する規定を意識しながら作成するようにしましょう。
サービスを利用する場合は、利用規約への同意が必要であることを明記する必要があります。これがないと、利用規約の一方的な提示になり、法的効力が認められません。
用語の定義があいまいだと、トラブルが発生した際、用語の解釈から争いになってしまいます。そのため、用語の定義規定を定めておくことが有効です。
サービスの内容を明示しないと、どの範囲までサービスを提供する義務があるのかはっきりしなくなります。特に有料サービスを提供するような場合には、この部分があいまいだと、サービスの不履行として訴えられるリスクもあります。
利用規約を作っても、その後の事情の変化によって利用規約を変更したいということも発生します。そのことから、利用規約の変更の方法についても規定しておく必要があります。
この場合、民法第548条の4を意識した条項にするとよいでしょう。
有料のサービスの場合は、利用料金がいくらで、いつからどのようなサービスの提供を受けることができるのか、また、その支払い方法についても定める必要があります。
提供するサービスについて、著作権などの権利が誰に帰属するかについて規定します。特に投稿型のサイトの場合、投稿したコンテンツの著作権または利用権が投稿サイトに帰属するようにしておく必要があります。この場合、対価なく投稿サイト側に著作権等が帰属するように規定すると、利用者からの反発を受け、炎上する可能性があります。そのため、権利の帰属について定めるにあたっては、対価を与えるのか、無償にするのかも含めて慎重に検討し、規定すべきでしょう。
第三者を誹謗中傷するような内容の書き込みを行わないことや、法令に違反するような内容の投稿を行わないなど、サービスを利用する上での禁止事項を定めます。
利用者が利用規約に違反した場合には、サービス提供事業者が利用者のアカウントを停止することができる旨を定めます。
事業の状況によりサービスの提供を一時停止したり、終了したりすることがある旨を定めます。
「当社は、故意又は重大な過失がある場合を除き、本サービスの利用に起因して利用者が被った損害を賠償する責任を負わない。」旨定めます。
この場合、「利用者が被った損害の一切の責任を負わない。」としてしまうと、消費者契約法に反し、無効になる可能性もあります。
利用者とサービス提供事業者との間でトラブルが発生した場合に備えて、どこの裁判所を利用するかを定めます。通常は、本店所在地を管轄する裁判所を指定します。
利用者とトラブルにならないよう利用規約を定めることは非常に大事なことですが、利用規約はサービス提供事業者が一方的に定めるものなので、どうしても、事業者に有利な内容になりがちです。また、サービス利用にあたっては事実上同意が強制されるので、個別の条項についてきちんと認識していない利用者も多いです。あまりに理不尽な内容だと利用者の反発を招いてしまい、ネットで炎上することもあるので注意が必要です。
利用者の反発を避けるためには、利用者の立場に立って納得できる内容の規約にすることが大事です。利用規約は契約と異なり、利用者以外も見られるので内容が不適切だと利用者以外からも攻撃を受ける可能性があります。そのため、利用規約を作成する場合には、多くの人が見るという前提で、誰に見られても批判を浴びないような内容にする必要があります。
利用規約の作り方のところでも述べましたが、利用者が法令に反するような不適切な行動をとった場合に、事業者が利用者の投稿した内容を削除できないと問題が拡大します。そのようなことがないよう、利用者が投稿したコンテンツの削除や修正をサービス提供事業者の権限で行うことができることを利用規約に定めておく必要があります。
利用規約では特定された事項について損害賠償を負わない旨定めますが、利用規約に損害賠償を負わない旨の規定があったとしても、実際に損害が発生した場合には、損害賠償請求がなされ、当該規定が消費者契約法に違反し無効と判断され、裁判において損害賠償の支払いが命じられる可能性があります。そのことを十分に踏まえておく必要があります。
平成29年に民法が改正されて、「定型約款」に関する条項が規定されました(民法第548条の2乃至第548条の4)。改正民法の要件を満たせば、利用規約も「定型約款」に関する規律を受けることになります。民法第548条の2は、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及び実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。」と定められています。
また、体系化されたデータ、画像、文章、プログラムなどは著作権法で保護されているので、無断で他人の著作物を利用しないことはもちろん、投稿型サービスの場合、投稿された内容の著作権が誰に帰属するのか、対価を支払うのか等を明確にしておくことが必要になります。
会員の登録情報など個人情報の取り扱いについても、最大限の配慮が求められます。具体的には、
利用規約の作成や内容のチェックを弁護士に依頼するメリットとしては、
今回は、利用規約の作成方法と注意点について解説してきました。インターネットの普及によって、多くの人と繋がることができることができるようになった反面、法的なトラブルも増えています。
利用規約は、ネット関連業務の場合、多くの利用者との関係を規律するものとして、今や不可欠な存在になっています。ただ、内容に問題があると炎上や法的な問題になることもあるので注意が必要です。
ベリーベスト法律事務所では、利用規約の作成やリーガルチェックを行っておりますので、もし、利用規約の内容について不安がある場合には、ぜひ、ご相談ください。
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