企業法務コラム

2021年10月14日
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団体交渉が決裂・長期化・拒否した場合に企業が抱える3つのリスク

団体交渉が決裂・長期化・拒否した場合に企業が抱える3つのリスク

労働組合から団体交渉を申し入れされた場合、対応を誤ると労使間の紛争が深刻化し、会社にとって大きな損害が生じてしまいます。団体交渉が決裂した場合、会社はどのようなリスクを抱えることになるのでしょうか。
また、団体交渉の決裂を防ぐためには、会社はどのように対応すればよいのでしょうか。

もし団体交渉に臨む必要が生じたら、弁護士に相談して適切に検討・対応を進めましょう。
この記事では、団体交渉が決裂した場合に会社側が抱えるリスクや、団体交渉の決裂その他のトラブルを防ぐための対処方針などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、そもそも団体交渉とは?

団体交渉とは、労働者の集団または労働組合が代表者を通じて、労働条件等について使用者と行う交渉のことを言います。

労働組合から団体交渉を申し込まれた場合、企業は正当な理由なくこれを拒否することはできません

まずは、団体交渉の概要と大まかな流れについて理解しておきましょう。

  1. (1)団体交渉権は労働者の憲法上の権利

    日本国憲法第28条は、労働者の「団結権・団体交渉権その他の団体行動権」を認めています。

    経済力を持った組織である会社(使用者)と、従業員(労働者)個人とでは、元来交渉力に格差が存在します。そのため、使用者に比べ立場の弱い労働者の利益が十分に守られないという構図がしばしば発生しがちです。

    このような構造的な問題から労働者を保護するため、日本国憲法では労働者に労働基本権を保障し、労働者側の交渉力を高めて使用者と同等の立場に引き上げることが意図されています。

    この「団体交渉権」の規定は、労働組合法で具体化されています。
    したがって、会社が労働者側から団体交渉を申し込まれた場合に、正当な理由なくこれを拒否してしまうと違法であるということになってしまうのです。

    また団体交渉は、労働条件等、労働者全体のことはもちろん、個別の労働者に関する事項にいても団体交渉の対象となります。

  2. (2)団体交渉の大まかな流れ

    団体交渉の大まかな流れは、以下のとおりです。

    ① 日時・場所・出席者の決定
    労使の交渉により、団体交渉の開催概要(日時・場所・出席者など)を事前に決めておきます。

    ② 団体交渉当日
    労働者側(労働組合側)が求める労働条件の改善案等につき、労使間で交渉を行います。

    ③ 和解の成立
    使用者側が労働者側の主張を一部受け入れる形で、和解が成立するのがもっとも標準的です。

    ④ 和解不成立の場合は法的手続きで争う
    労使間の主張があまりにも懸け離れている場合、和解の成立は困難です。
    その場合、法的手続きや行政手続きを通じて争うことになります。

2、決裂・長期化・拒否……団体交渉がうまくいかなかった場合の企業側のリスク

労働者側との団体交渉には、法律上の知識と適切な交渉方針を持って対応する必要があります。
もし会社側が対応を誤ってしまうと、以下のリスクにより損失を被ることになりかねません。

  1. (1)団体交渉が決裂したときのリスク

    団体交渉が決裂した場合、会社としては、労働者側が圧力をかけてくるリスクや、法的手段をとってくるリスクを警戒する必要があります。

    ① 労働者側が圧力をかけてくるリスク
    労働者側が会社に対して圧力をかける手段の例としては、以下のものが挙げられます。

    • 街頭宣伝、ビラ配りなど
    • ストライキ(同盟罷業)

    街頭宣伝やビラ配りなどが行われると、企業イメージが低下しかねません。
    また、ストライキが行われると、会社の業務がストップしてしまいます。

    したがって、会社が団体交渉による労働者側の要求をのむかどうかは、このような決裂によるリスクも加味して検討すべきでしょう。

    ② 法的手段をとってくるリスク
    また、労働者側が要求の実現を目指して、以下の法的措置を講じてくることも考えられます。

    ① 労働委員会への不当労働行為の審査申立て
    厚生労働省および各都道府県に設置された労働委員会が、会社側の不当労働行為の有無について審査を行います。

    ② 労働委員会の個別労働紛争のあっせん手続き
    労働委員会が、労使間のトラブルに関する話し合いを仲介して解決を図ります。

    ③ 労働基準監督署への申告
    労働者から、労働基準法違反の事実がある旨の申告を受けた労働基準監督署(各市区町村に設置)が、該当事実の有無について、会社に対する調査を行います。

    ④ 労働審判
    1名の労働審判官(裁判官)と2名の労働審判員で構成される労働審判委員会が、労使間の紛争について調停を試みます。
    調停が成立しない場合は、審判の形で解決策が示されます。
    審理が原則3回で完結するので、訴訟よりも迅速であるのが特徴です。

    ⑤ 訴訟
    裁判所の法廷で、労働者側の請求の当否を労使で争います。
    手続きが長期化しやすい傾向があります。

    団体交渉の決裂後に、もし労働者側がこれらの法的手続きをとってきた場合、弁護士に相談して慎重に対応することが大切です。

  2. (2)団体交渉が長期化したときのリスク

    会社側が団体交渉に臨むためには、準備や当日の対応などに膨大な労力とコストがかかります。
    団体交渉が長期化すればするほど、本業の生産性を犠牲にして団体交渉への対応に労力を割かなければなりません
    そのため、団体交渉を早期に解決することが非常に重要となります。

  3. (3)団体交渉を拒否したときのリスク

    会社側が正当な理由なく団体交渉を拒むことは、「不当労働行為」に当たり違法です(労働組合法第7条第2号)。

    この場合、労働者側による労働委員会に対する審査申立てや訴訟を誘発しかねず、場合によっては労働者側に対して損害賠償義務を負担することになります。
    そのため、団体交渉を門前払いすることはやめて、誠実に団体交渉に臨みましょう

3、団体交渉に関するトラブルを防ぐため、やってはいけない4つのこと

会社側は、団体交渉に関して不利な立場に陥らないようにするため、以下のことをしないように注意しましょう。

  1. (1)不当労働行為

    労働組合法第7条では、以下の会社の行為が「不当労働行為」として禁止されています。

    • 労働組合員であることなどを理由に、労働者を不利益に取り扱う行為
    • 労働組合に加入しないこと、または脱退することを雇用の条件とする行為
    • 労働者の代表者との団体交渉を、正当な理由なく拒否する行為
    • 労働組合を結成し、もしくは運営することを支配し、またはこれに介入する行為
    • 労働組合の運営経費について、経理上の援助を与える行為
    • 労働委員会への申し立てなどを理由に、労働者を不利益に取り扱う行為

    これらの不当労働行為は、労働者側に対して余計な批判の余地を与えるとともに、労働者側に対する損害賠償義務などが発生するおそれもあるので、絶対に避けましょう

  2. (2)社内や労働組合事務所での交渉

    労働者側は、会社のオフィスや労働組合事務所での団体交渉を求める傾向にあります。
    しかし、これらの場所には労働者側に属する人間が多く滞在しており、会社側にとっては不利になりかねない交渉場所といえるでしょう。

    適宜、外部の公共施設や商工会議所の会議室などを活用して、労使対等な交渉環境を整えましょう。

  3. (3)人数無制限の交渉

    労働者側に対して、使用者側は人数で劣るのが一般的です。
    団体交渉に参加する人数を無制限としてしまうと、労働者側が大量の人数を投入し、威力的に使用者に対して要求をのむよう迫ってくる可能性があります。

    そのため、団体交渉に先立って、交渉に参加する人数は労使同数とするように取り決めておきましょう

  4. (4)団体交渉の場で合意書面にサインすること

    団体交渉に関して、使用者側が書面にサインするのは、確定的な合意事項のみにしなければなりません。

    なぜなら、団体交渉の場で何らかの書面にサインをしてしまうと、使用者側としては確定的な合意ではないと思っていたとしても、事後的にその内容を労働協約であると主張されてしまう恐れがあるからです。

    団体交渉において、労働者から書類へのサインなどを求められた際には、必ず会社に持ち帰って慎重に検討するように努めましょう

4、団体交渉の対応を弁護士に依頼するメリットは?

団体交渉は、適切な対応による早期解決が何よりも大切です。
そのためには、法的知識と経験の裏付けを持って、労働者側に対抗する必要がありますので、労働問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。

団体交渉の対応を弁護士に任せることの主なメリットは、以下のとおりです。

  1. (1)交渉方針に関する複眼的なアドバイスができる

    労働者側の要求を受け入れるかどうかは、経済的観点のみならず、法律上の権利関係を踏まえて、さまざまな観点から利害得失を比較検討する必要があります。

    労働問題に詳しい弁護士であれば、要求を受け入れた場合・拒否した場合のそれぞれのメリット・デメリットを適切に提示できるため、会社としても交渉方針を納得のうえで決定できるようになります。

  2. (2)団体交渉の場に同席可能

    団体交渉の当日には、弁護士に交渉の場に同席を依頼することも可能です。
    団体交渉の場に弁護士がいれば、法的な権利義務に関する質問への対応もできますし、わからないことがあれば、その場で相談することもできます

    このように、いざという時に頼りになるアドバイザーが団体交渉に同席しているということは、会社側にとって法的・精神的に大きな安心材料となるでしょう。

  3. (3)労務管理を適正化できるので、団体交渉を未然に防げる

    また、顧問弁護士に労務管理に関する相談を日常的に行い、日々労働関係法令の順守に努めていれば、そもそも労働者からの団体交渉申し入れの可能性は低くなります

    万が一トラブルの種が見つかった場合でも、すぐに相談できる顧問弁護士がいれば、トラブルが深刻化する前に対処できるメリットがあります。

5、まとめ

労働者側から団体交渉したいと連絡があった場合、使用者側には慎重な対応が求められます。
団体交渉が決裂すると、使用者側はさらなる時間的・経済的コストを支払うことになる可能性が高いので、できる限り穏便な解決を目指すのが得策です。

ベリーベスト法律事務所では、労務管理などについて日常的な法律相談をお受けする顧問弁護士サービスをご提供しております。
顧問弁護士がいれば、団体交渉に関するトラブルの予防を図ることができるほか、万が一トラブルが生じた場合にも、法律にのっとって的確に対処することが可能です

団体交渉についてお悩みの企業経営者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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