企業法務コラム

2021年10月25日
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障害者の解雇に悩んだら。 法定雇用率・解雇条件・助成金…企業の注意点

障害者の解雇に悩んだら。 法定雇用率・解雇条件・助成金…企業の注意点

新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって業績が悪化している企業も多いと思います。そのような企業において業績を回復する手段として考えられるのが、労働者を解雇することによる人件費の削減です。

もっとも、労働者を解雇する際には、解雇に関する厳格な法規制をクリアしなければなりません。また、障害者を雇用する企業では、障害者を解雇する場合には、別途配慮が必要なこともあります。

今回は、障害者を解雇しようとする場合に企業が気を付けるべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、障害を理由に解雇するのは不当解雇になる? 判断基準は?

障害者である労働者をその障害を理由に解雇することは、不当解雇にあたる可能性があります。
以下では、障害者の解雇に関する基本的事項について説明します。

  1. (1)労働契約法や、就業規則・終了状況などにより判断される

    ① 障害を理由に解雇すると、不当解雇にあたる可能性がある
    障害者雇用促進法35条では、労働者が障害者であることで、障害のない人との間で不当な差別的取り扱いをしてはならないとしています。
    そのため、単に障害があるということを理由に解雇をすることは、不当解雇にあたる可能性があります。

    ② 障害者の解雇が不当解雇かどうかの判断基準は?
    では、それ以外の理由で障害者を解雇する場合には、不当解雇かどうか、どのように判断するのでしょうか。

    その判断基準は、障害のない人を解雇する場合と同様に、労働契約法の解雇規制に従って判断されることになります。
    解雇の種類には、通常解雇、懲戒解雇、整理解雇の3種類がありますので、以下で具体的な要件を説明します。

    なお、障害者を解雇する場合には、就業規則や当該障害者の心身の状態・就労状況など、個別具体的な内容も判断材料になります。

  2. (2)普通解雇の要件

    普通解雇とは、以下の懲戒解雇や整理解雇以外の解雇のことをいいます。
    普通解雇をするには、以下の要件を満たしていることが必要になります(労働契約法16条)。

    • 客観的に合理的な理由があること
    • 解雇が社会通念上相当であること
  3. (3)懲戒解雇の要件

    懲戒解雇とは、労働者が重大な規律違反や非違行為をした場合に、懲戒処分として行われる解雇のことをいいます。
    懲戒解雇をするには、以下の条件を満たしていることが必要です(労働契約法15条)。

    • 就業規則に懲戒解雇の根拠規定があり、それが周知されていること
    • 就業規則に明記された懲戒解雇事由に該当する行為をしたこと
    • 懲戒解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること
  4. (4)整理解雇の要件

    整理解雇とは、業績悪化などの経営上の理由によって行う解雇のことをいいます。

    整理解雇は、会社側の一方的な都合で行う解雇ですので、その有効性については、他の解雇よりも厳格に判断されます。
    具体的には、以下の要件を満たしていることが必要です。

    • 人員削減の必要性があること
    • 解雇回避努力義務を履行したこと
    • 人選に合理性があること
    • 手続きの妥当性
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2、障害者解雇に関する裁判例

障害者の解雇に関する裁判例としては、以下のものがあります。
障害者の解雇を有効と判断したものもあれば、反対に無効と判断したものもありますので、障害者の解雇が有効かどうかはケース・バイ・ケースであるといえるでしょう。

  1. (1)後遺症があり就労可能な業務がないため、休職期間満了後も退職扱いとしたが、無効とした事例

    経緯
    労働者は、脳内出血で倒れて病気休職に入っていました。
    そして、3年間の休職期間満了前に復職の意思表示をしたにもかかわらず、会社側は、労働者には後遺症があり、就労可能な業務がないとして休職期間満了をもって退職扱いとしました。

    これに対して、労働者は、退職の扱いが不当であるとして、従業員としての地位確認などを求めて提訴しました。

    裁判所の判断(大阪地裁平成11年10月4日判決)
    裁判所は、以下のように判断しました。

    職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合、復職の可否を判断するに際しては、休職前の業務の提供が十分にできないとしても、配置換えなどで現実に配置可能な業務の有無を検討し、そのような業務がある場合には、労働者にその業務を指示するべきである。
    また、労働者が復職後の職務を限定せずに復職の意思表示をしている場合には、使用者から指示される配置可能な業務について労務の提供を申し出ているというべきである。


    裁判所は上記の通り判示し、当該労働者に就業可能な業務があったことを理由に、退職扱いを違法と判断しました。

  2. (2)ミスを繰り返す障害者の雇止めを有効とした事例

    経緯
    労働者は、障害等級3級のうつ病に罹患(りかん)する精神障害者でした。会社側は、当該労働者との有期契約を一度更新しましたが、労働者の業務上のミスが多発するために、2回目の契約更新を行わないと判断しました。

    これに対して、労働者は、雇止めが無効であるとして、従業員としての地位確認などを求めて提訴しました。

    裁判所の判断(東京高裁平成22年5月27日判決)
    裁判所は、以下のように判断しました。

    障害者雇用促進法第5条の趣旨に基づき、事業者は、労働者が自立して業務遂行ができるようになるよう支援し、その指導にあたっても、障害の実態に即した適切な指導を行うよう努力することが要請されている。
    しかし、第4条で、障害者は自ら進んでその能力の向上を図り、有為な職業人として自立するよう努めなければならないと規定されており、事業者が相応の支援および指導を行ったにもかかわらず、労働者に改善の見込みがなかった場合には、雇止めをすることもやむを得ない


    裁判所は上記の通り判示し、事業者が相応の支援および指導を行ったにもかかわらず、当該労働者に改善の見込みがないことを理由として、雇止めを有効と判断しました。

    この事例では、郵便仕分け作業における誤配送や名刺作成で大量の誤印刷を生じさせており、同僚からの具体的な指導を受けても改善が図られなかったという事情があったようです。

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3、障害者を解雇する際には、国の制度との兼ね合いにも注意

障害者を解雇する場合には、不当解雇でなかったとしても解雇の条件や状況によっては、会社側に不利益が及ぶ可能性があります。

  1. (1)国から支給された助成金が不支給になる可能性

    障害者を継続して雇用する企業に対しては、国から特定求職者雇用開発助成金が支給されます。障害者雇用関連の助成金のなかでも最も一般的な助成金ですので、障害者の雇用をしている企業では利用しているところも多いのではないでしょうか。

    この助成金ですが、支給を受けるための要件として、障害者を雇用した日の前後6か月間に解雇など会社都合の離職者がいないことが求められます。
    そのため、障害者を解雇した場合には、国から支給される助成金が不支給となる可能性があります。

  2. (2)法定雇用率を下回った場合に障害者雇用納付金が徴収される

    障害者雇用促進法では、労働者の数が一定数以上の事業主に対して、労働者全体に占める障害者の割合を法定雇用率(障害者雇用率)以上にする義務が課せられています(障害者雇用促進法43条1項)。

    そして、法定雇用率を達成していない場合には、当該企業に対して、障害者雇用納付金の納付が求められます。

    法定雇用率の達成がぎりぎりの企業では、障害者を解雇することによって、法定雇用率を下回る可能性もありますので注意が必要です。

  3. (3)ハローワークへの解雇届を出す必要がある

    障害者の再就職は、一般の求職者に比べて困難とされています。
    そのため、障害者に対して早期に再就職支援を行うため、事業主に対して、障害者を解雇する場合には、速やかに解雇の届け出をハローワークにしなければなりません(障害者雇用促進法81条第1項)。

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4、障害者を不当解雇した場合のリスクとは

障害者を不当解雇した場合には、会社側にはどのようなリスクが生じるのでしょうか。

  1. (1)労働基準監督署や労働局から指導・勧告が入るリスク

    不当解雇を理由に労働者が労働基準監督署の窓口で相談をした場合には、労働基準監督署や労働局から指導・勧告が入るリスクがあります。

    労働基準監督署からの調査は、原則として予告なしで行われ、事業主はそれを拒否することはできません。調査を妨害したり、虚偽の説明などをした場合には、30万円以下の罰金が科されるおそれもあります(労働基準法120条4項)。

    その結果、法令違反や改善点がある場合には、是正勧告書や指導票が交付され、事業主は期限までに違反内容を改善した是正報告書を提出しなければなりません。

  2. (2)労働審判や民事裁判になるリスク

    不当解雇をした場合には、労働者から解雇の無効を主張され、労働審判や民事裁判を起こされるリスクがあります。

    労働審判とは、裁判官1名と労働審判員2名で組織される労働審判委員会が、労使間の紛争を解決する手続きです。原則として3回以内の期日で審理を終えることになっていますので、民事裁判よりも解決までの時間が少なくて済みます。

    労働審判の内容に不服がある場合には、異議を申し立てることができますので、それによって訴訟に移行します。

    民事裁判になった場合には、解決する前に1年以上の期間を要することも珍しくありませんので、負担は大きなものとなります

    仮に解雇が無効と判断された場合には、解雇から現在までの賃金も会社が負担しなければなりませんので、会社の経済的な負担も大きなものとなります。

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5、障害者を解雇する前に、弁護士に相談を

障害者を不当解雇した場合には、上記のようなリスクが生じる可能性がありますので、障害者を解雇する前に弁護士に相談をするようにしましょう。

  1. (1)会社の代理人として労働者との交渉から裁判まで任せることができる

    会社側としては、正当な理由に基づいて解雇をしたつもりでも、解雇に不満がある労働者からは、解雇の無効を主張して争われるケースもあります。

    労働者が弁護士に依頼して解雇の無効を争ってきた場合には、会社側としても法的見地から有効な解雇であることを説得的に主張していかなければなりません。
    そこで、会社側も弁護士に依頼をすることによって、法的知識の不足を気にすることなく、交渉を行うことが可能になります。

    また、労働審判や民事裁判の対応をすることは、裁判に不慣れな企業の担当者では適切に行うことが難しいため、弁護士に任せることで会社側の負担を軽減することができます。

  2. (2)不当解雇にならないようにアドバイスができる

    そもそも不当解雇に関する争いを生じさせないためには、解雇をする前に不当解雇といわれないためのアドバイスを弁護士から受けることが有効な手段となります。

    そのためには、普段から気軽に相談をすることができる顧問弁護士がいるかどうかによって、紛争のリスクを回避できる可能性が変わってきます。

    ベリーベスト法律事務所では、月額3980円から顧問弁護士サービスを提供しています。
    月々の負担を減らしながら、何かあったときにすぐに相談できる体制を導入することができますので、ぜひご検討ください。

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6、まとめ

障害者の障害を理由に解雇することは不当解雇にあたる可能性があります。
その他の理由で解雇をする場合でも、厳格な解雇要件を満たさなければ不当解雇と判断される可能性もありますので、慎重に検討する必要があります。

解雇に関するリスクを減らすためには、事前に弁護士に相談をすることが有効です。
解雇を切り出す前に、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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