企業法務コラム
新型コロナウイルスによる感染拡大が止まりません。こういう状況なので、コロナに関して皆神経質になっています。
コロナに神経質になるあまり、医療従事者やその家族に対して拒否反応を示すなど、差別的な対応を取る人もいるようです。会社においても、新型コロナウイルスに感染した人に陰性になっても「出社してくるな」と言ったり、感染の多い地域から「出張は来ないでくれ」と言ったりする人もいます。
このような対応はいわゆる「いじめ」や「ハラスメント」に該当する場合があり、会社や事業主としては適切に対処する必要があります。そこで、今回は、コロナハラスメントについて、企業がやるべき予防策とハラスメントが起きた時の対応策について解説していきます。
コロナハラスメントは、医療従事者やその関係者、あるいは新型コロナウイルスに感染後陰性になった人に対して「避けたり」、「近寄らないよう言ったり」するなど、新型コロナウイルスに過剰に反応するハラスメントです。
具体的には、次のような事例があります。
「既感染者や医療従事者、また、その家族に対するコロナハラスメント」は新型コロナウイルスがどういうものかがわかっていないことから起こるハラスメントです。
「危険行為によるコロナハラスメント」は、これも感染症について無知あるいは自己中心的発想によるものです。
このようなタイプの人が特に幹部にいる場合、部下は危険にさらされることになるので、会社として対応することが求められます。
「コロナに関するパワハラ」は、正確には「コロナハラスメント」ではなく、「パワハラ」に分類されますが、コロナをきっかけにパワハラがなされる場合があるので、今回ご紹介しています。
パワハラとは、同じ職場で働く人に対して、地位や人間関係など職場での上下関係を背景に、業務上の指示や指導を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいいます。
パワハラ体質の社員がいる場合、コロナに関わらずパワハラをする可能性がありますが、コロナ禍によって各種行動制限が課されているため、その苛立ちから部下などにパワハラをするという場合もあります。
いずれにせよ、会社を休ませないことや病院に行かせないなどというのは論外であり、このような事態を把握した場合には会社として対応しなければなりません。
問題社員のトラブルから、
コロナハラスメントがあったとの申告があった場合、その主張を鵜呑みにするのではなく、事実関係を確認することが必要になります。
① 被害者からのヒアリング
コロナハラスメントがあったと申告した人から詳細にヒアリングを行い、記録に取ります。その際は、時系列にしたがって整理できるようにしてください。
被害者は感情的になって、思いつくまま被害を申告しがちですが、いつ、どこで、誰が、何をしたのか、時系列に整理することで全体像が見えてきます。
② 調査
次に、関係者にもヒアリングを行う必要があります。
この時、加害者に調査の事実が知られると、被害者が報復を受ける可能性があるので、はじめのうちは内密に進めるのが鉄則です。
ハラスメントをしたとされる社員以外の、同僚や同じ部署の人からヒアリングを開始します。
そこで、ハラスメントをしたとされる社員が、日頃からハラスメント行為をしているという事実が確認できたら、それらを記録にしていきます。
この時、被害者のプラバシーや2次被害を防止する観点から、被害者名は伏せた状態でヒアリングをする必要があります。
ある程度周りの状況が把握できたら、加害者とされる社員を呼び出し、ヒアリングを行います。被害者の主張だけだと一方的になるので、加害者の言い分も聞く必要があります。
被害者、加害者、関係者からヒアリングを行った結果を総合的に判断して、会社としてコロナハラスメントがあったのかどうか判断をします。
この時、会社だけで判断ができない場合には、弁護士などに相談することも有効です。
法的見地からハラスメントに当たるかどうか意見を求めることで判断がしやすくなるからです。
① コロナハラスメントの事実がなかったと判断される場合
コロナハラスメントの事実がなかったと判断される場合には、被害者に対して、その理由を説明する必要があります。
被害者が納得しない場合、会社も加害者側と同じと思われてしまう可能性があり、会社も訴えられる可能性があります。
したがって、コロナハラスメントの事実がなかったと認定する場合には、慎重な対応が求められます。
② コロナハラスメントの事実があったと判断した場合
コロナハラスメントの事実があったと判断した場合には、被害者に「会社としてコロナハラスメントがあったと認定した」と事実を伝え、再発防止策と加害者に対してどのような処分をするのか伝えることになります。
労働契約法の第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」との規定があります。これを「安全配慮義務」と言います。
コロナハラスメントが発生しているのに、会社が何の対応もせず放置している場合、労働者の健康を害する可能性があるので、安全配慮義務違反が問われる可能性があります。
具体的には、被害を受けた社員から会社に対して損害賠償請求がなされる場合があるでしょう。
では、コロナハラスメント対策のために、具体的にはどのような事をすべきなのでしょうか。
いくつか具体例を挙げて説明します。
新型コロナウイルスが感染拡大しているので、安全配慮義務として、従業員が新型コロナウイルスに感染しないよう、テレワークの導入、アクリル板のパーテーションの導入、換気の徹底、手指消毒の実施など、従業員が安心して業務できる環境を作る必要があります。
1回だけの研修でコロナハラスメントを無くすことは難しいかもしれませんが、何度もコロナハラスメントの研修をすることで意識は確実に変わってきます。
粘り強く、コロナハラスメントに対する研修を実施することは有効な手段と言えます。
研修後でも構わないのでアンケートを行い、従業員がコロナハラスメントで困っていることはないか確認することが重要です。早期に発見できれば、対策が採りやすいからです。
また、アンケートを実施することで、コロナハラスメントをしている社員へのけん制にもなります。
コロナハラスメントで悩んでいても、「どうせ会社に言っても相手にされずにもみ消される」と思っている社員は結構います。
相談窓口として弁護士などを設定しておくと、労働者としては相談しやすくなります。
経営トップが幹部らに対してコロナハラスメントは絶対許さない旨メッセージを発することでコロナハラスメントが減る可能性があります。
コロナハラスメントをした場合には、厳しい処分が下されると思えばコロナハラスメントをしてはならないという意識が高まります。
もし、ハラスメントに関して規定がない場合には、就業規則などにハラスメントを禁止する条項を定め、禁止に違反した場合には、懲戒処分もありうるものとしておくことが重要です。
もちろん、上記に述べたことを全て行うのは難しいという場合もあるでしょう。
そういった場合は、どこまでが現実的に対応可能か、会社の状況に合わせて判断するとよいでしょう。
もし、「こういったコロナハラスメント対策を進めたいと思っているが、不安がある」という場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、貴社の状況にあわせた具体的な対策や環境整備について、アドバイスをすることができます。
ハラスメント対策としては、相談窓口の設置をするのも方法のひとつです。
社内に相談窓口を設置しても、相談しにくいということもあるので、外部の弁護士に相談対応を任せることが一般的です。
顧問契約をしていれば、会社の状況を把握していますので、すみやかに対応することができます。
また、コロナハラスメント対策には研修の実施が有効ですが、弁護士に研修を依頼することでハラスメントが法律上の問題であることを認識してもらえるようになります。
その他、ハラスメントを定義し、ハラスメントをした場合には懲戒処分の対象になることを就業規則に明記する必要がありますが、就業規則変更の際には、労働基準監督署への届出等、法律上定められた手続を踏むことが求められます。
そのような手続の確認等も含め、就業規則の変更手続きも弁護士に依頼することができます。
顧問弁護士であれば、いつでも気軽に相談できることから、トラブルが悪化する前に対処することができます。会社の情報を知っているので、会社側の立場を代弁することができます。
顧問弁護士がいることで、対外的に信用が増し、従業員を雇用する場合にも法的対応がしっかりしているという印象をもってもらうことできます。
問題社員のトラブルから、
今回は、コロナハラスメントについて解説してきましたが、企業には安全配慮義務があるので、新型コロナウイルスの感染防止策を講じる必要があり、また、コロナハラスメントが発生しないよう、規定の整備や相談窓口の設置などの対策が必要になります。
新型コロナウイルスによって、新しい生活様式が求められるようになりましたが、精神的なストレスからコロナハラスメントをする社員も発生するリスクがあります。
ハラスメント対策をお考えの場合には、弁護士に相談すると安心です。
ベリーベスト法律事務所には、労働法について経験豊富な弁護士が在籍しております。
また、豊富な料金体系の顧問弁護士サービスも行っていますので、ハラスメント対策をお考えの際は、お気軽にご相談ください。
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