企業法務コラム
著作権侵害を助長するものとして、近年「リーチサイト」「リーチアプリ」の存在が問題になっていました。
令和2年(2020年)の著作権法改正により、リーチサイトやリーチアプリが法律の明文で禁止され、刑事罰などの対象となりました。今後も法改正によって、著作権侵害に対する規制強化・厳罰化の流れが進むことが予想されます。
この記事では、令和2年10月に施行された、改正著作権法におけるリーチサイト規制の内容などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「リーチサイト」「リーチアプリ」とは、侵害著作物を掲載したウェブサイトに対するリンク情報を掲載したウェブサイトやアプリをいいます。
そもそも、他人の著作物を無断でウェブサイト上に掲載する行為は、著作権の一つである「公衆送信権」の侵害に該当し、違法です(著作権法第23条第1項)。
リーチサイトやリーチアプリは、こうした著作権侵害に該当するウェブサイトへのリンクを貼ることで、インターネットユーザーからのアクセスを集めています。
リーチサイト・リーチアプリには、アフィリエイトなどの広告ツールが設置されており、アクセス数や広告表示回数などに応じて、運営者に収益が生まれる仕組みとなっています。
リーチサイト・リーチアプリの「リーチ(leech)」には、「他人を食い物にする」という意味があります。
その文字通り、リーチサイト・リーチアプリには、他人の権利に自らただ乗りし、または他人のただ乗り行為を助長するものであるという大きな問題点が存在します。
リーチサイト・リーチアプリは、運営者が広告収入を得ることを目的として運営されています。
話題性の高い人気コンテンツの違法リンクをたくさん貼り付けることによって、インターネットユーザーからのアクセス数が増加し、それに伴って収益も増えるという仕組みです。
つまり、リーチサイト・リーチアプリには、他人の著作物が持つ顧客誘引能力を勝手に利用して、自分が利益を得るという点で、典型的な著作権侵害行為と変わらない問題点があるといえます。
さらに、リーチサイト・リーチアプリを経由することによって、リンク先の侵害コンテンツのアクセス数も増加します。
侵害コンテンツをアップロードする目的は、多くの場合「人々の関心を集めたい」「より多くの広告収入を得たい」というものですので、アクセス数の増加は違法アップロードを行う人のモチベーションを高めてしまいます。
つまり、リーチサイト・リーチアプリの機能が違法アップロードを助長し、その件数を増加させているといえるのです。
違法アップロードの件数が増えれば、当然それに伴って違法ダウンロードの件数も増えます。
さらにリーチサイト・リーチアプリは、インターネットユーザーに対して、一覧性の高い形で侵害コンテンツへのリンク集を提供するものであるため、より一層違法ダウンロードを助長するものであると評価することができるでしょう。
このように、リーチサイト・リーチアプリは、違法アップロード・ダウンロードの両方の面から、著作権侵害を助長するものであるという問題点が存在します。
上記の問題点を踏まえて、令和2年10月1日より、改正著作権法におけるリーチサイト規制が施行されました。
著作権法におけるリーチサイト・リーチアプリの定義には、サイト運営者がページを作り込んで侵害コンテンツへの誘導を図っている場合のほか、ユーザーによる違法リンクの掲載を促す掲示板などの投稿型サイトも含まれます(著作権法第113条第2項第1号、第2号)。
ただし、直接的にリーチサイトの運営やリーチアプリの提供を行っておらず、プラットホームを提供しているにすぎない者については、リーチサイト規制の対象外です(同法第119条第2項第4号括弧書き)。
リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者に対しては、以下の民事・刑事上の制裁が科されます。
リーチサイト・リーチアプリを提供する行為は、著作権法第113条第2項の規定により、著作権侵害とみなされます。
したがって、リーチサイト・リーチアプリに侵害コンテンツへのリンクを掲載された著作権者は、サイト運営者・アプリ提供者に対して、リーチサイト・リーチアプリの運営・提供を差し止めるよう請求することが可能です(同法第112条第1項)。
また、著作権侵害は不法行為に該当するため、民法第709条に基づき、サイト運営者・アプリ提供者に対して損害賠償請求を行うこともできます。
リーチサイト・リーチアプリに対して、侵害コンテンツへのリンクを提供した者については、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」が科され、またはこれらが併科されます(著作権法第120条の2第3号)。
また、リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者については、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」が科され、またはこれらが併科されます(同法第119条の2第4号、第5号)。
なお、リーチサイト・リーチアプリに関する上記の犯罪は、いずれも親告罪とされています。
したがって、加害者が刑事訴追を受けるのは、著作権者からの刑事告訴がある場合に限られます(同法第123条第1項)。
令和2年改正著作権法においては、リーチサイト規制の新設以外にもさまざまな法改正が行われました。
以下では、改正法の内容と施行日について解説します。
PC利用の増加などの社会実態に対応して、一定の場合には著作権を制限して利用者の利便性を高めるために、以下の法改正が行われました。
侵害コンテンツのダウンロードについては、従来は映像・音楽のみが刑事罰の対象になっていましたが、今後はすべての侵害コンテンツのダウンロードが刑事罰の対象となります。
改正著作権法における違法ダウンロード規制については、以下の記事も併せてご参照ください。
著作権を適切に保護するため、以下の法改正が行われました。
「プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律」により、プログラムの著作物についての登録制度が設けられています。
著作権侵害訴訟における立証などに役立てるため、著作権者が行政機関に対して、登録されたプログラムの著作物に関する同一性の証明を請求できるようになっています(同法第4条)。
著作権法改正によるリーチサイト規制の施行により、著作物に対する保護が強化されました。
著作物に関するウェブサイトの運営者は、これまで以上に著作権に関する問題意識を敏感に持っておかなければなりません。
ベリーベスト法律事務所の知的財産専門チームは、著作権法に関する法律問題を重点的に取り扱っています。
著作権の取り扱いについて万全を期したい企業の法務担当者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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