企業法務コラム
12月に入り今年も残すところ1ヶ月となりました。やり残してしまったことがありましたら、今年中に終わらせて気持ちよく新しい年を迎えたいですね。
さて、今年最後の弁理士コラムは、特許権取得のポイントについて、ご説明させていただきます。
ニュース等では、複雑な通信技術等、高度な技術と思われるものが特許として紹介されている例が多いことから、単純なアイデアでは特許にならないと思われる方が多いのではないでしょうか。
現に、よく、お客様より、「私のアイデアは、すごく単純なものだから、これじゃあ特許は取れないよね?」とのご質問を受けることがあります。
しかし、一見、高度な技術と思われないような単純なアイデアでも、十分に特許になる可能性はあります。
すなわち、特許権を取得するためには、特許法に規定される「特許になるための要件」をクリアしさえすれば、単純なアイデアでも、特許権を取得することができるということです。
では、特許権を取得するための主な要件とは、どのようなものでしょうか?
アイデアが特許出願の時点において、新しいものでない場合には、特許権を取得することができません(新規性の要件)。
例えば、出願を考えているアイデアと同じアイデア(同じ構成からなるアイデア)が、既に特許出願の前から世に存在している場合には、そのアイデアは新規性を有しないものとして、出願が拒絶されます。
ただし、既に特許出願の前から世に存在しているアイデアと出願を考えているアイデアとの構成に異なる点が存在する場合には、新規性の要件はクリアされることになります(他の構成が付加されている場合等)。
アイデアが、特許出願の時点において、新しいものであったとしても、当業者により、容易に作り出すことができるようなものである場合には、特許権を取得することができません(進歩性の要件)。
例えば、出願を考えているアイデアが、A、B、Cという3つの部材から構成される機械部品である場合、これらの部材が既に特許出願の前から世に存在しており(従来技術)、当業者において、これらの部材を組み合わせることで、容易に当該機械部品を作りだすことができるような場合には、その機械部品(アイデア)は進歩性を有しないものとして、出願が拒絶されます。
ただし、当該機械部品を作る際、AとBとCとの部材の組み合わせに一工夫加えたような場合(単純にこれらの部材を組み合わせることができないという技術的な困難を乗り越えた場合)やこれらの部材からなる当該機械部品が、従来技術と比較して、予想外の効果を発揮するような場合等は、進歩性が認められることがあります。
上記のとおり、特許権を取得するためには、上記の要件をクリアしなければならないことから、単純なアイデアが上記の要件を満たすことで、特許として認められる場合もあれば、反対に、最先端と思われる複雑な通信技術等が、上記の要件をクリアできず、その特許性が否定されることもあるのです。
したがって、特許権を取得できるか否かのポイントは、アイデア(技術)が、複雑か単純かではなく、あくまで、上記の要件をクリアできるか否か、言いかえれば、
の点にあるといえます(つまり、従来技術との関係が特許権取得のポイントになります)。
このように、単純なアイデアから複雑なものまで、様々なものが特許になる可能性を秘めていることから、是非、皆さまにおかれましては、一度、特許権の取得についてご検討されてみてはいかがでしょうか。
また、特許権取得の要件には、他に細かなものもございます。
知的財産に関してご不明な点等がございましたら何なりとご相談いただければ幸いです。
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