企業法務コラム
新型コロナウイルスの影響などにより、経営状況の悪化している会社が増加しています。
特に会社が債務超過に陥っており、売り上げ改善の見込みがない場合には、会社が自力で経営を立て直すことは困難です。このような場合には、会社について法的整理を行うことがひとつの解決策になります。
この記事では、会社の法的整理の種類や私的整理との違い、手続き選択の指針などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
会社の法的整理とは、法律で定められた手続きに従って、会社の債務の減額・免除を行い、または返済スケジュールを猶予することをいいます。
会社の法的整理の手続きには、大きく分けて以下の4つがあります。
本章では、それぞれの法的整理手続について解説します。
まず、法的倒産手続(法的整理)は「再生型」と「清算型」の2種類に大別されます。
「再生型」とは、会社を存続させた状態で債務整理を行い会社の経営を立て直す方法です。上記の中では民事再生と会社更生が、「再生型」の法的整理手続きに該当します。
一方「清算型」とは、債務整理の結果として、最終的に会社の法人格を消滅させる方法です。「清算型」の法的整理手続きには、破産と特別清算が該当します。
「再生型」の法的整理手続きである民事再生と会社更生とは、どのような手続きなのでしょうか。
次に、「清算型」の法的整理手続きである、破産と特別清算について解説します。
債務整理の方法には、法的整理ではなく私的整理をするという選択肢もあります。
私的整理とは、法律で定められた手続ではなく、債権者との直接交渉によって債務の減額や返済スケジュールの猶予を認めてもらう方法です。
私的整理は、第三者機関などが定める自主ルール・ガイドラインに沿って行われるパターンと、完全にフリーハンドの交渉によって行われるパターンの大きく2つに分かれます。
私的整理に関する第三者機関の自主ルール・ガイドラインを利用した私的整理手続きには、次のようなものがあります。
一方、上記のような手続きによらず、債権者と債務者の間でフリーハンドの交渉が行われる場合もあります。
債権者の側としては交渉にあたり、会社が倒産するリスクを承知で額面どおりに取り立てを行うか、それとも任意整理に応じて少しずつ債務を返してもらう方が良いか、の選択を迫られます。
そして、後者の方がベターであると判断した場合には、債権者は任意整理による債務の減額・返済スケジュールの猶予に応じることになります。
債務者である会社としては、さまざまな債務整理の方法から、どの方法を選択するのが最適であるかを判断しなければなりません。
以下では、債務整理の方法を選択する上で意識すべきポイントを解説していきましょう。
法的整理は会社を存続させる「再生型」と、会社を消滅させる「清算型」の2つに分かれるということは、すでに解説したとおりです。
そのため、まずは会社の事業を継続したいかどうかが、債務整理の方法を選択するうえでの大きなポイントになります。
つまり、事業を継続したい場合は民事再生または会社更生(または任意整理)、事業を諦めて清算するのであれば、破産または特別清算を選択することになります。
「再生型」の手続きを選択する場合は、一定割合以上の債権者の同意により、再生計画案または更生計画案が可決されることが必須です(民事再生法第172条の3第1項、会社更生法第196条第5項)。
よって、可決要件を満たすことができない場合には、「再生型」の手続は諦めて破産を選択するほかありません。
なお、特別清算を利用する場合は、債権額ベースで3分の2以上を有する債権者の同意が必要です(会社法第567条第1項)。
また、任意整理の場合も、個別の債権者が任意整理の内容に同意しなければ成立しません。
つまり、債務整理手続の中で、債権者の同意が必要ないのは破産のみということになります。
したがって、債務整理について債権者の同意が得られない場合、最終的には破産手続を選択することになるでしょう。
会社更生手続については、利害関係人が極めて多い大企業が倒産する場合を想定して、極めて厳格かつ複雑な手続が法律上定められています。
そのため、弁護士費用・手続費用が著しく高額で中小企業には向いていません。
中小企業が「再生型」の法的整理を行う場合は、民事再生を選択するのが良いでしょう。
私的整理は、債務額が小さく債権者数が少ない場合に限り、有力な選択肢です。
任意整理は、法的整理とは異なり、債権者との個別交渉により行われるため、簡易な手続で行うことができるというメリットがあります。
一方で、債務の大幅な減額は期待できない・債権者ひとりずつと交渉しなければならないというデメリットも存在します。
債務額が小さく債権者が少ない場合には、手続きの簡便さというメリットが勝つ場合もあります。
しかしそうでない場合には、法的整理で一括して債務整理を行う方が良いでしょう。
事業の再建が見込めない場合には、破産を選択することもやむを得ません。
この場合、「再生型」の法的整理を行うために必要な債権者の同意を得られる可能性は極めて低いでしょう。
また、「再生型」の手続きには「清算価値保障原則」が定められています。
清算価値保証原則とは、再生計画や更生計画は、破産をした場合よりも多くの配当を債権者が受けられる内容になっていなければならないことを意味しています。
事業の再建見込みが立たない場合には、清算価値保障原則を満たす計画弁済を行う見込みも立ちませんので、計画案が認可されることはありません。
以上の理由から、会社の事業を再建できる可能性が低い場合には、破産手続きを選択することになるでしょう。
会社の経営状況が悪化し、法的整理を検討している経営者の方は、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は法律の専門家として、経営改善策・公的支援策の利用や、会社の状況に合わせてどの債務整理の方法を選択するのが最適であるかなどについてアドバイスを提供しています。
会社の傷が浅いうちに弁護士に相談をすることで、取ることのできる対応策の選択肢も広がりますので、まずはお早めに、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、法人破産・民事再生専門チームの弁護士が徹底サポートいたします。
業績悪化により会社の経営再建や清算を目指す経営者の方は、法的整理に限らず最適な対処法を選択するために、まずは弁護士にご相談ください。
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また、所属税理士が相談に同席して税務面のご相談についてもワンストップでお受けしているほか、民事再生・法人破産専門チームが会社の債務整理を専門に取り扱っております。
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