企業法務コラム
梅雨に入り、じめじめした季節がやってきましたね。季節の変わり目は、ストレスが多く、クレームが発生しやすい時期と言われているのをご存じでしょうか?
クレームへの対応は多くの企業で悩みの種になっているかと思います。ただし、どのように対応すればいいのか明確に決まっておらず、また仮に決まっていても、それが現場まで浸透をしていないため、その場その場で適当な対応していることも多いのでないでしょうか。
正しいクレーム対応をしておかないと、当該企業がクレーマーの餌食となり、最悪の場合暴力団等の反社会的勢力から狙われたり、また、逆にクレーム対応によって現場担当者が疲弊してしまい退職者を生むことにもつながり、企業にとってのリスクは非常に大きいものがあります。
では、実際にクレーム対応はどのようにしていくのが正しいのでしょうか。
まずは、クレームが起きる前に現場でできる対策があります。これをしておくことで、クレームが大ごとになることを防ぐことができます。
クレームの原因でまず多いのはスタッフのミスから発生するクレームです。まずは、どんなミスがクレームに繋がりやすいのか、周知徹底しましょう。また、重大なクレームになりやすいことは、社内で必ず共有し、事前に防げるようにチェック体制を強化しましょう。
入社3ヶ月の新人でもクレーム対応ができるように、マニュアルを作成しておきましょう。1人では対応できないときは、誰が対応するか連絡経路を決めておき、相手を無用に待たせてクレームを悪化させることのないようにしましょう。
酔っ払いや、居座りなどの場合は、警察に対応してもらうのが有効です。スムーズに連絡ができるように、日頃から挨拶をしておきましょう。
こちらが毅然とした態度でいれば、相手もクレームが言いにくいものです。過度に卑屈にならず、丁寧にきちんと対応することで、相手にクレームを言う隙を与えないことも重要です。
ここでクレームの正しい対応のためには、
が重要となります。
まず最初の段階で、「気分を害したこと」に関しては謝罪をしましょう。時々、簡単に頭を下げるべきではないという意見も見ますが、基本的には最初に「怒らせたこと」に関しては「申し訳ございませんでした」というほうが良いです。多くのクレームの場合、店員からの最初の謝罪の一言があるだけでほぼ解決するからです。
相手よりクレームを受けた場合、まずは相手の話をよく聞くことが大事です。また並行して担当者にも聞き取り調査をしましょう。ここで重要なのは、事実として何があったのかを確認することです。その際、5W2Hを意識して、事実を確定することです。事実が確定できない場合、その後の対応として何が正しいか選択ができませんので、まずは下記5W2Hに沿って事実を確認することが重要となります。
しかしここで、相手がクレーム内容を明らかにしなかったり、また問題となった商品等を送付してくれなかったり、正しい事実確認に協力をしない場合もあると思います。
このように企業内での調査も限界となり、相手のクレーム事実が認定できない、またそもそもクレーム内容が明確でない場合、その後企業が対応をする必要はありません。実際の裁判でも、クレームを入れた方(法的権利を主張する側、原告)が、自ら主張する事実、および自らの主張を根拠づける法的構成を明らかにすることが求められており、それを明らかにしない場合、原告の敗訴となります。
では事実が確認できたとして、どのように対応したらよいのでしょうか。
この点は法に則った対応が重要となります。民法上、契約関係にある当事者や、違法な行為等で相手に損害を与えた場合、その賠償の範囲として、特に当事者間で予め定めがなかった場合、一般人が通常予見しえる範囲での賠償を原則としています。ただし、特に当事者がその事情を予見していた(または予見し得た)場合、例外的に特別の事情によって生じた損害まで賠償責任を負うことになります。(民法416条参照)。
具体的には、飲食店で従業員が料理を運んだ際、お客様の衣服に少し料理をこぼして汚してしまった場合、通常クリーニング費用の賠償を行えばよく、それを超えて料理代金全額を免除したりするべきではありません。
なお、クレーム対応の場合、慰謝料を請求されることがあります。慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償ですが、通常、物に対する損害で慰謝料は認められておりません。よって上記の例でも衣服が汚れたからといって慰謝料は原則として認められません。このように、法に則って対応することが重要です。
上記をふまえ、現場では次の3点に気をつけて対応すべきです。
なお、会話の録音は、プライバシーの問題は原則として生じませんし、その後裁判になったとしても充分に証拠価値があります。そこで、「以下、規則により録音をさせていただきます」と一方的に行って録音をすべきです。
上記のようにこちらが正しい対応をしても、相手が店舗等に居座る場合があります。こちらから何度も退去をもとめ、それでも退去をしてくれない場合は、速やかに警察に通報をしましょう。
刑法上も、建物の管理権者が退去を求めたにもかかわらず、退去しなかった場合、不退去罪(刑法130条)が成立します。
過去警察は民事不介入の原則を理由に、このような現場に臨場することに消極的な姿勢が見られましたが、最近は積極的に対応をしてくれる姿勢が顕著に見受けられます。
以上、クレーム対応についてご説明してきましたが、クレーム対応は企業にとって大きい負担です。そのため、少しでも疑問や不安があった場合は、速やかに弁護士に相談をしましょう。
我々弁護士がこのようなクレーム対応の事案について企業から依頼を受けた場合、まずは弁護士名で内容証明を作成し、そのなかで「本件を弁護士が代理人として受任したこと」、また「今後当該企業への連絡は一切とらないように警告を行う」とともに、「仮にこれに従わなかった場合、法的手段を採ること」を明示します。
このような内容証明を送付しただけでクレームが止まることも多くあります。
弁護士への相談は早すぎるということはありませんので、お気軽にお問い合わせください。
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