企業法務コラム
所有する賃貸物件の入居契約者が在留外国人の場合、日本との文化の違いなどが原因で、予想外のトラブルに発展するケースは少なくありません。
もし外国人入居者とのトラブルに発展してしまった場合は、賃貸借契約書や管理規約などに照らし合わせて、法的な観点から適切に対応しましょう。
この記事では、賃貸物件における外国人入居者とのトラブル事例や、トラブルへの対処法・予防法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
外国人入居者の中には、日本の賃貸ルールにまだなじんでいない方もいらっしゃいます。
その場合、以下のようなトラブルに発展してしまう可能性があるので、賃貸人(大家)としては注意が必要です。
外国人入居者に限りませんが、大音量で音楽を聴く、遊びに来た友人と大声で騒ぐなどの騒音トラブルは少なくありません。
騒音トラブルは、他の入居者や近隣住民の迷惑となり、賃貸物件の管理に重大な支障を来すおそれがあるので要注意です。
海外では、日本のようにゴミ出しのルールが徹底されていない地域もあります。
たとえば外国人入居者が、汚物をそのまま捨てる、分別をしないなど、ゴミを捨てる際のルールを守らない場合は、異臭などの問題に発展しかねません。
ゴミ捨て場の管理は、衛生面からも極めて重要なので、早急に対処が必要です。
賃貸物件を自分の所有物かのように、勝手に他人に転貸するケースも少なくありません。
無断転貸が行われると、賃貸人の知らない人が居室を使うことになります。
特に外国人入居者の場合、たとえば不法滞在の外国人などに対して無断転貸が行われるなど、賃貸人としても大きなリスクを背負ってしまう場合があります。
外国人入居者に限りませんが、賃貸借契約締結時には申し出のなかった同居人と無断同居しているケースがあります。
たとえば単身者であることを前提としていたにもかかわらず、実際には複数人が入居している場合、生活騒音などが大きくなる懸念があります。
また、入居者の人数が多くなれば、居室内設備の劣化も早くなることが想定されます。
いずれにしても、契約上想定されない同居人が存在する状況は、賃貸人にとってはリスクであるというべきでしょう。
賃貸居室を無断で改造してはいけないことは、基本的な常識であると考えられますが、日本の法制度や文化を理解していない外国人入居者の場合、居室を勝手に改造してしまうケースもまれにあるようです。
無断での改造は設備を痛めてしまううえ、もし賃借人が原状回復を怠った場合には、賃貸人が原状回復工事を発注しなければならない事態が生じてしまいます。
外国人入居者の中には、家賃を滞納した末に勝手に引っ越したり、そのまま本国に帰ってしまったりする方もいるようです。
外国人入居者の行方がつかめない場合、賃貸人は家賃の回収ができず、さらに居室を片付けてよいのかどうかもわからない状況に陥ってしまいかねません。
外国人入居者とのトラブルが発生してしまった場合、トラブルの内容に応じて、法的な観点から適切な対応をとりましょう。
主なトラブルへの対処法は、以下のとおりです。
騒音やゴミ出しのルールを守らないなどのマナー違反を犯している入居者に対しては、口頭での注意のほか、張り紙や書面投函による警告を行いましょう。
また、行為の内容によっては、管理規約などに違反していることも考えられます。
違反の程度が甚だしい場合には、賃貸借契約を解除できる場合もありますので、適宜弁護士に相談しながらご対応ください。
無断転貸は、賃貸借契約に対する重大な違反であり、契約解除事由に該当します(民法第612条第1項、第2項)。
法律上、無断転貸の場合は無催告解除が認められると解されていますので、直ちに賃貸借契約を解除したうえで、入居者に対して居室の明け渡しを求めましょう。
賃貸人の承諾なく、契約で認められていない同居人と一緒に住む行為は、賃貸借契約の違反に該当します。
無断同居の場合、賃貸借契約の解除が認められるには、賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されたと認めるに足る事情が必要です。
そのため、まずは入居者に対して、一定期間内に同居を解消するよう求めましょう。
それでも一向に同居人を退去させない場合には、信頼関係の破壊を理由として、賃貸借契約を解除できる可能性があります。
賃貸居室を勝手に改造する行為は、賃貸借契約上の用法違反に該当し、さらに内容によっては器物損壊罪(刑法第261条)にも該当します。
賃貸人としては、入居者に対して速やかに原状回復を求めるとともに、従わない場合は賃貸借契約を解除しましょう。
また、居室の損壊の程度が著しい場合には、刑事告訴を行うことも考えられます。
外国人入居者が家賃を滞納している場合、以下の方法を用いて債権回収を試みましょう。
また、滞納がおおむね3か月以上に及んでいる場合には、信頼関係の破壊を理由として、賃貸借契約を解除することも可能です。
外国人入居者と賃貸借契約を締結する際には、トラブルになる頻度が高いことを認識したうえで、あらかじめ以下の対策を採っておきましょう。
外国人入居者は、日本の文化や賃貸借のルールをよく知らないケースがあります。
そのため、入居者がどのような事項を遵守しなければならないのかを、あらかじめ丁寧に説明しておきましょう。
特に、日本語を理解しない外国人入居者の場合は、可能であれば通訳を付けて説明を行うのが望ましいです。
外国人入居者が、他の入居者や近隣住民とのトラブルを発生させた場合には、管理会社と連携して対応しましょう。
管理会社には、入居者トラブルへの対応に関するノウハウがありますので、状況に合わせた適切な対応が期待できます。
月々の管理費用とは別途料金が発生するケースもありますが、堅実な対応をとるためにも、管理会社のサポートを受けることが賢明でしょう。
外国人入居者に関するトラブルを避けるためには、トラブルを起こしそうな方をそもそも入居させないことが大切です。
たとえば一定以上の居住歴や、日本語を理解できることなどを入居条件に加えることで、トラブルの大部分を回避できるでしょう。
また、実際に入居希望の外国人と面接を行い、信用できる方かどうかを見極めることも有効です。
外国人入居者に対しては、トラブルを理由に損害賠償や滞納家賃の支払いを請求するケースも想定されます。
しかし、外国人入居者がすんなり支払いに応じるとは限りません。
さらに、本国に帰るなどして失踪した場合には、そもそも請求を行うこと自体が困難になってしまいます。
外国人入居者については、トラブルになる可能性が比較的高いことを踏まえて、必ず契約時に連帯保証人を付けるようにしましょう。
そうすれば、もしトラブルが発生した場合には、連帯保証人に対して損害賠償などを請求できます。
外国人入居者とトラブルになり、契約解除や損害賠償請求などを行う場合は、弁護士に相談することをお勧めいたします。
賃貸人として取り得る対処法を法的な観点から検討したうえで、具体的な協議や法的手続きを弁護士が代行するので、スムーズにトラブルへの対処を進められるでしょう。
また、外国人入居者とのトラブルを未然に防止するためにも、弁護士のサポートが役立ちます。
賃貸借契約書の作成・見直しや、契約締結時・賃貸管理上の留意点に関するアドバイスを通じて、トラブルのリスクを低減させることが可能です。
外国人入居者とのトラブルへの対応および予防法務については、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
賃貸住宅に外国人入居者を受け入れた場合、文化やルールに対する理解の違いなどから、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
そのため、未然にトラブルを防ぐための対策を講ずるとともに、もし外国人入居者との間でトラブルに発展した場合は、法律・契約を踏まえて適切に対応することが大切です。
ベリーベスト法律事務所は、賃貸経営に関するトラブルを実効的に予防し、かつ実際のトラブルにも迅速に対処できるよう、オーナーの方をサポートいたします。
外国人入居者とのトラブルについてお悩みの不動産オーナーの方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
不動産の売買は、非常に高額な取引になりますので、トラブルを回避するためにも「不動産売買契約書」という書面を作成するのが一般的です。不動産売買契約書の作成は、法律上の義務ではありませんが、必要な項目を…
所有する賃貸物件の入居契約者が在留外国人の場合、日本との文化の違いなどが原因で、予想外のトラブルに発展するケースは少なくありません。もし外国人入居者とのトラブルに発展してしまった場合は、賃貸借契約書…
入居者に家賃を滞納された場合、建物オーナーとしては大きな機会損失が生じてしまいます。特にコロナ禍の影響が収まらない状況では、賃借人による家賃滞納に頭を悩ませている建物オーナーの方も多いことでしょう。…
お問い合わせ・資料請求