企業法務コラム

2023年09月28日
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消費者保護法とは? 経営者が知るべき消費者契約法などへの対策

消費者保護法とは? 経営者が知るべき消費者契約法などへの対策

厳格化が進む消費者保護法への対応は、消費者向けのビジネスを展開する企業にとって急務といえます。消費者保護法とは、消費者契約法や特定商取引法、景品表示法、割賦販売法、貸金業法などの総称をいいます。

企業側としては、消費者保護法のルールを踏まえて、消費者との取引の効力が覆されることがないように備えておかなければなりません。

この記事では、消費者保護法の全体像を踏まえつつ、主な消費者保護法に関する企業側の対応策や違反した場合のペナルティなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、消費者保護法とは?

消費者保護法とは、事業者と消費者間の取引に関して、消費者が不当に搾取されないように一定の規制を及ぼす、さまざまな法律の総称を意味します

  1. (1)消費者保護法に当たる法律の具体例

    消費者保護法は、取引の類型ごとにルールを定めるさまざまな法律によって成り立っています。

    消費者保護法を構成する法律の具体例と概要は、以下のとおりです。

    ① 消費者契約法
    事業者・消費者間の取引一般について、事業者による消費者の搾取を禁止する法律です。

    ② 特定商取引法
    消費者が事業者から搾取される可能性が類型的に高いとされる取引についてのルールを定める法律です。

    ③ 景品表示法
    事業者が不当な景品類や表示によって顧客を誘引することを規制する法律です。

    ④ 割賦販売法
    クレジットカードなど、分割払い式の決済サービスを規制する法律です。

    ⑤ 貸金業法
    貸金業者(銀行・信用金庫などを除く)によるローン・ビジネスを、消費者が過大な負担を背負ってしまわないように規制する法律です。


    上記のうち、消費者契約法と特定商取引法の2つについては、事業者にとっての重要性が年々増しているため、後で詳しく解説します。

  2. (2)消費者保護法の規制が厳格化する背景とは?

    そもそも消費者保護法とは、事業者が豊富な情報や強い交渉力を利用して、消費者から不当に搾取する行為を規制するために制定されたものです。

    特に、商品などに対する適切な情報量については、情報化社会の進展に伴って、事業者と消費者の間の情報格差は年々拡大しています。そのため消費者保護法の規定は、段階的な改正によって、より消費者保護に厚い規定へと変化し続けているのです。

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2、消費者契約法とは?

消費者保護法の中でもっとも重要な法律のひとつである、消費者契約法について、その目的や主なルールなどを解説します。

  1. (1)消費者契約法の目的

    消費者契約法の根底にある基本的な思想は、“事業者と消費者の情報格差・交渉力格差の是正”です。

    消費者契約法は、もし消費者が事業者から取引において不正に搾取された場合、その取引の取り消しなどによって、消費者を保護することを目的としています

  2. (2)消費者契約法の主なルール

    消費者契約法の主なルールとしては、以下のものが挙げられます。

    ① 消費者契約の取り消し
    事業者が消費者に対して、契約締結に関して以下の不当な行為をした場合、消費者は契約を取り消すことができます(消費者契約法第4条第1項~第3項)。

    • 重要事項の不実告知
    • 不確実な事項に関する断定的判断の提供
    • 不利益事実の不告知
    • 消費者の要求に反する不退去
    • 退去しようとする消費者の妨害
    • 必要とされる分量や期間を著しく超えた契約(過量契約)


    なお、事業者による消費者の搾取が多様化していることを受けて、令和元年施行の改正法では、消費者契約の取り消しが可能な場合として、以下のケースが追加されました。

    • 消費者の不安をあおる行為
    • デート商法
    • 霊感商法 など


    ② 消費者に不利益な条項の無効
    事業主にとって一方的に有利、消費者にとって一方的に不利となる以下の条項は無効となります(消費者契約法第8条~第10条)。

    • 事業者の損害賠償責任を免除する条項
    • 消費者の解除権を放棄させる条項
    • 消費者に対して高額の違約金を課す条項
    • 信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項


    さらに直近の改正法では、より厚く消費者の権利を保護するため、以下の条項についても新たに無効とされました。

    • 事業主に自らの責任の有無や、消費者の解除権の有無を決定する権限を付与する条項
    • 事業者に対し後見開始の審判などによる解除権を付与する条項
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3、特定商取引法とは?

次に、消費者契約法と並んで重要な消費者保護法のひとつである、特定商取引法について解説します。

  1. (1)特定商取引法の目的

    特定商取引法は、消費者が類型的に搾取されやすい取引についてのルールを定め、事業者による搾取から消費者を保護する法律です。

    特定商取引法の規制対象となる取引としては、以下のものが挙げられます。

    • 訪問販売
    • 通信販売
    • 電話勧誘販売
    • 連鎖販売取引(マルチ商法)
    • 特定継続的役務提供(エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相談所)
    • 業務提供誘引販売取引(事業者が販売した物・サービスを使って消費者に何らかの業務をさせる取引)
    • 訪問購入
  2. (2)特定商取引法上のクーリングオフ制度

    特定取引法における消費者保護のルールの代表例として、クーリングオフがあります。

    消費者がクーリングオフの意思表示をした場合、それがクーリングオフ期間内であれば、契約締結の事実がなかったことになるうえに、事業者は消費者に対して損害賠償や違約金を請求することができません

    取引類型ごとに定められているクーリングオフ期間は、以下のとおりです。

    訪問販売 契約書面を受け取った日から8日間
    電話勧誘販売 契約書面を受け取った日から8日間
    連鎖販売取引 契約書面を受け取った日から20日間
    特定継続的役務提供 契約書面を受け取った日から8日間
    業務提供誘引販売取引 契約書面を受け取った日から20日間
    訪問購入 契約書面を受け取った日から8日間

    なお、訪問販売と電話勧誘販売については、以下に該当する場合にはクーリングオフ制度が適用されないので、事業者が消費者の返品要請に応じる必要はありません(特定商取引法第26条第5項)。

    • 政令で定める消耗品を使用、消費した場合
    • 消費者が支払う対価が3000円未満の場合


    また、通信販売については、消費者の自主性を尊重するという観点から、クーリングオフが認められていません。厳密に言うと、特定商取引法の原則としては、通信販売についても、商品を受け取ってから8日以内の返品は認められます(同法第15条の3第1項)。

    しかし、返品不可の特約を通信販売の広告に表示するなどの条件を満たしている場合は、この原則が適用されず、通信販売で購入した商品の返品は不可となります

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4、消費者保護法違反の具体的なケースとペナルティー

消費者契約法・特定商取引法に違反する典型的な事例と、各違反行為に対するペナルティーの内容を紹介します。

  1. (1)消費者契約法違反のケース

    事業者が消費者契約法に違反した場合、契約の取り消しや契約条項の無効などのペナルティーを受ける可能性があります
    具体的には以下のようなケースが該当します。

    <消費者契約が取り消され得る事例>
    • 実際には存在しない効能が存在するかのようにうたって、消費者に健康食品を購入させた(重要事実の不実告知)。
    • 「月に最低5万円の収入は確実に得られる」とアピールして、消費者は高額の研修教材を購入させた。実際には、5万円以上の収入を得ている購入者は半数に満たなかった(不確実な事項に関する断定的判断の提供)
    • 消費者に保険契約の勧誘を行った際、60歳以降は保険料が大きく上がることを全く説明しなかった(不利益事実の不告知)

    <消費者契約の条項が無効になり得る事例>
    • 消費者に販売した健康器具について、製品の不具合によって消費者がけがをしたとしても、事業者は一切責任を負わない旨が契約上規定されていた
    • 消費者に業務を行わせる契約において、消費者がミスを犯した場合、1回当たり一律5万円という高額の罰金を課す旨が契約上規定されていた
  2. (2)特定商取引法違反のケース

    事業者が特定商取引法に違反した場合、業務改善指示・業務停止命令・業務禁止命令などの行政処分や、刑事罰の対象になります。

    具体的には、以下のようなケースが処分や刑事罰の対象になります。

    <特定商取引法違反で行政処分の対象になり得る事例>
    • 訪問販売による勧誘を拒否した消費者に対して、しつこく勧誘を続けた
    • 通信販売をしている商品についての誇大広告を行った

    <特定商取引法違反で刑事罰の対象になり得る事例>
    • 特定商取引法の規制対象になっている取引について、消費者に契約に関する書面を交付しなかった(特定商取引法第71条第1号。6月以下の懲役または100万円以下の罰金)
    • 主務大臣からの業務改善指示などに違反した(同条第2号。6月以下の懲役または100万円以下の罰金)
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5、消費者保護法を踏まえて企業が行うべき対策は?

消費者保護法違反によるペナルティーを受けないように、消費者ビジネスを展開する事業者としては、以下の点に留意して対策をとる必要があります。

  1. (1)消費者保護法に関する従業員指導を徹底する

    消費者トラブルの多くは、事業者と消費者が直接コミュニケーションをとる現場で発生します。
    消費者保護法に違反するリスクのある勧誘や商品案内が行われないように、従業員の指導・教育を徹底することが大切です。

  2. (2)消費者の要求の合理性を見極める

    消費者からの相談に真摯(しんし)に対応することは重要ですが、一方で不当な要求をするクレーマーに対しては、厳正に対処する必要があります。消費者保護法の規定内容をよく理解したうえで、消費者からの正当な請求と不当な要求の境界線を見極められるようにしましょう

  3. (3)顧問弁護士に相談するのがおすすめ

    従業員の指導・教育を行う場合や、消費者の要求の合理性を見極める場合には、顧問弁護士に相談することで、適切な対応を取ることが可能です。顧問弁護士に相談すれば、消費者保護法の横断的なルールの内容を正確に踏まえたうえで、従業員に対する研修講義や、個々の消費者トラブルを解決するためのアドバイスを受けられます

    ベリーベスト法律事務所には月額3980円からの顧問弁護士サービス「リーガルプロテクト」もございます。顧問弁護士のコスト面でお悩みの場合は、ぜひご検討ください。

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6、まとめ

消費者を保護する各種法令の規制内容が強化される中、事業者による消費者対応の重要性はますます高まっています。

ベリーベスト法律事務所では、消費者トラブルにも幅広く対応する顧問弁護士サービスを提供しています。依頼者のニーズに合わせた多様な料金プランをはじめ、税理士や司法書士とのグループ内連携体制も整っています。消費者への対応・対策をご検討の企業担当者の方は、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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