企業法務コラム

2022年11月17日
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法定休日と祝日が重なった! 残業代は? 割増賃金の計算方法も解説

法定休日と祝日が重なった! 残業代は? 割増賃金の計算方法も解説

祝日は法律によって「休日」と定められていますが、実際には祝日を休みにするかどうかは会社によって異なります。

また、休日である祝日に労働した場合における残業代の計算方法も、状況に応じて複数のパターンがあるので注意が必要です。

今回は、法定休日・法定外休日・祝日の違いや、祝日に労働した場合の残業代の計算方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、法定休日・法定外休日・祝日の違い

会社の休日に働いた場合、残業代の計算に当たっては「法定休日」と「法定外休日」の区別が重要になります。

一方「祝日」は、国民の祝日に関する法律である祝日法に基づいて定められており、労働基準法のルールとは関係がないので注意が必要です。

  1. (1)法定休日|労働基準法上、付与が義務付けられた休日

    労働基準法第35条により、週に1日以上または4週間を通じて4日以上、使用者は労働者に対して休日を与えなければなりません。この労働基準法によって付与が義務付けられた休日を「法定休日」と言います。

    たとえば1週間に複数の休日がある場合、法定休日はそのうち1日だけです。
    どの休日が法定休日に当たるかは、以下の要領で決まります。

    ① 労働契約や就業規則に定めがある場合
    →その定めに従います。

    ② 労働契約や就業規則に定めがない場合
    →日曜から土曜を1週間として、もっとも降順(後)に位置する曜日が法定休日となります。
    (例)日曜・土曜が休みの場合、土曜が法定休日

    労働者が法定休日に労働した場合、使用者は休日労働手当として、通常の賃金に対して35%以上50%以下の割増賃金を支払う義務を負います(労働基準法第37条第1項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

  2. (2)法定外休日|法定休日以外に、会社が独自に定めた休日

    法定休日以外に会社が定めた休日がある場合、「法定外休日」として取り扱われます。
    たとえば日曜・土曜が休みの会社で、土曜が法定休日の場合、日曜が法定外休日です。

    法定外休日における労働は、労働基準法上の休日労働には該当しません。
    その一方で、所定労働時間外の労働には当たるため、以下の残業代が発生します。

    ① 法定労働時間※の範囲内の部分(法定内残業)
    通常の賃金による残業代が発生します。

    ② 法定労働時間を超える部分(時間外労働)
    通常の賃金に対して25%以上の割増賃金による残業代が発生します。
    ただし、大企業※で月60時間を超える時間外労働については、割増率(割増賃金率)が50%以上となります。

    • ※法定労働時間:原則として1日当たり8時間、1週間当たり40時間(労働基準法第32条)
    • ※令和5年4月1日より、月60時間を超える時間外労働について、中小企業にも50%以上の割増率が適用されます。
  3. (3)祝日|祝日法に基づく祝日

    法定休日・法定外休日とは異なり、「祝日」は労働基準法とは関係がなく、国民の祝日に関する法律(祝日法)によって定められています。

    令和4年7月現在、国民の祝日は以下のとおり、年16日間です。

    国民の祝日
    • 元日(1月1日)
    • 成人の日(1月の第2月曜日)
    • 建国記念の日(2月11日)
    • 天皇誕生日(2月23日)
    • 春分の日(3月21日ごろの春分日)
    • 昭和の日(4月29日)
    • 憲法記念日(5月3日)
    • みどりの日(5月4日)
    • 海の日(7月の第3月曜日)
    • 山の日(8月11日)
    • 敬老の日(9月の第3月曜日)
    • 秋分の日(9月23日ごろの秋分日)
    • スポーツの日(10月の第2月曜日)
    • 文化の日(11月3日)
    • 勤労感謝の日(11月23日)

    国民の祝日は「休日」とされています(祝日法第3条第1項)。しかし、これは行政機関・地方公共団体・公立学校などの休日という意味であって、会社が国民の祝日を休日としなければならないわけではありません

    労働基準法との関係では、国民の祝日は会社によって、法定休日・法定外休日・労働日のいずれにも該当する可能性があります。

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2、祝日に労働した場合、残業代の計算方法は?

国民の祝日が法定休日・法定外休日・労働日のそれぞれに該当する場合について、残業代の計算方法を解説します。

なお、すべてのケースに共通して、残業代を算出する計算式は以下の通りです。

残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数


  1. (1)祝日が法定休日に当たる場合

    国民の祝日が法定休日の場合、その日の労働時間については、通常の賃金に対して35%以上の割増賃金が支払われます。

    (例)
    • 1時間当たりの基礎賃金は3000円
    • 法定休日である国民の祝日に、8時間労働した

    残業代
    =3000円×1.35×8時間
    =3万2400円
  2. (2)祝日が法定外休日に当たる場合

    国民の祝日が法定外休日の場合、その日の労働時間のうち、法定内残業に当たる部分には通常の賃金が、時間外労働に当たる部分には通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が支払われます。

    (例)
    • 1時間当たりの基礎賃金は3000円
    • 法定外休日である国民の祝日に、8時間労働した(そのうち法定内残業が4時間、時間外労働が4時間)

    残業代
    =3000円×4時間+3000円×1.25×4時間
    =2万7000円
  3. (3)祝日が労働日に当たる場合

    国民の祝日が労働日の場合、その日の労働時間のうち、所定労働時間を超える部分についてのみ残業代が発生します。

    法定内残業に当たる部分には通常の賃金が、時間外労働に当たる部分には通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が支払われる点は、法定外休日の場合と同様です。

    (例)
    • 1時間当たりの基礎賃金は3000円
    • 所定労働時間は1日7時間
    • 労働日である国民の祝日に、9時間労働した(そのうち法定内残業が1時間、時間外労働が1時間)

    残業代
    =3000円×1時間+3000円×1.25×1時間
    =6750円

3、祝日労働の残業代を計算する際のチェックポイント

祝日労働の残業代を正しく計算するには、以下のポイントに注意する必要があります。

  1. (1)1時間当たりの基礎賃金を正しく計算する

    残業代計算のベースとなる1時間当たりの基礎賃金は、すべてのケースで正確に計算しなければなりません

    「基礎賃金」とは、給与計算期間において、使用者から労働者に支払われた賃金の総額から、残業代と以下の各手当を除いた金額です。

    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    給与明細などを参考にしながら、1時間当たりの基礎賃金を正しく計算しましょう。

  2. (2)労働時間を正しく分類する

    国民の祝日に労働した場合に、残業代の発生有無および割増率は、その日が法定休日・法定外休日・労働日のどれに当たるかによって異なります。

    したがって、残業代を計算する際には、労働基準法の規定に従い、国民の祝日における労働を正しく分類することが大切です

  3. (3)従業員の就業時間を適切に管理する

    従業員が弁護士を通じて会社に対して残業代請求を行う場合、残業の証拠を十分に収集されているケースが一般的です

    従業員が提示する可能性が高い残業の証拠としては、以下の例が挙げられます。

    • タイムカードや勤怠管理システムの記録
    • 社内システムやPCのログイン、ログアウト履歴
    • オフィスの入退館履歴
    • 交通系ICカードの乗車履歴
    • タクシーの領収証
    • 業務メールの送受信履歴
    • 残業に関する指示メール
    • 残業中に作成したファイル
    • 業務日誌
    など

    証拠に基づいて未払いの残業代はないことを主張・立証できるように、普段から適切に従業員の就業時間を管理・記録しておくことが非常に重要なポイントとなります。

4、祝日労働の残業代を従業員から請求されたら

国民の祝日における労働について、従業員から会社に対して未払い残業代を請求された場合、一般的にはまず口頭などで確認があるでしょう。場合によっては、内容証明郵便が届くケースも考えられます。

いずれにしても、そのような事態になったときは、放置したり無視したりすることは悪手になります。まずこれまで適切に残業代を支払っていたかどうかについて、しっかりと確認する必要があるでしょう。残業代の計算に誤りがあった場合は、速やかに支払いをしてしまうほうがよいと考えられます。

ただし、従業員が主張する労働時間と、社内で正しく管理していた労働時間に齟齬がある場合は、まずは従業員や代理人である弁護士に対して事実をしっかり伝える必要があります。ここで納得してもらうことができれば、訴訟などの事態に進むことはありません。

なお、従業員が弁護士を通じて請求してきた場合は、会社側も弁護士を立てて対応したほうがスムーズに解決できる可能性を高めることができます。普段から弁護士と顧問契約を交わしている場合はすぐに対応してもらえるはずです。

話し合いで合意に至れない場合は、労働審判や裁判に進むことになります。そのような事態に陥ってしまうと対応の手間も大きなものとなりますし、裁判の場合、報道されてしまい、マイナスイメージを伴って社名が広まってしまう可能性も出てきます。

労働審判や民事訴訟に至ってしまいそうな可能性があるときは、速やかに弁護士に対応を依頼してください。訴訟などにより会社が受けるダメージを最小限に抑えられるような提案を行うとともに、法的に適切な結果へ導けるよう力を尽くします

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5、まとめ

国民の祝日に勤務した場合、残業代を正しく計算するには、労働基準法のルールを正確に適用しなければなりません。まずは従業員に対して適切に残業代などを支払えているかどうか、再度確認しておく必要があるでしょう。

万が一、従業員から未払い残業代の請求を受けたときは、できるだけ速やかに弁護士にご相談ください。ご事情に応じて問題解決に至れるよう力を尽くします。この場合、普段から顧問弁護士と契約していれば、事業の内容やご事情などをすでに共有できていることから、スムーズに対応してもらうことができるでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、リーズナブルな価格設定で利用できる顧問弁護士サービスを提供しています。顧問弁護士をつけるべきか悩んでいるのであれば、ぜひお問い合わせください。

万が一のときは、全国にオフィスがある強みと多くの案件を対応した知見を活かし、会社にとってもっともダメージが少ない解決策をアドバイスするだけでなく、交渉段階から対応することが可能です。まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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