企業法務コラム
取締役は、会社の基本的な経営戦略の決定や、会社運営に必要となる意思決定を行っています。
しかし、有する権限が大きいことで、取締役による不正が行われることもあります。また、不正をしていなかったとしても、その取締役に求められている能力が欠けていることもあるでしょう。
このような場合には、取締役を解任することが可能です。しかし、正当な理由なく解任をした場合には、解任された取締役から損害賠償請求を受けてしまうリスクもありますので慎重に対応を進めていかなくてはなりません。
今回は、取締役を解任する場合の手続き方法や注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
取締役の解任とはどのような手続きなのでしょうか。
また、取締役を解任した場合にはどのようなリスクが生じるのでしょうか。
以下で詳しく説明します。
取締役がその地位を失う方法としては、「解任」、「退任」、「辞任」の3つがあります。
それぞれの内容は以下のとおりです。
会社が取締役の地位を失わせたい場合は、「解任」を行うことになります。
原則として、正当な理由がなかったとしても、会社は株主総会決議を経ることで、いつでも取締役を解任することが可能です(会社法339条1項)。
しかし、取締役の解任は、取締役の意思とは無関係になされるものであることから、取締役が解任に反対している場合には、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
会社と取締役がトラブルになっている事実が顧客や取引先に知られてしまうと、会社のイメージが低下してしまい、売り上げにも影響が及ぶかもしれません。
問題社員のトラブルから、
取締役を解任する場合には、以下のような手続きが必要になります。
取締役を解任するためには、株主総会を開催して取締役の解任決議をしなくてはなりません。そのため、取締役会設置会社ではまず、株主総会の開催を決定するために取締役会の招集を行いましょう。
取締役会の招集は、取締役全員に招集通知を送付する方法で行います。解任対象となっている取締役に対しても招集通知の送付は必要です。
取締役会では、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し(定足数)、出席した取締役の過半数の賛成があれば取締役会決議が成立します。
なお、取締役の解任は、定時株主総会で行うこともできますが、次回の開催まで期間があるという場合には、臨時株主総会決議の招集を決議することになります。
取締役会で株主総会の招集決議がなされたら、株主に対して株主総会の招集通知を送付します。株主総会の開催日は、公開会社では株主総会の招集通知の発送日から14日以上、公開会社でない場合には7日以上空けなければなりません。
株主総会での取締役の解任決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権の過半数の賛成があれば成立します(普通決議)。
ただし、定款で定めがあれば、定足数を議決権の過半数から議決権の3分の1まで減少させることが可能です。
なお、株主総会決議で取締役の解任の決議案が否決されてしまったとしても、裁判所に取締役解任の訴えを提起することによって、取締役の解任ができる場合があります。
取締役の解任決議が成立した場合には、取締役の解任日の翌日から2週間以内に、管轄の法務局に対して取締役解任の登記をしなければなりません。
取締役を解任したいときは、正当な理由がないと損害賠償請求を受けるなどのリスクが生じます。そして、正当な理由については、会社側に立証責任があるため、慎重に対応していかなくてはなりません。
正当な理由による解任と認められる可能性が高いケースを、実際の裁判例とともにご紹介します。
取締役が健康上の理由で、取締役としての職責を果たすことができない状態であれば、解任をする正当な理由があると認められやすいでしょう。
取締役に法令違反や定款違反があった場合には、重大な任務違背行為として、解任をする正当な理由があると認められやすいでしょう。
取締役に不正行為や法律違反がなかったとしても、職務への著しい不適任によって会社に損害を与える可能性が高い場合には、解任をする正当な理由が認められる可能性があります。
問題社員のトラブルから、
正当な理由がない解任であった場合には、取締役から任期中に得られたはずである役員報酬相当額の損害賠償請求をされる可能性があります。
正当な理由のない解任だと認められたケースを裁判例とともに確認していきましょう。
解任によるトラブルを避けるために、任期変更・退任という方法をとったとしても、実質的にみて解任にあたる場合には、正当な理由のない解任と判断される可能性がありますので注意が必要です。
たとえ取締役が十分な成果を上げていないと認められる場合であっても、それが派閥間の対立などの取締役の能力以外の要因である場合には、解任をしたとしても正当な理由が認められない可能性があります。
取締役の解任をお考えの経営者の方は、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。
会社は株主総会決議を経ることで取締役をいつでも解任することができますが、正当な理由のない解任であった場合には、解任された取締役から損害賠償請求を受けるなどのリスクが生じてしまいます。
そのため、取締役にやめてもらうためにどのような方法を採ることが適切であるかという点について、事前に十分に検討することが必要です。
弁護士であれば、法的観点から、個々のケースに即した適切な提案をすることが可能です。
問題のある取締役を解任しようと急いで手続きをした結果、解任手続きに瑕疵が生じてしまう可能性もあります。
取締役の解任にあたっては、取締役会決議や株主総会決議といった手続きを行う必要があり、それぞれについて、会社法が定める要件を満たすことが必要となります。
万が一、解任手続きに瑕疵が生じてしまうと、解任された取締役から株主総会決議の取り消しや不存在を主張されるおそれもあります。
このような事態を回避するためにも、弁護士のサポートを受けるようにしましょう。弁護士であれば、会社法の要件に従ってスムーズに取締役の解任手続きを進めることができるようにサポートすることが可能です。
解任の手続き面で不安があるという場合にもまずは弁護士にご相談ください。
問題社員のトラブルから、
会社は、株主総会決議を経ることで、いつでも取締役を解任することができます。しかし、正当な理由なく取締役を解任してしまうと、解任された取締役から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
そのため、取締役の解任にあたっては、正当な理由があるかどうかを事前にしっかりと検討することが重要となります。
ベリーベスト法律事務所には、株主総会の運営に関する豊富なノウハウを有する弁護士が所属していますので、取締役の解任に関する適切な提案を行ったうえで、解任手続きに必要な株主総会の準備から運営までトータルにサポートすることが可能です。
また、企業運営上のリスクを少しでも軽減するためには、弁護士によるサポートが不可欠となります。そのため、まだ顧問弁護士を利用していないという場合には、ベリーベスト法律事務所の顧問弁護士サービスのご利用をご検討ください。
取締役の解任をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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