企業法務コラム

2023年06月05日
  • 定型約款

定型約款とは? 民法改正で利用規約の変更は必要? 4つのポイント

定型約款とは? 民法改正で利用規約の変更は必要? 4つのポイント

2020年4月1日に施行された改正民法により、定型約款に関する規定が新設されました。

自社サービスに関して利用規約を作成している会社のほとんどは、民法改正に伴う定型約款のルールに対応して、利用規約の見直しを行うことが必要です。顧問弁護士にご相談のうえで、できる限り早めに対応を完了するよう努めてください。

今回は定型約款について、現行民法のルールや実務上の注意点をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、定型約款とは?

「定型約款」とは、事業者が提供するサービスなどに関して、利用契約の相手方となる、すべての者との間で統一的に適用されるルールです。

不特定多数の契約相手との間で同じルールを適用し、効率的にサービスを提供することを主な目的として定型約款が作成されます。

  1. (1)定型約款の要件

    定型約款は、「定型取引」の契約内容とすることを目的として、特定の者(事業者)により準備された条項の総体を意味します(民法第548条の2第1項)。

    「定型取引」とは、以下の2つの要件を満たす取引です

    • ① 特定の者が、不特定多数の者を相手方として行う取引であること
    • ② その内容の全部または一部が画一的であることが、当事者双方にとって合理的であること

    基本的には、サービス提供者となる事業者が不特定多数の利用者との間で行う、BtoB取引またはBtoC取引が想定されています。

    このような取引では、契約内容を画一的なものとすることにより、事業者は効率的にサービスを提供できるようになります。
    その一方で、利用者は安価に便利なサービスを利用できるようになるため、「当事者双方にとって合理的」と評価できるでしょう。

  2. (2)定型約款の具体例

    定型約款の例としては、以下のようなものが挙げられます。

    定型約款の例
    • ウェブサービスの利用規約
    • 施設の利用規約
    • 保険約款
    • 電気供給約款
    • ガス供給約款
    • 運送約款
    • 工事請負契約約款
    など
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2、民法改正に伴う利用規約の変更は必要? 4つのチェックポイント

民法の定型約款の規定は、2020年4月1日施行の改正法によって新設されたルールです。
事業者は、定型約款に関するルールの新設に伴い、自社サービスの利用規約などの見直しを行うことが求められます。

具体的には、以下の4つのポイントに1つでも該当する場合には、利用規約などの見直しをご検討ください

① 利用規約を契約の内容とすることを明確に表示していない
定型約款を契約の内容とするには、少なくとも、相手方(利用者)に対してその旨を表示する必要があります。

② ユーザーの利益を一方的に害する条項が含まれている
ユーザーの利益を一方的に害する条項(不当条項)は無効となる旨が明記されたため、自社の利用規約に不当条項が含まれていないか確認し、もし含まれていれば修正すべきです。

③ 利用規約の内容の表示方法を定めていない
契約締結前後において、利用規約の内容を相手方(利用者)に表示する義務を負う場合があるので、表示方法に関するルールを定めておきましょう。

④ 利用規約の変更手続きが民法に沿っていない
事業者が一方的に利用規約を変更する場合、民法所定の手続きに従う必要があります。
利用規約に定められた変更手続きが民法に沿っていない場合には、修正しなければなりません。

これらのポイントにつき、民法改正以前からすべてクリアできている事業者は意外と多くないと思われます。
もし民法改正に対応する利用規約などの見直しが済んでいない場合は、弁護士にご相談のうえで速やかに見直しへと着手してください。

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3、定型約款を内容とする契約の成立要件

ここからは、民法上の定型約款に関するルールの内容を詳しく解説します。
まずは、定型約款を契約内容に含めるための要件を見ていきましょう。

  1. (1)定型約款を契約内容とする「みなし合意」の成立要件

    定型取引を行うことを合意した当事者の間では、以下の「いずれか」に該当する場合、定型約款全体について合意が成立したものとみなされます(民法第548条の2第1項)。

    • ① 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
    • ② 定型約款を準備した者(定型約款準備者)が、あらかじめ定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

    相手方が個々の約款条項をよく確認していなくても、定型約款全体について合意の成立を認める点が大きなポイントです

  2. (2)不当条項はみなし合意の対象外

    ただし、以下の要件を「両方」満たす定型約款の条項については、例外的に合意が成立しなかったものとみなされ、契約の内容から除外されてしまいます(民法第548条の2第2項)。

    両方の要件を満たす場合は、合意の対象外
    • ① 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であること
    • ② 定型取引の態様・実情・取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められること

    上記の要件を満たす定型約款の条項を「不当条項」と言います。
    不当条項の例は、以下のとおりです。

    不当条項の例
    • あまりにも高額の違約罰を定める条項
    • 事業者の故意または重大な過失による損害賠償責任を免除する条項
    • 不当な抱き合わせ販売を定める条項
    など

    利用規約などに不当条項が含まれていると、利用者とトラブルになった際に予想外のルールが適用されることになりかねません
    そのため、自社の利用規約全体を確認して、不当条項が含まれていれば漏れなく修正しておきましょう。

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4、事業者(定型約款準備者)には約款内容の表示義務がある

定型取引を行い、または行おうとする事業者(定型約款準備者)は、以下の「いずれか」の方法によって、相手方に定型約款の内容を示さなければなりません(民法第548条の3第1項)。

約款内容の表示方法
  • ① 相手方に対して、定型約款を記載した書面を交付する
  • ② 相手方に対して、定型約款を記録した電磁的記録を提供する
  • ③ 定型取引合意の前、または定型取引合意の後相当の期間内における相手方の請求を受けて、遅滞なく相当な方法で定型約款の内容を表示する

②を採用する場合
基本的には①または②の方法が無難といえます
契約締結の段階であらかじめ定型約款を相手方に表示すれば、相手方から表示の請求をしたのに表示をされていないなどと詰め寄られる恐れを排除できるためです。

③を採用する場合
もし③の方法を採用する場合には、定型約款において表示方法に関するルールを定めておきましょう

表示義務の違反に要注意
事業者が上記の表示義務に正当な理由なく違反した場合、定型約款についてのみなし合意が成立しなくなってしまうのでご注意ください。

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5、定型取引の契約は、企業が一方的に変更できる場合がある

定型取引の契約は、定型約款を変更することにより、事業者が一方的に変更できる場合があります。
改正民法の施行以前に成立した定型取引の契約も、定型約款の変更によって内容を変更することが可能です。

ただし、変更手続きは民法のルールに従う必要があるため、利用規約に定められた変更手続きを民法に沿った形へと改定しましょう。

  1. (1)定型取引の契約を一方的に変更するための要件

    定型約款の変更により、定型取引の契約内容を変更できるのは、以下の「いずれか」の要件を満たす場合です(民法第548条の4第1項)。

    変更するための要件
    • ① 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
    • ② 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ変更に係る以下の事情に照らして合理的なものであるとき
    • 変更の必要性
    • 変更後の内容の相当性
    • 民法第548条の4の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無、内容
    など

    特に②の不利益変更については、「民法第548条の4の規定により定型約款の変更をすることがある旨」を、利用規約などに明記しておくことが重要です

  2. (2)定型取引の契約を一方的に変更する手続き

    事業者が、定型約款の変更によって定型取引の契約内容を変更する場合には、以下の手続きを取る必要があります(民法第548条の4第2項)。

    変更する手続き
    • ① 変更の効力発生時期を定める
    • ② 定型約款を変更する旨、変更後の定型約款の内容、効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知する

    効力発生時期が到来するまでに、適切な期間を設けて周知を行わなければ、契約変更の効力が発生しない点にご注意ください(同条第3項)。

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6、定型約款の作成・変更等は、顧問弁護士にご相談を

自社サービスについて約款取引を行う事業者は、民法の定型約款に関するルールへの対応が求められます。
定型約款のルールには専門的な部分が多く、かつ不特定多数の利用者との取引に影響するため、顧問弁護士にアドバイスを求めながら対応するのがおすすめです。

弁護士は、民法の定型約款のルールを踏まえつつ、利用規約の内容を隅々までチェックし、利用者とのトラブルのリスクをできる限り低減できるようにサポートいたします。
利用規約などの定型約款の作成・変更を行う際には、弁護士との顧問契約をご検討ください

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7、まとめ

民法改正によって新設された定型約款の規定については、多くの企業で対応未了となっている状況です。
見直しに関する4つのチェックポイントを確認して、まだ利用規約などの必要な見直しが済んでいないようであれば、弁護士のサポートを受けながら改定作業に着手することをおすすめいたします

ベリーベスト法律事務所は、事業者を日常的にサポートする顧問弁護士サービスをご提供しております。
定型約款に関する利用規約の見直しなどについても、企業法務に関する経験を豊富に有する弁護士がご対応いたしますので、安心してお任せいただけます。

事業に関する日常的なお悩みを相談できる顧問弁護士をお探しの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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