企業法務コラム

2023年05月25日
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法定休日と所定休日の違いは? 休日の定め方と残業代計算について

法定休日と所定休日の違いは? 休日の定め方と残業代計算について

会社の休日は「法定休日」と「所定休日(法定外休日)」の2種類に分類され、それぞれ適用される割増賃金率(割増率)が異なります。

法定休日と所定休日を区別することを含めて、会社は従業員の休日出勤を適切に管理することが大切です。

今回は、法定休日と所定休日の違いや残業代の計算方法、労働契約における休日の定め方、休日出勤を指示する場合に会社が注意すべきポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、法定休日と所定休日の違い

会社の休日には「法定休日」と「所定休日」の2種類があり、両者の間では割増賃金率に違いがあります。

  1. (1)法定休日・所定休日の定義

    • 「法定休日」とは?
    • 「法定休日」とは、労働基準法第35条に基づいて、使用者が労働者に与えなければならない休日です。原則として、1週間ごとに1日の法定休日が付与されます(同法同条1項)。

    • 「所定休日」とは?
    • 「所定休日」とは、法定休日を除く休日です。
      労働基準法上の義務ではありませんが、従業員との労働契約に基づき、会社は個別に所定休日を設定することができます。
  2. (2)法定休日と所定休日では割増賃金率が異なる

    法定休日と所定休日では、休日に働いた場合に適用される割増賃金率が異なります。

    • 「法定休日」の場合
    • 法定休日に働いた場合は「休日労働」の扱いとなるため、割増賃金率は通常の賃金に対して35%以上です(労働基準法第37条第1項、労働基準法第37条第1項の時間外および休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

    • 「所定休日」の場合
    • これに対して、所定休日に働いた場合は「時間外労働(=法定労働時間を超える労働)」の扱いとなるため、割増賃金率は原則として、通常の賃金に対して25%以上です。

      ただし、大企業では、月60時間を超える部分の時間外労働については、割増賃金率が通常の賃金に対して50%以上に引き上げられます。中小企業でも2023年4月以降は同様です。
  3. (3)週休2日以上の場合、法定休日・所定休日はどのように決まる?

    週休2日以上の会社の場合、休日のうちいずれか1日だけが法定休日、それ以外の休日が所定休日となります

    法定休日に当たる日は、就業規則または労働契約の定めがあれば、その定めに従って決定されます。

    これに対して、就業規則・労働契約の定めがない場合は、日曜から土曜を1週間として、もっとも後に位置する土曜日を法定休日として扱うというのが行政解釈です(※1)。
    他方、日曜日を法定休日と解釈した裁判例もあります(※2)。

    このとおり、休日のうちいずれの日が法定休日かについて争いになる可能性がありますので、事前に労働契約書や就業規則おいて定めることが望ましいでしょう。

    (例)
    土曜・日曜が休みで、法定休日に関する定めがない場合
    →土曜が法定休日

    ※1:厚労省 改正労働基準法に係る質疑応答(平21.10.5)A10参照
    ※2:東京地判 平成23年12月27日 労判1044号5頁

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2、労働契約における休日の定め方

会社が従業員と締結する労働契約の中で休日を定める際には、労働基準法のルールを順守する必要があります。

  1. (1)原則として週休1日以上は必須|起算日は会社が決められる

    労働基準法第35条に基づき、会社は従業員に対して必ず法定休日を付与しなければなりません。法定休日は原則として週1日なので(同条第1項)、必ず週休1日以上を確保してください。

    なお1週間の起算日は、就業規則などによって会社が定めることができます。

    (例)
    月曜を起算日として、月曜から日曜の1週間ごとに1日の法定休日を付与する場合
    →2022年8月22日(月)に法定休日を付与した後、次の法定休日を2022年9月4日(日)に設定してもOK(最長12連勤)

    また、週1日の法定休日を与える方法に代えて、4週間を通じて4日以上の法定休日を与えることも認められます(同条第2項)。

  2. (2)週休2日以上とする場合、法定休日を就業規則などで特定することが望ましい

    従業員に対して休日を週2日以上与える場合、そのうちいずれか1日のみが法定休日となります

    前述のとおり、就業規則や労働契約で法定休日を特定せずとも、一定のルールに従って法定休日は定まります。また、会社としても、法定休日を特定することが法律上義務付けられているわけではありません。

    ただし、法定休日と所定休日の区別は、残業代計算の結果に直接影響します
    そのため、疑義がないように、就業規則等で法定休日を特定することが望ましいでしょう。

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3、法定休日・所定休日に働いた場合の残業代計算

法定休日・所定休日に働いた場合の残業代につき、割増賃金率の違いを踏まえながら計算方法を解説します。

なお、休日出勤の代わりに振替休日や代休を取得した場合には、残業代の計算方法に変化が生じる点に注意が必要です。
振替休日・代休の違いとともに、こちらも計算方法を解説します。

  1. (1)法定休日に働いた場合の残業代計算

    法定休日に働いた場合、35%以上の割増賃金率を適用して残業代を計算します。

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×135%×法定休日の労働時間数
    ※1時間当たりの基礎賃金:残業代や賞与などを除いた給与計算期間前3か月間の総賃金額を、月平均所定労働時間で割った金額
    設例1
    • 1時間当たりの基礎賃金は2000円
    • 法定休日に8時間労働した

    残業代の計算
    =2000円×135%×8時間
    =2万1600円
  2. (2)所定休日に働いた場合の残業代計算

    所定休日に働いた場合、25%以上の割増賃金率を適用して残業代を計算します。
    ただし、大企業では、月60時間を超える部分は50%以上です。中小企業でも2023年4月以降は同様です。

    残業代=1時間当たりの基礎賃金×125%×所定休日の労働時間数
    設例2
    • 1時間当たりの基礎賃金は2000円
    • 所定休日に8時間労働した
    • 中小企業

    残業代の計算
    =2000円×125%×8時間
    =2万円
  3. (3)振替休日を取得した場合の残業代計算

    「振替休日」とは、労働日と法定休日をあらかじめ振り替えた結果、休日となった日のことです。

    労働日と法定休日を振り替えた場合、働いた日は休日労働の扱いとならず、平日に働いた扱いとなります。そのため、追加で賃金の支払いが必要になることもなく、割増賃金が生じることもありません。

    ただし、時間外労働をした場合は、その残業時間分、125%の割増賃金を支払う必要があります。

    設例3
    • 1時間当たりの基礎賃金は2000円
    • 所定労働時間は1日8時間
    • 土日が休日の会社
    • 法定休日と労働日をあらかじめ振り替えた(土曜日と前日の金曜日を入れ替え)
    • 振り替えた日に9時間働いた(時間外労働1時間)

    時間内労働8時間
    振替前と後で生じる賃金は変わらないので、追加で支払う必要はない。
    • 振替前のトータル賃金……1万6000円(2000円×8時間)
    • もともと法定休日だった日の労働に係る賃金……1万6000円(2000円×8時間)
    • 振替休日の賃金……無給

    時間外労働1時間
    割増賃金125%を支払う必要がある。
    基礎賃金2000円×125%×1時間=2500円

    追加で支払う金額
    2500円

    なお、振替休日が週をまたいでしまった場合は、割増賃金が必要になるため、注意が必要です。詳しくは、以下のコラムをご確認ください。

  4. (4)代休を取得した場合の残業代計算

    「代休」とは、法定休日に労働した代わりに、事後的に休日とされた労働日のことです。
    あらかじめ振り替えが行われる振替休日とは異なり、休日労働が行われた後で代休日が指定されます。

    代休の場合、振替休日とは違って、法定休日の労働は休日労働扱いとなり、割増賃金で残業代を支払う必要があります代休日は無給です

    設例4
    • 1時間当たりの基礎賃金は2000円
    • 所定労働時間は1日8時間
    • 法定休日に9時間労働した後、別の労働日を代休とした

    時間内労働8時間
    • 通常の労働日の賃金……1万6000円(2000円×8時間)
    • 法定休日の労働に係る賃金……2万1600円(2000円×135%×8時間)
    • 代休日の賃金……無給
    実務上、追加で支払う金額は、差額の5600円(2万1600円-1万6000円)

    時間外労働1時間
    割増賃金135%を支払う必要がある。
    基礎賃金2000円×135%×1時間=2700円

    実務上、追加で支払う金額
    5600円+2700円=8300円

4、休日出勤を指示する場合に会社が注意すべきポイント

従業員に対して休日出勤を指示する場合、会社は労働基準法のルールや従業員の健康などに配慮する必要があります。

  1. (1)休日出勤させるには36協定の締結が必要

    従業員に対して休日労働を指示するには、会社は労働組合などとの間で労使協定(36協定)を締結しなければなりません。
    また、休日労働の指示は、36協定のルールの範囲内でのみ行うことができます。

    まだ36協定が締結されていない場合には、休日労働を指示すると違法になりますので、先に36協定の締結に関する労使交渉を行いましょう。
    36協定を締結している場合でも、休日労働を指示する前に、協定の内容を確認する必要があります。

  2. (2)法定休日と所定休日の区別を正確に

    法定休日と所定休日を正しく区別せず、その結果として間違った方法で残業代を計算している例が後を絶ちません。

    法定休日に働いた場合は休日労働(35%以上)、所定休日に働いた場合は時間外労働(25%以上)になることを踏まえて、残業代の計算・支払いを正しく行ってください

  3. (3)過重労働にならないように注意|労働時間の管理を

    従業員に休日労働を行わせた場合、1週間・1か月当たりの労働時間が長くなったり、連勤が続いたりするなど、過重労働のリスクが発生します。

    過重労働は、従業員の仕事に対する意欲と体力を奪うほか、健康を害する労災にもつながりかねません
    会社が従業員に休日労働を指示する場合は、併せて労働時間の管理を徹底して、過重労働が発生しないように注意を払いましょう。

5、休日労働の管理・残業代請求に関するトラブルは弁護士にご相談を

休日労働に関するルール作りや労務管理については、弁護士へのご相談をおすすめいたします。弁護士のアドバイスを踏まえて、労働基準法に沿い、かつ従業員の健康にも十分配慮されたルールを策定することが、従業員とのトラブル回避につながります

また、休日労働を巡って、残業代請求などのトラブルに発展し、労働審判や訴訟となるリスクもあります。そのような場合も、迅速な対応が必要となるのでお早めに弁護士までご相談ください。

会社にとっての被害を最小限に食い止めるため、早期・円満なトラブルの解決を目指します。

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6、まとめ

法定休日と所定休日では、残業代計算の際に適用される割増賃金率が異なります。
会社としては、法定休日と所定休日を正しく区別して、適正な労務管理を行うことが大切です。

従業員に休日出勤を指示する場合、36協定の締結・残業代計算・従業員の健康管理など、会社として取り組むべき課題がいくつも存在します。
ベリーベスト法律事務所は、クライアント企業の状況を踏まえて、休日出勤のルール作りを含めたより良い労務管理の方法をご提案いたします

休日出勤に関する労務管理にお悩みの企業経営者・担当者は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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