企業法務コラム
会社の休日は「法定休日」と「所定休日(法定外休日)」の2種類に分類され、それぞれ適用される割増賃金率(割増率)が異なります。
法定休日と所定休日を区別することを含めて、会社は従業員の休日出勤を適切に管理することが大切です。
今回は、法定休日と所定休日の違いや残業代の計算方法、労働契約における休日の定め方、休日出勤を指示する場合に会社が注意すべきポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
会社の休日には「法定休日」と「所定休日」の2種類があり、両者の間では割増賃金率に違いがあります。
法定休日と所定休日では、休日に働いた場合に適用される割増賃金率が異なります。
週休2日以上の会社の場合、休日のうちいずれか1日だけが法定休日、それ以外の休日が所定休日となります。
法定休日に当たる日は、就業規則または労働契約の定めがあれば、その定めに従って決定されます。
これに対して、就業規則・労働契約の定めがない場合は、日曜から土曜を1週間として、もっとも後に位置する土曜日を法定休日として扱うというのが行政解釈です(※1)。
他方、日曜日を法定休日と解釈した裁判例もあります(※2)。
このとおり、休日のうちいずれの日が法定休日かについて争いになる可能性がありますので、事前に労働契約書や就業規則おいて定めることが望ましいでしょう。
※1:厚労省 改正労働基準法に係る質疑応答(平21.10.5)A10参照
※2:東京地判 平成23年12月27日 労判1044号5頁
問題社員のトラブルから、
会社が従業員と締結する労働契約の中で休日を定める際には、労働基準法のルールを順守する必要があります。
労働基準法第35条に基づき、会社は従業員に対して必ず法定休日を付与しなければなりません。法定休日は原則として週1日なので(同条第1項)、必ず週休1日以上を確保してください。
なお1週間の起算日は、就業規則などによって会社が定めることができます。
また、週1日の法定休日を与える方法に代えて、4週間を通じて4日以上の法定休日を与えることも認められます(同条第2項)。
従業員に対して休日を週2日以上与える場合、そのうちいずれか1日のみが法定休日となります。
前述のとおり、就業規則や労働契約で法定休日を特定せずとも、一定のルールに従って法定休日は定まります。また、会社としても、法定休日を特定することが法律上義務付けられているわけではありません。
ただし、法定休日と所定休日の区別は、残業代計算の結果に直接影響します。
そのため、疑義がないように、就業規則等で法定休日を特定することが望ましいでしょう。
問題社員のトラブルから、
法定休日・所定休日に働いた場合の残業代につき、割増賃金率の違いを踏まえながら計算方法を解説します。
なお、休日出勤の代わりに振替休日や代休を取得した場合には、残業代の計算方法に変化が生じる点に注意が必要です。
振替休日・代休の違いとともに、こちらも計算方法を解説します。
法定休日に働いた場合、35%以上の割増賃金率を適用して残業代を計算します。
所定休日に働いた場合、25%以上の割増賃金率を適用して残業代を計算します。
ただし、大企業では、月60時間を超える部分は50%以上です。中小企業でも2023年4月以降は同様です。
「振替休日」とは、労働日と法定休日をあらかじめ振り替えた結果、休日となった日のことです。
労働日と法定休日を振り替えた場合、働いた日は休日労働の扱いとならず、平日に働いた扱いとなります。そのため、追加で賃金の支払いが必要になることもなく、割増賃金が生じることもありません。
ただし、時間外労働をした場合は、その残業時間分、125%の割増賃金を支払う必要があります。
なお、振替休日が週をまたいでしまった場合は、割増賃金が必要になるため、注意が必要です。詳しくは、以下のコラムをご確認ください。
「代休」とは、法定休日に労働した代わりに、事後的に休日とされた労働日のことです。
あらかじめ振り替えが行われる振替休日とは異なり、休日労働が行われた後で代休日が指定されます。
代休の場合、振替休日とは違って、法定休日の労働は休日労働扱いとなり、割増賃金で残業代を支払う必要があります。代休日は無給です。
従業員に対して休日出勤を指示する場合、会社は労働基準法のルールや従業員の健康などに配慮する必要があります。
従業員に対して休日労働を指示するには、会社は労働組合などとの間で労使協定(36協定)を締結しなければなりません。
また、休日労働の指示は、36協定のルールの範囲内でのみ行うことができます。
まだ36協定が締結されていない場合には、休日労働を指示すると違法になりますので、先に36協定の締結に関する労使交渉を行いましょう。
36協定を締結している場合でも、休日労働を指示する前に、協定の内容を確認する必要があります。
法定休日と所定休日を正しく区別せず、その結果として間違った方法で残業代を計算している例が後を絶ちません。
法定休日に働いた場合は休日労働(35%以上)、所定休日に働いた場合は時間外労働(25%以上)になることを踏まえて、残業代の計算・支払いを正しく行ってください。
従業員に休日労働を行わせた場合、1週間・1か月当たりの労働時間が長くなったり、連勤が続いたりするなど、過重労働のリスクが発生します。
過重労働は、従業員の仕事に対する意欲と体力を奪うほか、健康を害する労災にもつながりかねません。
会社が従業員に休日労働を指示する場合は、併せて労働時間の管理を徹底して、過重労働が発生しないように注意を払いましょう。
休日労働に関するルール作りや労務管理については、弁護士へのご相談をおすすめいたします。弁護士のアドバイスを踏まえて、労働基準法に沿い、かつ従業員の健康にも十分配慮されたルールを策定することが、従業員とのトラブル回避につながります。
また、休日労働を巡って、残業代請求などのトラブルに発展し、労働審判や訴訟となるリスクもあります。そのような場合も、迅速な対応が必要となるのでお早めに弁護士までご相談ください。
会社にとっての被害を最小限に食い止めるため、早期・円満なトラブルの解決を目指します。
問題社員のトラブルから、
法定休日と所定休日では、残業代計算の際に適用される割増賃金率が異なります。
会社としては、法定休日と所定休日を正しく区別して、適正な労務管理を行うことが大切です。
従業員に休日出勤を指示する場合、36協定の締結・残業代計算・従業員の健康管理など、会社として取り組むべき課題がいくつも存在します。
ベリーベスト法律事務所は、クライアント企業の状況を踏まえて、休日出勤のルール作りを含めたより良い労務管理の方法をご提案いたします。
休日出勤に関する労務管理にお悩みの企業経営者・担当者は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
多くの企業では、労働者の採用時に試用期間を設けています。試用期間は、企業が労働者の能力・適性を見極めるための期間ですが、元々の期間だけでは本採用をするかどうか判断できないこともあります。そのような場…
労働基準法は、労働条件に関する最低限の基準を定めた法律です。労働者を雇用する企業としては、労働基準法が定めるさまざまなルールをしっかりと押さえておかなければ、罰則などのペナルティーを受けるおそれがあ…
会社には、人事権があります。そのため、従業員の配置転換や昇格・降格などの人事を自由に行うことが可能です。しかし、気に入らない従業員がいるからといって、正当な理由もないのに配置転換や降格などを行うと、…
お問い合わせ・資料請求