企業法務コラム
従業員の過重労働が常態化すると、離職率や労災リスクが上昇し、会社にとってトラブルの原因になりかねません。
労働基準法では、時間外労働の上限が定められており、その上限を超過している場合には過重労働と考えるべきでしょう。従業員とのトラブルを防ぐため、過重労働状態は早期に解消しなければなりません。
今回は、従業員の過重労働に関する労働基準法のルールやリスク、対策例などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
まずは、過重労働の判断基準・原因・リスクについて、基本的な考え方を解説します。
「過重労働」とは何かについて、明確な定義はありませんが、おおむね以下の3つの基準を念頭に判断するのがよいでしょう。
一般的に、長時間労働は「長い時間の残業・勤務」を指しますが、過重労働の場合は、長時間労働だけでなく、上記①の考え方のように、仕事の「質」が従業員の能力や耐性に見合っているかどうかも含めて、従業員への負荷が考慮されている言葉ととらえられるでしょう。
過重労働が発生する原因はさまざまですが、たとえば以下のような状況がある場合には、過重労働が発生しうるでしょう。
過重労働を発生させないためにも、普段から社内の職場環境を見直し、改善を行うことが大切です。
問題社員のトラブルから、
労働基準法では、時間外労働の限度時間が設けられています。
会社が従業員に残業を指示する場合には、最低限労働基準法のルールを遵守しなければなりません。
労働基準法第32条は、1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超えて従業員を働かせることを原則禁止しています。
ただし、労使協定、いわゆる36協定で時間外労働を許容する定めがあれば、その範囲内で従業員に残業を指示することが認められます(同法第36条第1項)。
そして36協定では、時間外労働の限度時間を定める必要があります(同条第2項第4号)。
会社は従業員に対して、限度時間を超える残業を指示することはできません。
36協定で定める時間外労働の限度時間は、原則として月45時間・年360時間以内とする必要があります(労働基準法第36条第4項)。
たとえ労働者側が同意していたとしても、月45時間・年360時間を超える限度時間の定めは原則無効となるため、注意が必要です。
ただし36協定では、予期していなかった業務量の大幅な増加などの特別な事情があれば、臨時的に限度時間を超えて労働させることができる「特別条項」を定めることが認められます(労働基準法第36条第5項、第6項)。
特別条項によって認められる時間外労働には、一部の業種を除き、以下の制限が適用されます。
労働基準法によって認められている時間数を超えて、従業員に時間外労働をさせた者に対しては、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法第119条第1号)。
また、事業者の代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯し、かつ事業者が違反防止に必要な措置を講じていなかった場合には、事業者にも30万円以下の罰金が科されます(同法第121条第1項)。
会社としては、従業員の過重労働を未然に防ぐため、以下の対策を講じておくことをおすすめいたします。
過重労働を防ぐためには、第一に、会社が適切に従業員の業務量を調整することが大切です。
また事業者には、従業員の労働時間を、タイムカードなどの客観的な方法により把握する義務も課されています(労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3)
実際に従業員がどのような業務を抱えているのか、どの程度の時間働いているのかを正しく把握したうえで、一部の従業員に負担が集中しないように取り計らいましょう。
業務の負担に対して配置人数が不十分な部署や、業務内容に不向きな従業員が配置されている部署では、過重労働になってしまう可能性が高まります。
そのため、各部署の業務内容・業務量を分析したうえで、それをきちんと処理できるだけの従業員を適材適所に配置することが必要です。
労働時間の長い従業員を高く評価するような人事・評価システムは、過重労働を助長してしまう面があります。
単に労働時間のみで評価するのではなく、業務の効率化や部署全体での残業時間抑制などを評価項目に加え、従業員に対して過重労働を避けることへのインセンティブを与えるのがよいでしょう。
従業員の間では、過重労働の健康リスクに対する正しい理解が浸透していない可能性があります。
自分自身や同僚・部下の過重労働に対して危機意識を持たせるためにも、過重労働のリスクに関する従業員研修を定期的に実施することをおすすめいたします。
過重労働をはじめとして、労働問題への対応にお悩みの会社は、弁護士と顧問契約してアドバイスを求めることをおすすめいたします。
会社にとって、労働基準法など労働法を遵守することは、コンプライアンスの観点から非常に重要です。
顧問弁護士がいれば、日常的な業務運営の中で労働法違反が発生しないように、会社が注意すべきポイントについて、いつでもアドバイスを受けられます。
従業員の過重労働を防ぐためには、労働法のルールをただ表面的に守るだけでなく、会社の実態に合った適切な組織・制度を整備することが大切です。
弁護士は、会社の経営者・担当者としっかりとコミュニケーションを取りながら、よりよい労働環境づくりをサポートいたします。
労働問題の解決・改善を実施したいときは、お早めに弁護士までご相談ください。
問題社員のトラブルから、
過重労働を防ぐためには、労働基準法などの法令を遵守しつつ、会社の実情に合った適切な対策を講ずることが必要です。
弁護士と顧問契約することで、過重労働問題を解決できる組織・制度づくりについて、日常の業務レベルでいつでもアドバイスを受けられます。
従業員とのトラブルを防ぎたい場合には、弁護士との顧問契約をご検討ください。
ベリーベスト法律事務所では、労務管理・労働問題や、企業の顧問契約に関するご相談を随時受け付けております。
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