企業法務コラム

2023年06月12日
  • 過重労働
  • 労働基準法

過重労働とは? リスクや罰則・企業ができる改善策を解説

過重労働とは? リスクや罰則・企業ができる改善策を解説

従業員の過重労働が常態化すると、離職率や労災リスクが上昇し、会社にとってトラブルの原因になりかねません。

労働基準法では、時間外労働の上限が定められており、その上限を超過している場合には過重労働と考えるべきでしょう。従業員とのトラブルを防ぐため、過重労働状態は早期に解消しなければなりません。

今回は、従業員の過重労働に関する労働基準法のルールやリスク、対策例などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、過重労働とは

まずは、過重労働の判断基準・原因・リスクについて、基本的な考え方を解説します。

  1. (1)過重労働に定義はあるのか

    「過重労働」とは何かについて、明確な定義はありませんが、おおむね以下の3つの基準を念頭に判断するのがよいでしょう。

    ① 従業員の能力・耐性
    従業員に対してどの程度の仕事を与えるかは、個々の能力や耐性に応じて判断しなければなりません。
    従業員の能力や、耐性を超える質・量の仕事が課されている状態は、過重労働といえるでしょう。

    ② 労働基準法の上限
    後述のとおり、労働基準法では時間外労働の限度時間(上限)が設けられています。
    労働基準法の上限を超える時間外労働が行われている状態は違法であり、過重労働に該当するでしょう。

    ③ 過労死ライン
    厚生労働省は、脳・心臓疾患に関する労災認定基準を公表しています。
    同基準において、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされる、長時間労働の時間数は通称「過労死ライン」と呼ばれており、それを超える場合には明確な過重労働といえるでしょう。
    過労死ラインは、時間外労働(1週間当たり40時間を超える労働)が1か月間に100時間、2~6か月間の平均80時間を超える場合に該当するものとされています。

    ※参考:血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について(厚生労働省)

    一般的に、長時間労働は「長い時間の残業・勤務」を指しますが、過重労働の場合は、長時間労働だけでなく、上記①の考え方のように、仕事の「質」が従業員の能力や耐性に見合っているかどうかも含めて、従業員への負荷が考慮されている言葉ととらえられるでしょう。

  2. (2)過重労働の原因になり得る状況の例

    過重労働が発生する原因はさまざまですが、たとえば以下のような状況がある場合には、過重労働が発生しうるでしょう。

    • 部署に人手が足りない
    • 一部の従業員に仕事が偏っている
    • 従業員間のフォロー体制が整っていない
    • 業務状況について相談しにくい雰囲気がある
    など

    過重労働を発生させないためにも、普段から社内の職場環境を見直し、改善を行うことが大切です。

  3. (3)従業員に過重労働をさせた場合のリスク

    ① 従業員の心身の健康を害する
    従業員の過重労働を放置していると、日々の業務に耐えかねた従業員が離職したり、心身の健康を害してしまったりするリスクがあります。
    貴重な従業員が離脱してしまうのは、会社にとって大きな痛手となるでしょう。

    ② 損害賠償請求される可能性
    また、過重労働を放置したことについて、従業員から労働基準法違反で訴えられたり、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)で損害賠償請求される可能性もあります。
    従業員とのトラブルを防ぐためにも、会社は過重労働の問題を一刻も早く解決しなければなりません。
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2、労働基準法における時間外労働の上限・違反時の罰則

労働基準法では、時間外労働の限度時間が設けられています。
会社が従業員に残業を指示する場合には、最低限労働基準法のルールを遵守しなければなりません。

  1. (1)時間外労働を行わせる場合は36協定が必須

    労働基準法第32条は、1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超えて従業員を働かせることを原則禁止しています。

    ただし、労使協定、いわゆる36協定で時間外労働を許容する定めがあれば、その範囲内で従業員に残業を指示することが認められます(同法第36条第1項)。

    そして36協定では、時間外労働の限度時間を定める必要があります(同条第2項第4号)。
    会社は従業員に対して、限度時間を超える残業を指示することはできません

  2. (2)原則として月45時間・年360時間以内でなければならない

    36協定で定める時間外労働の限度時間は、原則として月45時間・年360時間以内とする必要があります(労働基準法第36条第4項)。

    たとえ労働者側が同意していたとしても、月45時間・年360時間を超える限度時間の定めは原則無効となるため、注意が必要です。

  3. (3)36協定で特別条項を定めた場合の取り扱い

    ただし36協定では、予期していなかった業務量の大幅な増加などの特別な事情があれば、臨時的に限度時間を超えて労働させることができる「特別条項」を定めることが認められます(労働基準法第36条第5項、第6項)。

    特別条項によって認められる時間外労働には、一部の業種を除き、以下の制限が適用されます。

    特別条項によって認められる時間外労働の制限
    • 1年につき720時間以内
    • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」がすべて1か月当たり80時間以内
    • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、1年につき6か月以内
    • 坑内労働などの健康上特に有害な業務については、1日当たり2時間以内
  4. (4)時間外労働の上限に違反した場合の罰則

    労働基準法によって認められている時間数を超えて、従業員に時間外労働をさせた者に対しては、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法第119条第1号)。

    また、事業者の代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯し、かつ事業者が違反防止に必要な措置を講じていなかった場合には、事業者にも30万円以下の罰金が科されます(同法第121条第1項)。

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3、企業がとるべき過重労働対策例

会社としては、従業員の過重労働を未然に防ぐため、以下の対策を講じておくことをおすすめいたします。

  1. (1)従業員の業務状況の把握・労働時間の管理

    過重労働を防ぐためには、第一に、会社が適切に従業員の業務量を調整することが大切です。
    また事業者には、従業員の労働時間を、タイムカードなどの客観的な方法により把握する義務も課されています(労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3)

    実際に従業員がどのような業務を抱えているのか、どの程度の時間働いているのかを正しく把握したうえで、一部の従業員に負担が集中しないように取り計らいましょう。

  2. (2)人員の適切な配置

    業務の負担に対して配置人数が不十分な部署や、業務内容に不向きな従業員が配置されている部署では、過重労働になってしまう可能性が高まります。

    そのため、各部署の業務内容・業務量を分析したうえで、それをきちんと処理できるだけの従業員を適材適所に配置することが必要です。

  3. (3)人事・評価システムの見直し

    労働時間の長い従業員を高く評価するような人事・評価システムは、過重労働を助長してしまう面があります。

    単に労働時間のみで評価するのではなく、業務の効率化や部署全体での残業時間抑制などを評価項目に加え、従業員に対して過重労働を避けることへのインセンティブを与えるのがよいでしょう。

  4. (4)過重労働のリスクに関する従業員研修

    従業員の間では、過重労働の健康リスクに対する正しい理解が浸透していない可能性があります。

    自分自身や同僚・部下の過重労働に対して危機意識を持たせるためにも、過重労働のリスクに関する従業員研修を定期的に実施することをおすすめいたします。

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4、企業が労働問題について顧問弁護士に相談するメリット

過重労働をはじめとして、労働問題への対応にお悩みの会社は、弁護士と顧問契約してアドバイスを求めることをおすすめいたします。

  1. (1)労働法を踏まえたアドバイスを受けられる

    会社にとって、労働基準法など労働法を遵守することは、コンプライアンスの観点から非常に重要です。

    顧問弁護士がいれば、日常的な業務運営の中で労働法違反が発生しないように、会社が注意すべきポイントについて、いつでもアドバイスを受けられます

  2. (2)過重労働を防ぐための組織・制度づくりをサポートしてもらえる

    従業員の過重労働を防ぐためには、労働法のルールをただ表面的に守るだけでなく、会社の実態に合った適切な組織・制度を整備することが大切です。

    弁護士は、会社の経営者・担当者としっかりとコミュニケーションを取りながら、よりよい労働環境づくりをサポートいたします
    労働問題の解決・改善を実施したいときは、お早めに弁護士までご相談ください。

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5、まとめ

過重労働を防ぐためには、労働基準法などの法令を遵守しつつ、会社の実情に合った適切な対策を講ずることが必要です。

弁護士と顧問契約することで、過重労働問題を解決できる組織・制度づくりについて、日常の業務レベルでいつでもアドバイスを受けられます
従業員とのトラブルを防ぎたい場合には、弁護士との顧問契約をご検討ください

ベリーベスト法律事務所では、労務管理・労働問題や、企業の顧問契約に関するご相談を随時受け付けております。
常態化する過重労働問題を一日も早く解決したい企業経営者・担当者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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