企業法務コラム
労働安全衛生法は、職場での労働者の安全・健康の確保と快適な職場環境形成の促進を目的とした法律です。労働安全衛生法では、労働者が安全かつ快適な環境で働くことができるように労働災害防止基準や企業が対応すべき具体的な措置などが定められています。
したがって、企業としては、労働安全衛生法の内容を理解した上で、しっかりと対応してくことが大切です。本コラムでは、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、労働安全衛生法について企業が熟知すべき重要ポイントをわかりやすく解説します。
労働安全衛生法とは、どのような法律なのでしょうか。
以下では、労働安全衛生法の概要についてわかりやすく説明します。
労働安全衛生法とは、労働者の健康・安全の確保や快適な職場環境形成の促進を目的する法律です。
労働者が安全・快適に働くことができる環境の整備は、事業主の役割となります。
したがって、労働安全衛生法では、事業主が適切な役割を果たすことができるようにさまざまな規制を行っています。
労働安全衛生法と混同しやすい法律として労働基準法があります。
労働安全衛生法と労働基準法では、その目的や内容が異なりますので、事業者としては、両者の違いを正しく理解しておかなければなりません。
たとえば、労働基準法では、法定労働時間や休日労働、割増賃金などの規制の適用をうけない管理監督者についても、過重労働を抑制するために、労働安全衛生法では、健康管理の面から客観的記録による労働時間の把握が求められています。
労働安全衛生法は、昭和47年に制定された法律です。
時代の変化とともに労働者の働き方も多様化していますので、労働者の安全や健康を確保するためには、常に最新の状況に合わせた対策を講じていく必要があります。
そのため、労働安全衛生法は、現状に合わせて頻繁に法改正や新たな制度の創設が行われています。企業としては、常に最新の改正状況を踏まえた対策を検討していかなければなりません。
問題社員のトラブルから、
労働安全衛生法では、どのような事業者・労働者が対象とされているのでしょうか。
正社員だけでなく、非正規雇用も対象
労働安全衛生法における労働者とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用されて賃金を得ている人のことをいい、労働基準法における労働者の定義を準用しています。
正社員だけではなく、パート、アルバイトなど非正規雇用労働者についても対象に含まれます。
対象外となる労働者
ただし、以下については、労働安全衛生法の労働者には含まれません。
労働安全衛生法における事業者とは、事業を行う者で、労働者を使用するもののことをいい、法人企業であれば当該法人(法人の代表者ではない。)、個人企業であれば事業経営主を指してます。
このような定義から、労働者を雇うほぼすべての企業や個人が労働安全衛生法の事業者に含まれるといえるでしょう。
同居親族のみで経営される事業所に雇用されている人や家事使用人以外にも、労働安全衛生法が適用されないケースがあります。
具体的には、以下のような労働者が、労働安全衛生法の一部または全部が適用除外の対象です。
労働安全衛生法に関して、企業が対応すべきポイントには、以下の6つがあります。
労働安全衛生法が定める、事業者の基本的な責務として、事業者には、労働者の安全と健康を確保することが求められます。これは、事業者として基本的な責務であり、対象となる労働者には、パートやアルバイトなどの非正規雇用労働者も含まれます。
事業主は、労働者の安全と健康を確保するために、安全衛生の管理・推進の中心となる人を決めなければなりません。
たとえば、常時50人以上の労働者を雇用する事業所では、労働者の健康管理を担う「産業医」や安全衛生に関する技術的管理を行う「衛生管理者」の配置が必要になります。
また、一定の業種では「安全管理者」の配置も必要です。
事業主は、安全衛生に関して審議を行い、意見を聞く場を設けるために、業種や労働者数に応じ、「安全委員会」、「衛生委員会」などを設置しなければなりません。
安全委員会と衛生委員会の両方の設置が必要とされる事業所では、各々個別に設置する代わりに、安全衛生委員会を設置できます。
事業主は、設備や作業などによって労働者に危険が生じることのないように防止措置をとることが求められます。
具体的には、
などが挙げられます。
これらの義務を怠った場合には、労働安全衛生法違反となり事業主に罰則が科されますが、事業者が講じた防止措置などを労働者が遵守しなかった場合には、労働者自身の責任となります。
事業者は、労働者に対して、安全衛生教育を実施しなければなりません。
安全衛生教育とは、労働者が安全に働くことができるようにするための教育をいい、労働者を新たに雇用した場合や労働者の業務内容を変更した場合などに実施が義務付けられます。
事業主は、作業環境測定、作業管理、健康診断などの実施によって、労働者の健康保持・増進を行わなければなりません。
たとえば、事業者には、原則として、毎年1回労働者の健康診断を実施する義務が課されており、さらに、常時50人以上の労働者を雇用する事業所では健康診断結果を労働基準監督署に報告して、それを5年間保存しなければなりません。
問題社員のトラブルから、
企業が労働安全衛生法に基づく対策を講じ、さらに労働者側も企業が行った対策や危険防止措置に応じた事項を守り実行していくことによって、以下のようなメリットが得られます。
労働安全衛生法に基づく対策によって、労働者が働きやすい環境が整備されます。
その結果、労働者のモチベーションの向上が期待できます。
作業環境の改善や整備によって、安全で効率のよい作業を行うことができますので、作業の効率化や生産性の向上が期待できます。
労働者が働きやすい環境を整備することによって、離職や休職による人件費の無駄を防ぐことができます。
また、労災事故の減少によって、生産ラインのストップなどの生産ロスも防ぐことができます。
労働安全衛生法を守らない場合には、企業に対して、以下のような罰則が適用される可能性があります。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金が適用される違反としては、以下のものなどが挙げられます。
1年以下の懲役または100万円以下の罰金が適用される違反としては、以下のものが挙げられます。
6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が適用される違反としては、以下のものが挙げられます。
50万円以下の罰金が適用される違反としては、以下のものが挙げられます。
以下のようなケースについては、弁護士に相談することをおすすめします。
労働安全衛生法では、業種や規模に応じて、事業主が講じるべき安全衛生対策が規定されています。
労働安全衛生法は、頻繁に法改正のある法律ですので、最新の法規制に対応するためには、専門家である弁護士のアドバイスが不可欠になります。
企業が講じるべき労働安全衛生法に基づく適切な対策を適切に行いたいとお考えであれば、まずは弁護士にご相談ください。
安全衛生対策を怠ったことにより、高所からの転落や機械への巻き込みなどの事故が生じてしまうと、その労働者や家族に対して大きな責任を負うことになります。
また、重大な労災事故が生じたことが対外的に公表されれば企業のイメージも低下するおそれがあります。
そのような経営リスクを軽減するためには、労働安全衛生法に基づく対策の実施や見直しなどが必要となるかもしれません。
弁護士であれば、企業の実情に応じて最適な対策を提案することができますので、経営リスクの軽減をお考えの企業は弁護士に相談することをおすすめします。
実際に労災事故などが生じてしまった場合には、すぐに弁護士に相談すべきでしょう。
企業側に安全配慮義務違反や使用者責任が生じる場合には、労働者から損害賠償請求をされるリスクがあります。労働者の怪我の程度によっては、損害額も莫大なものになりますので、適切に対応することが大切です。
このような訴訟リスクに対応するには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
企業が受けるダメージを最小限にするためにも、まずは弁護士にご相談ください。
問題社員のトラブルから、
労働安全衛生法では、労働者の安全・健康の確保と快適な職場環境の形成促進という観点から、企業に対してさまざまな対策が義務付けられています。
必要な対応を怠ると罰則が適用されるリスクもありますので、顧問弁護士を利用して最新の法令に対応することが求められます。
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