企業法務コラム
「所属タレントに接待を命じたところ、そんな接待はしたくないと言われた」「女性社員に対して取引先との接待を命じたが問題はないのだろうか?」「公的機関との接待ではどのような点に気を付ければよいのか?」
日本の企業では、取引先との関係性を深めるため「接待」が行われることが多いです。会食やゴルフなどの接待自体は違法ではありません。しかし、接待の目的や方法によっては、違法な接待に該当する可能性がありますし、嫌がる女性社員に対して接待を命じるのは接待強要にあたる可能性もあります。
企業としては、このような違法な接待を行わないようにするために、しっかりと対策を進めていくことが必要です。今回は、法律違反になり得る接待や接待に関するトラブルを防止するための対策について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
そもそも接待は法律違反になるのでしょうか。以下では、接待の定義や接待の違法性について説明します。
接待とは、一般的に茶や食事などをふるまい、客をもてなす行為と定義されています。
日本のビジネスにおいては、ゴルフや食事などを通じて取引先との関係性を深めるという接待が広く行われています。このような接待は、企業は従業員に対して業務命令として、接待を命ずることが可能です。
しかし、詳細は2章で解説しますが、接待の目的や方法によっては、接待が法律違反になることもあります。違法な接待に該当する場合には、刑事罰が科されるリスクや接待強要をされた従業員から損害賠償請求をされるリスクもありますので、注意が必要です。
企業としては、このような違法な接待が行われないようにするために、しっかりと対策を講じていかなければなりません。
接待が直ちに法律違反にならなかったとしても、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
たとえば、女性タレントや女性社員に対して接待強要をした場合、そのことがSNSや週刊誌で暴露されてしまうと、企業の信用性は大きく失墜してしまいます。近年、女性への性加害が大きく報道されていますので、このような事案が発生すると企業には莫大な損害が発生するおそれもあります。
違法な接待でなかったとしても、接待の態様などについては企業においてしっかりとチェックしていくことが大切です。
法律違反となる接待には、どのようなものがあるのでしょうか。以下では、法律違反の接待に関する具体例を紹介します。
接待相手が国家公務員や地方公務員である場合には、接待の方法によっては、賄賂罪が成立する可能性があります。
賄賂罪とは、収賄罪と贈賄罪の総称であり、公務員が職務に関して賄賂を受け取ったり、公務員に賄賂を贈ったりした場合に成立する犯罪です。たとえば、接待相手の公務員の職務に関して便宜を図る目的で、金品を送ったり、異性を紹介したりするなどの接待をした場合には、賄賂罪に問われる可能性があります。
なお、賄賂罪というと公務員が賄賂を受け取るケースが対象になると考える方も多いですが、民間人であっても取締役や会計参与などが賄賂を受け取ることも法律により禁止されています(会社法967条)。
業務命令として行われる接待費用については、接待交際費という名目で会社から支払いがなされることが多いと思います。
しかし、従業員のなかには、接待費名目で私的な飲食を行ったり、キャバクラやクラブに通ったりするなどの行為をするケースもあります。経理担当者であればある程度会社のお金をコントロールできる立場ですので、勝手に会社のお金を流用してしまうこともあります。
このようなケースに関しては、業務上横領罪に問われる可能性があります。
接待の見返りとして、自社サービスを安く提供したり、接待者が金融機関の場合に接待先に不正融資をする行為をしたりする行為に及び、これにより会社に損害を与えた場合、背任罪に問われる可能性があります。
取引先との接待が終了した後、2次会・3次会として自社の社員らだけで飲食や遊興を行い、その費用を接待費名目で会社に請求する社員もいます。また、本当は取引先との接待自体が存在しないのに、個人的な飲食費を接待費名目で請求することもあるようです。
このような行為は、経理担当者を騙して、会社のお金を支払わせる行為になりますので、詐欺罪に問われる可能性があります。
会社から接待費の支払いを受ける際に、領収書の数字を偽造して、本来の接待費用よりも多額の支払いを受けようとする社員もいます。
このような領収書の数字を偽装する行為は、私文書偽造罪に問われる可能性があります。
女性社員や女性タレントに対して、接待を命じることは、具体的な事案によっては、パワハラやセクハラに該当する可能性もあります。そのようなケースの例としては、以下のものが挙げられます。
接待に関するトラブルを防止するためには、以下のような対策が有効です。
接待は、接待をする側や接待をされる側でさまざまな問題を引き起こす可能性があります。そのため、経営者としては、接待に関する社内ルールの策定やマニュアルを作成する必要があります。
このようなルールやマニュアルを作成することは、違法、不当な接待によるトラブルを回避できるだけでなく、以下のような効果も期待できます。
また、接待をする場合には、事前の届け出や事後の報告書の提出を義務付けるのも、違法・不当な接待トラブルを回避するための有効な手段となります。会社の規模や実情に応じて、最適なルールやマニュアルを作成するようにしましょう。
接待について法律違反を避けるためには、接待をするまたは接待を受ける社員の知識理解や意識も重要です。単に社内ルールやマニュアルを作成しただけでは不十分で、それを社員に周知徹底されることが必要です。
そのためには、社内講習会やコンプライアンス研修会を実施し、その中で接待に関する基本的なルールを説明しなければなりません。
人事・労務管理に関するお困りごとは、弁護士に相談することをおすすめします。
接待に関する社内ルールの内容については、企業の規模や実情に応じて異なりますので、それぞれの企業の規模・実情に応じて最適なルールを策定していかなければなりません。
企業法務に詳しい弁護士であれば、それぞれの企業の特徴に応じた最適な社内ルールを策定することができます。そのため、まだ接待に関する社内ルールの策定ができていないという企業の経営者の方は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
接待に関して従業員による不正な経費支出が明らかになった場合、当該従業員に対する、懲戒処分、刑事告訴、損害賠償請求などの対応を進めていかなければなりません。
懲戒処分であれば適切な処分を選択しなければ懲戒権乱用として無効になるリスクがあります。また、刑事告訴や訴訟対応などは不慣れな方では対応が難しいこともあるでしょう。
弁護士であれば、従業員による不正な経費支出があったとしても、適切に対応することができます。本業に専念するためにも、このような法的対応は弁護士にお任せください。
従業員による接待トラブルを防止するためには、顧問弁護士を利用することも有効な手段です。顧問弁護士がいれば、いつでも気軽に相談することができますので、接待に関する疑問が生じたとしても、すぐに解決することができます。
また、顧問弁護士は、顧問先企業の実情をよく把握していますので、接待に関する法的なリスクが潜んでいることがわかれば、改善策などをアドバイスしてもらうことが可能です。
日本のビジネスにおいては接待が広く行われています。接待は、それ自体は違法ではありませんが、接待の目的や方法によっては法律違反になる可能性もあります。違法な接待行為が判明すれば、企業の信用性も大きく失墜してしまいますので、経営者としては、事前の対策が重要です。
接待に関する社内ルールの策定やマニュアルの整備に関しては、弁護士のサポートが有効ですので、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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