企業法務コラム

2023年08月15日
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インボイス制度とは? 変更点や企業の対応方針などを解説

インボイス制度とは? 変更点や企業の対応方針などを解説

令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。

インボイス制度が導入されると、消費税の仕入税額控除に関するルールが大幅に変わります。他社に発注を行っている企業は、早い段階でインボイス制度への準備を整えましょう。

今回は発注者側の視点から、インボイス制度のポイントや準備すべき対応事項などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、インボイス制度とは

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書等の保存を要件とする制度です。正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。

インボイス制度が導入される目的は、取引に係る消費税の額と税率について正確な把握を促すこととされています。

軽減税率の導入後、2種類の消費税率(8%と10%)が混在している状況において、適格請求書等の発行・保存により税額と税率の明確化が図られます。

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2、インボイス制度の開始に伴い、企業が留意すべきポイント

令和5年10月1日からインボイス制度が始まることに備えて、他社に発注を行う企業は、特に以下の各点にご留意ください。

  • ① 消費税の仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書等の保存が必要
  • ② 適格請求書等は、電子帳簿保存法に基づく保存が必要
  • ③ 免税事業者からの仕入れについては、仕入税額控除を受けられなくなる

  1. (1)控除の利用には適格請求書等の保存が必要

    企業が国に納付する消費税額は、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を控除した金額です。このとき、仕入れに係る消費税を控除することを「仕入税額控除」といいます。

    現行の制度上(インボイス制度の施行前)は、仕入税額控除を受けるためには、区分経理に対応した帳簿と区分記載請求書(後述)を保存すれば足ります。

    しかし、インボイス制度が施行されると、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として「適格請求書等」の保存が必要となります。したがって課税仕入れについては、発注先の事業者に適格請求書等を発行してもらわなければなりません

  2. (2)電子帳簿保存法に基づく対応が必要なケース

    適格請求書等は、書面(紙)のほか、電子データによる交付・保存も認められています(電子インボイス)。

    電子インボイスを受け取った場合は、電子帳簿保存法に従った方法で保存しなければなりません。具体的には、「真実性」と「可視性」が確保された形で保存する必要があります。

    電子帳簿保存の要件については、国税庁のウェブサイトなどをご参照ください。
    参考:「電子帳簿保存時の要件」(国税庁)

  3. (3)免税事業者からの仕入れに注意

    インボイス制度が施行されると、消費税の仕入税額控除を受けるには適格請求書等の保存が必要になります。しかし、発注先が免税事業者である場合、適格請求書を発行できません。したがって、免税事業者からの仕入れについては、原則として仕入税額控除を受けられない点に注意が必要です。

    ただし経過措置により、免税事業者からの課税仕入れについても、以下の額の仕入税額控除を受けられます

    • 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間
      仕入税額相当額の80%
    • 令和8年10月1日から令和11年9月30日までの期間
      仕入税額相当額の50%

3、「適格請求書等(インボイス)」とは

適格請求書等としては、原則的な「適格請求書」のほか、適格簡易請求書や仕入明細書等が認められています。適格請求書を発行するためには、あらかじめ税務署長の登録を受けなければなりません。

  1. (1)適格請求書等の種類と記載事項

    適格請求書等として認められているのは、「適格請求書」適格簡易請求書」「仕入明細書等」です。

    ① 適格請求書
    原則的な適格請求書等の方式です。
    <記載事項>
    • 適格請求書発行事業者の氏名か名称
    • 適格請求書発行事業者の登録番号
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
    • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および軽減税率
    • 税率ごとに区分した消費税額等
    • 書類の交付を受ける事業者の氏名か名称

    ② 適格簡易請求書
    不特定多数の者に対して販売等を行う小売業・飲食店業・タクシー業等に係る取引についてのみ、例外的に認められています。適格請求書に比べると、記載事項の一部省略が可能です。
    <記載事項>
    • 適格請求書発行事業者の氏名か名称
    • 適格請求書発行事業者の登録番号
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
    • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)
    • 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

    ③ 仕入明細書等
    仕入れる側(発注する側)が自ら作成する仕入明細書です。適格請求書等として認められるには、署名や電子メールなどによって発注先の確認を受ける必要があります。
    <記載事項>
    • 仕入明細書等の作成者の氏名か名称
    • 課税仕入れの相手方の氏名か名称
    • 課税仕入れの相手方の登録番号
    • 課税仕入れを行った年月日
    • 課税仕入れの内容(軽減税率の対象品目である旨)
    • 税率ごとに区分して合計した課税仕入れに係る支払対価の額および適用税率
    • 税率ごとに区分した消費税額等

    なお、適格請求書と適格簡易請求書は、電子データで交付することもできます(電子インボイス)。

  2. (2)適格請求書と従来の区分記載請求書の違い

    インボイス制度の施行前は、消費税の仕入税額控除を受けるためには「区分記載請求書」の保存が要件とされています。

    区分記載請求書の記載事項は、以下のとおりです。

    • 発行者の氏名か名称
    • 取引年月日
    • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
    • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および軽減税率
    • 書類の交付を受ける事業者の氏名か名称

    適格請求書と比べると、区分記載請求書では、登録番号と税率ごとに区分した消費税額等の記載が不要とされています。

  3. (3)適格請求書を発行するための条件

    適格請求書を発行するためには、税務署長による適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けなければなりません。登録申請は、税務署に登録申請書を提出して行います。

    参考:「適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」(国税庁)


    適格請求書発行事業者としての登録を受けるためには、消費税の課税事業者であることが必要です。免税事業者は、適格請求書発行事業者としての登録を受けられません。

    免税事業者が適格請求書を発行したい場合は、税務署長への届出によって課税事業者に移行する必要があります。

    参考:「消費税課税事業者選択届出手続」(国税庁)

4、インボイスを受け取る企業が事前に準備すべきこと

他社に業務を発注している企業は、インボイス制度導入に備えて、以下の事項につき準備を整えましょう。

① 課税仕入れとその他の仕入れを区別する
仕入税額控除が問題となるのは、消費税が課税される仕入れ(発注)のみです。自社の取引を、事前に課税仕入れとその他の仕入れに区別しておきましょう。
参考:「消費税課税取引の判定表」(国税庁)

② 2割特例・簡易課税制度の適用を検討する
「2割特例」または「簡易課税制度」の適用を受ける場合は、適格請求書等を保存しなくても、消費税の仕入税額控除を受けることができます。

2割特例:インボイス登録をするために課税事業者となった小規模事業者が、売上税額の8割に当たる仕入税額控除を受けられる制度
参考:「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」(国税庁)

簡易課税制度:年間売上5000万円以下の事業者が、みなし仕入率による仕入税額控除を受けられる制度
参考:「No.6505 簡易課税制度」(国税庁)

③ 免税事業者への対応を検討する
免税事業者からの仕入れについては、経過措置はあるものの、段階的に仕入税額控除を受けられなくなります。

発注先に免税事業者がいる場合は、取引の継続や契約条件などについて再検討すべきでしょう。ただし、独占禁止法に違反する「優越的地位の濫用」などに当たらないように注意が必要です。
参考:「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A Q7」(公正取引委員会)

④ 受け取った適格請求書等の保存体制を整備する
発注先から受け取った適格請求書(または適格簡易請求書)は、適切に保存する必要があります。特に電子データで受け取った場合は、電子帳簿保存法に従った保存が必要です。インボイス制度の開始前に、保存体制をきちんと整備しておきましょう。

⑤ 自社もインボイス登録すべきかどうか検討する
事業者向けに商品販売やサービスの提供を行っている場合は、自社としてもインボイス登録の要否を検討すべきです。

課税事業者であれば、基本的にインボイス登録をすることで問題ありません。一方、免税事業者の場合は、インボイス登録をすれば消費税の納税義務が生じることを踏まえて、登録の要否を適切にご判断ください。
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5、まとめ

インボイス制度は、従来の消費税額控除に関するルールを抜本的に変更するものです。未対応の企業は、弁護士や税理士に相談しながら、速やかに対応を進めましょう

インボイス対応を含めて、企業法務を適切に行うためには、顧問弁護士との契約をおすすめします。法改正対応・社内規程の整備・トラブル対応など、法律に関する事項を幅広く相談可能です。

ベリーベスト法律事務所は、ニーズに応じて月額3980円からご利用いただける顧問弁護士サービスを提供しております。グループ内には税理士も在籍しているため、インボイス対応についてもワンストップでご相談いただけます。インボイス対応にお悩みの企業は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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