企業法務コラム

2023年11月20日
  • 風営法とは

風営法とは? 飲食店開業時の手続きや注意点について詳しく解説

風営法とは? 飲食店開業時の手続きや注意点について詳しく解説

飲食店の経営を始める際には、さまざまな法規制がありますが、その中でも代表的なものが「風営法」です。風営法では、飲食店の営業形態に応じて届出制または許可制がとられており、営業場所、時間、接客方法などについても制限があります。

風営法に違反してしまうと、営業許可の取り消し、営業停止命令などの行政処分のほか、懲役や罰金といった刑事罰を受けるリスクもありますので注意が必要です。

今回は、風営法とは何かという概要から、必要な風営法上の手続きや注意すべきルールまで、開業前に知っておきたい風営法の基礎知識についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、風営法とは

風営法とはどのような法律なのでしょうか。以下では、風営法の目的・概要、風営法が適用される4種類の営業について説明します。

  1. (1)風営法の目的・概要

    風営法とは、正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といいます。この法律は、風俗営業などを行うことにより周辺環境や子どもの健全な育成に悪影響を及ぼさないようにするための一定のルールを定めた法律です。

    風営法というと性的サービスを提供するお店をイメージする方も多いと思いますが、お酒を提供する飲食店なども風営法が規制する風俗店に含まれます。そのため、これから飲食店を開業しようとお考えの方は、風営法の定める規制に従って開業準備を進めていく必要があります

  2. (2)風営法が適用される4種類の営業

    風営法の規制対象となる営業には、主に以下の4つの種類があります。

    ① 風俗営業
    風俗営業とは、客に飲食・遊興をさせて接待する営業や設備を設けて射幸心をそそる遊戯をさせる営業をいいます。風俗営業は、営業形態に応じてさらに以下のような5つの種類に分類されます。

    • 1号営業……キャバレー、待合、料理店、カフェなど接待をして客に遊興または飲食させる営業
    • 2号営業……喫茶店、バーなど客に飲食させる営業で客席の照度が10ルクス以下のもの
    • 3号営業……喫茶店、バーなど客に飲食させる営業で他から見通すことが困難、かつ、広さが5平方メートル以下の客席を設けるもの
    • 4号営業……マージャン店、パチンコ店など射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業
    • 5号営業……ゲームセンターなど本来の用途以外の用途で射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業

    ② 特定遊興飲食店営業
    特定遊興飲食店営業とは、深夜の時間帯(午前0時~午前6時)に客に遊興をさせながら酒類の提供を行う営業です。代表的な業種としては、ライブハウス、クラブ、ダーツバーなどが該当します。

    ③ 深夜酒類提供飲食店営業
    深夜酒類提供飲食店営業とは、深夜の時間帯(午前0時~午前6時)に酒類の提供を行う営業です。代表的な業種としては、居酒屋やバーなどが該当します。

    なお、深夜酒類提供飲食店営業は、主にお酒の提供を目的としないレストランやラーメン店などの飲食店は深夜の時間帯に営業をしていたとしても、深夜酒類提供飲食店営業には該当しません。

    ④ 性風俗関連特殊営業
    性風俗関連特殊営業とは、性に関するサービスやグッズの提供および販売を行う営業です。
    性風俗関連営業は、営業形態に応じてさらに以下のような5つの種類に分類されます。

    • 店舗型性風俗特殊営業……ソープランド、店舗型ファッションヘルス、ストリップ劇場など
    • 無店舗型性風俗特殊営業……派遣型ファッションヘルスなど
    • 映像送信型性風俗特殊営業……アダルトサイト、ライブチャットなど
    • 店舗型電話異性紹介営業……テレホンクラブ
    • 無店舗型電話異性紹介営業……ツーショットダイヤル、伝言ダイヤルなど
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2、飲食店の開店にあたり必要となる風営法上の手続き

飲食店を開店するにあたっては、風営法が規定する手続きを行わなければなりません。

  1. (1)届出が必要な業種と手続きの内容

    風営法により、以下の業種については届出が必要とされています。

    • 深夜酒類提供飲食店営業
    • 性風俗関連特殊営業

    届出とは、国民が行政庁に対して、一定の事項を通知する行為をいいます。届出制とされている業種は、事前の届出が義務付けられていますが、行政による判断は介在せず、必要な要件や書類が満たされていれば完了となります。

    たとえば、深夜酒類提供飲食店営業に関しての届出をする場合には、以下の書類を管轄の警察署に提出する必要があります。

    • 営業開始届出書
    • 営業の方法を記載した書類
    • 営業所の平面図
    • 住民票の写し、または定款、登記事項証明書及び役員に係る住民票の写し
  2. (2)許可が必要な業種と手続きの内容

    風営法により、以下の業種については許可が必要とされています。

    • 風俗営業
    • 特定遊興飲食店営業

    許可とは、本来禁止されている行為について、個別の申請に基づき禁止を解除する行為をいいます。許可制がとられている業種では、行政による審査が介在しますので、一般的に届出制に比べて規制が厳しいといわれています。

    風俗営業に関しての許可を求める場合には、以下の書類を管轄の警察署に提出する必要があります。

    • 許可申請書
    • 営業の方法を記載した書類
    • 営業所の使用権原を疎明する書類(使用承諾書・賃貸契約書・建物に係る登記事項証明書等)
    • 営業所の平面図及び周囲の略図
    • (申請者が法人の場合)
      ① 定款及び登記事項証明書
      ② 役員に係る住民票の写し
      ③ 不許可事由に該当しないことを誓約する書面
      ④ 役員に係る市区町村の発行する身分証明書
    • 選任する管理者に係る住民票の写し、身分証明書、誓約書、住民票の写し、写真等

3、飲食店の営業に適用される風営法のルール

飲食店に適用される風営法の基本的なルールとしては、以下のものが挙げられます。

  1. (1)営業場所についてのルール

    風営法が適用される飲食店の場合、飲食店を営業できる場所に関しても一定の制限が設けられています。

    風俗営業は、周囲の環境や子どもに悪影響を与える可能性があることから、原則として居住専用地域での営業は認められず、商業地域や工業地域でのみ営業が許可されています

    また、営業が許可される地域でも学校や病院などの保護対象施設が周辺にある場合には風俗営業の開業は認められません。そのため、開業予定地の用途制限や周辺環境をしっかりと確認することが大切です。

  2. (2)営業時間についてのルール

    風営法では、一定の営業に関して午前0時から午前6時までの時間帯を深夜時間帯として、同時間帯における営業を禁止しています。

    接待を伴わない深夜酒類提供飲食店営業であれば、深夜時間帯の営業も可能になりますが、必要な届出を行わずに営業をすると風営法違反となってしまいます。

  3. (3)接客方法についてのルール

    風営法が規定する「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法で客をもてなすことをいます。
    具体的には、以下のような行為がこれに該当します。

    • 談笑、お酌
    • ショー
    • 歌唱
    • ダンス
    • 遊戯

    このような接待を伴う飲食店を営む場合には、風俗営業にあたりますので、深夜時間帯の営業が禁止されます。誤った接客をしてしまうと、風営法違反として罰則の対象になる可能性もありますので注意が必要です。

  4. (4)風営法違反を犯した場合の罰則

    風営法違反を犯してしまった場合には、具体的な違反内容に応じて以下のような罰則が適用されます。

    ① 無許可・無届営業
    風営法で必要とされる許可や届出を行うことなく、営業を行った場合には、無許可・無届営業として風営法違反となります

    この場合には、営業の種類に応じて、以下のような罰則が適用されます。

    • 風俗営業または特定遊興飲食店営業……2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科
    • 性風俗関連特殊営業……6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科
    • 深夜酒類提供飲食店営業……50万円以下の罰金

    ② 名義貸し
    名義貸しが行われた場合には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらが併科されます。名義貸しとは、他人に名義を貸して経営を行わせる行為で、名義を貸した側だけでなく借りた側も処罰の対象となります

    ③ 18歳未満の従業員による接待
    18歳未満の従業員に接待を行わせた場合には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらが併科されます。

4、風営法に関するご質問・ご相談は顧問弁護士へ

風営法の規制対象となる店舗の経営をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)風営法違反のリスクを回避できる

    風営法では、営業場所、営業時間、接客方法に応じてさまざまな規制が行われています。法律の解釈や運用は、非常に複雑な内容となっており、それらを正確に理解していなければ、知らないうちに風営法違反を犯してしまう可能性があります。

    実績ある弁護士であれば、風営法の解釈や運用に基づき風営法違反のリスクを回避するために必要なアドバイスをすることができます。風営法違反となってしまうと、飲食店経営に与えるダメージは非常に大きなものとなりますので、事前に対策をとっておくことが重要です。

  2. (2)客や従業員とのトラブルについても対応可能

    飲食店経営をしていくうえで、客や従業員とのトラブルは避けて通ることはできません。どれだけ注意していたとしても、少なからずトラブルは生じるものと考えておきましょう。

    客や従業員との間でトラブルが生じた場合には、被害を最小限に抑えるため、迅速な行動をとることが重要になります。日ごろから顧問弁護士と連携し、業務状態を共有しておくことでスムーズな解決が期待できます。

    ベリーベスト法律事務所では、必要に応じてタイムリーに相談できる月額3980円からの顧問弁護士サービスを提供しています。固定費を抑えながら安定した事業運用を目指したいとお考えの経営者さまは、ぜひ一度ご相談ください。

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5、まとめ

居酒屋やバーはもちろん一般的な飲食店であっても、一定の要件に該当するものに関しては、風営法の規制対象となります。事業を開始してから「風営法が適用されるなんて知らなかった」ということにならないよう、実績ある弁護士に相談しておくことをおすすめします。風営法の適用の有無および風営法違反のリスク回避のために、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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