2025年12月25日
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2025年風営法改正|変更のポイントや店舗経営者が取るべき対応を解説

2025年風営法改正|変更のポイントや店舗経営者が取るべき対応を解説

2025年6月28日、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」といいます。)の一部改正法が施行されました。

近年、ホストクラブやキャバクラなどの接待飲食業の一部における悪質な営業行為(いわゆる色恋営業)や、性風俗店によるスカウトバックの横行、無許可営業の増加などが社会問題化し、法整備の必要性が指摘されていました。

今回の改正は、ホストクラブやキャバクラ、深夜営業のバーやカラオケなどを経営する事業者に、実務上大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、接待飲食営業においては、新たに遵守事項や禁止行為が追加され、無許可営業に対する罰則も強化されました。

本記事では、風営法改正の背景や具体的な変更点、そして店舗経営者が取るべき対応について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

法令自体は改正されていないものの、「第十六条 風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない。」という規定については、今回の法改正の趣旨を踏まえた新しい運用基準が警察庁の通達(警察庁丁保発第104号)により示されています。

この通達では、ランキング等売上を競わせることにつながる広告表示について、かなり広範に違反とする運用も行われようとしており、こちらも実務における影響力が大きいと思われます。しかし、こちらは解釈運用指針であることから、どこまで適法に規制が拡大したのか不明瞭な部分もあります。

そのため、本コラムでは、法改正によって明示的に変更された部分に焦点をあてて整理します

1、2025年風営法改正とは?

風営法(正式名称:「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)は、
① 善良な風俗の保持
② 清浄な風俗環境の保持
③ 少年の健全育成への障害防止

を目的とし、営業の時間帯、場所、従業員名簿、構造設備、接客方法などに関する規制を設け、風俗営業等の適正化を図っています。
風営法が適用されるのは、いわゆる性風俗店だけではなく、キャバクラ、ホストクラブ、パチンコ店、ゲームセンター、深夜にお酒を提供するバーなど、幅広い業種が対象となります。

風営法における一般的規制に関しては、以下のコラムで詳しく解説しています。


今回の風営法改正に至った背景には、以下のような問題がありました。

・色恋営業とスカウトバックの結びつき
一部悪質なホストクラブにおいて、ホストが利用客の恋愛感情に乗じて、高額な飲食をさせる色恋営業が問題視されていました。ホストが色恋営業により利用客に多額の売掛金を背負わせ、弁済資力のない利用客に対し、売春や性風俗店での勤務を要求する事例も報告されていました。さらに、ホストが性風俗店に女性を紹介した見返りとして報酬の支払いを受ける“スカウトバック”が、色恋営業をさらに後押しするといった構造もありました。

・無許可営業の蔓延
風営法上、接待を伴う飲食業を行うには公安委員会の許可が必要ですが、許可を得ずに営業を行う店舗が後を絶ちませんでした。その原因のひとつとして、無許可営業の罰則が軽く、抑止力が不十分であることが指摘されていました。

・不適格者による営業継続
旧来の規制では、欠格事由の範囲が限定的で、営業許可を取り消される前に許可証を返納することで処分逃れをすることが可能であるとの問題が指摘されていました。また、反社会的勢力からの影響の排除も徹底されていないとの指摘もありました。

こうした背景から、今回の改正では、ホストクラブやキャバクラなどの接待飲食営業に対する規制や、無許可営業に対する罰則が強化され、不適格者を排除するための規定も整備されました

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2、2025年風営法改正による4つの変更点

今回の風営法改正の主な変更点は以下の4つです。

  1. (1)接待飲食営業に関する遵守事項・禁止行為の追加

    ホストクラブ、キャバクラなどの接待飲食営業を営む風俗営業者が遵守すべき事項が新たに追加されました。

    ・料金に関する虚偽説明の禁止
    料金について、事実に相違する説明をし、または客を誤認させるような説明をしてはなりません(風営法第18条の3第1項)。

    ・“色恋営業”の禁止
    客が接客従業者に対して好意の感情を抱き、スタッフも客に対して同様の感情を抱いているものと客が誤信していることを知りながら、これに乗じて、客が飲食等をしなければそのスタッフとの関係が破綻することを告げるなどして客に飲食等をさせてはなりません(風営法第18条の3第2項)。

    ・客が注文していない飲食等の提供の禁止
    客が注文していない飲食等を提供することにより、客を困惑させて飲食等をさせてはなりません(風営法第18条の3第3号)

    ・不当な強要の禁止
    売掛金等の料金の支払い等をさせる目的で、客を威迫して困惑させることや、客を威迫または誘惑して、料金の支払い等のために、売春、性風俗店での勤務、AV出演などを要求する行為は、刑事罰の対象となります(風営法22条の2、同法53条2項)。

    また、前述のとおり、警察は上記の不当な行為につながるものとして、売上を競わせることにつながる広告表示も、規制対象とする方針を明言しています

  2. (2)“スカウトバック”の禁止

    スカウトバックとは、ホストやスカウトが女性を性風俗店に紹介し、その見返りとして店側から金銭等の利益を受け取る行為を指します。この度の改正により、このスカウトバックが全面的に禁止されました(風営法28条13項)。これに違反した者には、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(風営法53条7号)。

  3. (3)無許可営業等に対する罰則の強化

    無許可営業に対する罰則が大幅に強化されました(風営法49条1号、57条1号)。

    ・個人に対する罰則
    改正前は“2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金”だったものが、“5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金”に引き上げられました。

    ・法人に対する罰則
    改正前は“200万円以下の罰金”であったものが“3億円以下の罰金”に大幅に引き上げられました。
  4. (4)不適格者の範囲の拡大

    今回の改正では、風俗営業の許可基準としての適格性の審査がより厳格になり、不適格者の範囲が拡大されます。具体的には、次の者が風俗営業の許可に係る欠格事由に追加されました(風営法4条1項)。

    • 親会社、子会社等のグループ法人が許可を取り消された場合の他のグループ法人(風営法4条1項7号)
    • 警察の立入調査後に許可証の返納等(処分逃れ)をした者(風営法4条1項8号~10号)
    • 暴力的不法行為をするおそれがある者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者(風営法4条1項13号)

3、2025年風営法改正について、店舗経営者に求められる対応

風営法の改正は、ホストクラブやキャバクラ、深夜営業のバーなどを経営する事業者に大きな影響を与えます。店舗経営者としては、改正に応じた迅速かつ適切な対応が求められます。

  1. (1)改正内容や罰則等の正確な把握

    今回の改正により、接待飲食営業を営む者の禁止行為が追加され(虚偽説明、色恋営業等の禁止)、無許可営業等に対する処罰の法定刑が大幅に引き上げられ、営業許可の取消処分の効果が及ぶ範囲が拡大するなど、違反時のリスクが大きくなったといえます。
    事業者としては、今回の改正による規制強化について正しく理解することが重要です。

  2. (2)リスク管理体制の見直し

    全社的なリスクを再評価し、その結果を踏まえリスク管理体制を見直す必要があります。
    たとえば、店舗の営業において、どのような点が風営法に抵触する可能性があるかを確認します。たとえば、スタッフによる営業トークの内容やSNSでの発信、売掛金の管理、回収方法などを把握する必要があります。

    そして、リスクがある場合は、具体的な対応策を策定しましょう。たとえば、業務マニュアルの改訂従業員向けの定期的な研修、場合により組織内のルールや組織体制の見直しなどが考えられます。売掛金についても、利用客が過大な借金を背負わないよう、そもそもツケによるサービス提供を全面禁止にしたり、売掛金に厳格な上限を設けるなどのルール作りにも取り組むべきといえるでしょう。

  3. (3)業務マニュアルの見直し・スタッフへの研修・教育の充実

    風営法による遵守事項や禁止行為を従業員に徹底させるため、業務マニュアルの見直しが急務といえます。たとえば、禁止対象となる行為類型についての説明資料を作成したり、「色恋営業に繋がるため避けるべきトーク例」「料金に関する虚偽説明となり得るため行ってはならない説明の例」などのNG集を作成する等、従業員が接客に際し不適切な言動を取ることのないような資料、マニュアルを作成、整備することが望ましいでしょう。

    また、マニュアルを整備するだけでなく、従業員一人ひとりに内容を周知徹底させることが重要です。定期的な社内研修や勉強会を開催し、改正内容や法令違反のリスクについて理解を深めさせましょう。

  4. (4)グループ企業を含めた全社的なガバナンスの見直し

    改正風営法においては、グループ内の別法人が許可の取消処分を受けた場合、グループ法人のすべてが欠格事由ありとされます。ここには、法人格をまたいで不正行為を厳しく取り締まるという改正法の趣旨が表れています。

    そこで、改正法の下では、グループ法人全体でガバナンス体制を統一し、子会社や関連会社を含め、すべての事業体が法令を遵守しているかを定期的にチェックすることが必要といえます。また、グループ法人全体でコンプライアンス意識の強化を図ることが求められているといえるでしょう。

4、風営法に関するご相談は弁護士へ

今回の風営法改正は、ホストクラブやキャバクラ、深夜営業を行うバーなど、多くの事業者にとって無視できない重要な法改正です。しかし、改正内容の正確な把握や必要な対応策の立案、業務マニュアルの作成などは専門的な知識を要するため、自社だけで対応するのは困難な場合もあります。対応を誤ると、行政処分や罰則の対象となり、事業継続が危ぶまれる事態に発展するおそれもあるため、慎重な対応が必要です。

風営法改正への対応や、日々の営業における法令遵守に関する疑問点など、少しでも不安がある場合は、企業法務に詳しい弁護士に相談することをおすすめします

弁護士は、個別の営業形態に合わせた制度設計から、個別コンプライアンス上の問題、課題に関する具体的なアドバイスも提供でき、従業員向けの研修のサポート等も行うことができます。

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5、まとめ

接待飲食等営業を行う店舗経営者にとって、2025年の風営法改正は、禁止行為の追加や罰則の強化によって大きな影響をもたらし、場合によっては事業の存続を危うくする深刻なリスクとなり得ます。

これを回避するためには、改正内容を正確に理解し、社内ガバナンスの強化、見直し、業務マニュアルの整備、従業員教育の徹底など、組織的な対応を速やかに講じることが必要といえます。

ベリーベスト法律事務所は、風営法対応に関し豊富な知見を擁しており、個別の事業形態に合わせて、改正法の規制内容に沿った適切な助言から、コンプライアンス体制の構築、見直しまで、きめ細やかなサポートを提供しています。
改正風営法への対応でお悩みの場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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