企業法務コラム

2024年02月26日
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会社が破産したら従業員への対応はどうすべき? 解雇などの手続き

会社が破産したら従業員への対応はどうすべき? 解雇などの手続き

会社が破産したら、従業員(労働者)を解雇せざるを得ません。苦楽を共にした従業員を解雇するのはつらい決断ですが、会社として最後まで責任をもって、解雇する従業員のケアを行いましょう。

なお、破産に伴う解雇に当たり、会社は解雇予告や失業保険・税金などの手続きに加え、未払いとなっている賃金を優先的に支払う義務が生じます。

本記事では、会社破産時に行う従業員への解雇手続きや未払い賃金の取り扱い、保険・税金に関する手続きなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、会社が破産したら従業員は解雇せざるを得ない

破産した会社は従業員を解雇せざるを得ません。解雇の際には、労働基準法に従った手続きを行いましょう。

  1. (1)破産すると会社は消滅する|解雇はやむを得ない

    破産した会社は、破産手続きに従って清算が進められ、最終的には法人格が消滅します。法人格が消滅した後は、当然ながら従業員を雇用し続けることはできません。

    したがって、破産する会社はどこかの段階で、従業員をやむを得ず解雇することになります

  2. (2)破産に伴う解雇の手続き

    破産に伴って従業員を解雇する場合、労働基準法に従って解雇予告または解雇予告手当の支払いを行う必要があります(労働基準法第20条)。

    解雇予告または解雇予告手当の支払いは、以下のいずれかのパターンから選択できます。

    ① 解雇予告
    解雇日の30日以上前に解雇を予告します。

    ② 解雇予告手当の支払い
    30日分以上の平均賃金を支払い、即日で従業員を解雇します。

    ③ 解雇予告+解雇予告手当の支払い
    解雇の予告期間と、解雇予告手当の計算に用いる平均賃金の支給日数の合計が30日以上となるように、解雇予告と解雇予告手当の支払いを行います。
    (例)
    解雇日の10日前に解雇を予告し、20日分の平均賃金を支払って従業員を解雇する
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2、破産時に解雇される従業員の未払い賃金の取り扱い

破産せざるを得ない状態に陥った会社は、従業員に対して賃金を支払えないケースも多いです。
破産時に解雇される従業員の未払い賃金は、破産手続きにおいて優先的に支払われるほか、未払賃金立替払制度の対象となります。

  1. (1)未払い賃金は破産手続きにおいて優先的に支払われる

    従業員の未払い賃金は、破産手続きにおいて「財団債権」または「優先的破産債権」として取り扱われます

    ① 財団債権
    破産債権に先立って弁済される債権です(破産法第151条)。従業員の未払い賃金のうち、以下のものは財団債権に当たります(同法第149条)。
    • (a)破産手続開始前3か月間の給料
    • (b)破産手続の終了前に退職した従業員の退職手当のうち、以下のいずれか多い金額に相当する額
      ・退職前3か月間の給料の総額
      ・破産手続開始前3か月間の給料の総額

    ② 優先的破産債権
    財団債権に次いで、他の破産債権に先立って弁済される債権です(同法第98条)。従業員の未払い賃金のうち、財団債権に当たらないものは優先的破産債権に当たります(民法第306条第2号)。

    財団債権に当たる未払い賃金は、破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権と、破産財団の管理・換価・配当に関する費用の請求権(主に破産管財人報酬)の次に支払われます。優先的破産債権に当たる未払い賃金は、財団債権の次に支払われます。

    いずれも、通常の破産債権よりは弁済順位が上位に設定されています。

  2. (2)未払賃金立替払制度も利用できる

    会社の財産が足りない場合は、未払い賃金の全部または一部が支払われないこともあります。

    会社の倒産(破産など)によって未払い賃金が発生した場合、従業員は「未払賃金立替払制度」を利用し、未払い額の8割に当たる給付を受けることができます。賃金を支払えないまま破産することが確実である場合は、従業員に対して未払賃金立替制度の利用を案内しましょう。

    参考:「未払賃金立替払制度の概要と実績」(厚生労働省)

3、破産時に解雇する従業員の保険・税金などに関する手続き

破産に伴って従業員を解雇する際には、保険や税金などに関する以下の手続きを行う必要があります。


  1. (1)雇用保険に関する手続き

    会社は、従業員を解雇した日から10日以内に、以下の書類をハローワークに提出しなければなりません。

    • 雇用保険被保険者資格喪失届
    • 離職証明書
    • 解雇通知書の写し

    上記の書類を提出すると、ハローワークから離職票が交付されるので、その離職票を従業員に交付します。従業員は、離職票を用いて雇用保険の受給を申請できるようになります。

    解雇などに伴う会社都合退職の場合は、離職票をハローワークに提出してから7日間が経過すると、雇用保険の基本手当を受給できます。受給の手続きや支給開始の時期などを、解雇する従業員に対して伝えることが望ましいでしょう。

  2. (2)社会保険に関する手続き

    会社が破産する場合、年金事務所に以下の書類を提出しなければなりません。

    • 適用事業所全喪届
    • 各従業員の資格喪失届
    • 各従業員の健康保険証(従業員から回収する)

    社会保険への加入資格を失った従業員は、以下のいずれかを選択することになります。各手続きの概要について、従業員にアナウンスすることが望ましいです。

    • ① 市区町村の国民健康保険および国民年金に加入する
    • ② 次の職場の社会保険に加入する
    • ③ 健康保険を任意継続し、国民年金に加入する(任意継続期間は2年間)
  3. (3)住民税に関する手続き

    会社は、従業員が納めるべき住民税を賃金から天引きし、従業員の住所地の市区町村に納税します。これを「特別徴収」といいます。
    これに対して、納税義務者が自ら住民税を納めることを「普通徴収」といいます。

    会社が破産する際には、従業員の住民税を特別徴収から普通徴収へ切り替えなければなりません。従業員の住所地の市区町村に対して「給与所得者異動届」を提出しましょう。

    従業員に対しては、住民税が特別徴収から普通徴収に切り替わり、各自で納付する必要が生じることを説明しておきましょう。

  4. (4)その他の手続き

    上記のほか、源泉徴収票の交付や貸与品の回収などを行います。従業員の勤務形態によって、追加で手続きが必要になる場合もあるので、あらかじめどのような手続きを要するか確認しましょう。

4、従業員に対する解雇の伝え方・ケアの対応

従業員に解雇を予告するタイミングは、破産する会社にとって悩ましいポイントのひとつです。
あまりにも早く解雇を伝えてしまうと、従業員の仕事へのモチベーションが損なわれるおそれがあります。その一方で、解雇を伝えるタイミングが直前になると、従業員の側でも心の準備ができません。

基本的には労働基準法の規定に従い、解雇日の30日以上前に予告するか、または解雇予告手当を支払った上で予告期間を短縮するか、いずれかの対応を行いましょう
その上で、具体的な解雇予告の時期については、弁護士と相談して総合的な観点から決めることをおすすめします。

解雇される従業員は、解雇後にさまざまな手続きを行う必要があります。具体的には、年金・保険の切り替えや住民税の納付(普通徴収)、雇用保険の受給や未払賃金立替払制度の利用などです。

これらの手続きについて案内を行うため、会社が従業員説明会を実施することが望ましいでしょう。解雇に伴う従業員の不安をできる限り取り除くことは、会社としての最後の責務です

5、破産に関するご相談は弁護士へ

従業員を抱える企業が破産する際には、解雇によって従業員の生活に大きな影響を与えることになります。また解雇に関連して、会社・従業員の双方においてさまざまな手続きを行わなければなりません

そのため、破産に伴う解雇は、慎重な検討と準備を行った上で進めるべきです。解雇の進め方については、弁護士のアドバイスをお求めください

弁護士は、従業員の解雇以外にも、破産申立てに関して必要な対応をサポート・代行します。具体的には、債務や会社財産の調査・把握、申立書類の作成・提出や、実際の破産手続きへの対応など、幅広い対応が可能です。

経営状態が思わしくなく、破産を検討している企業は、お早めに弁護士までご相談ください。

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6、まとめ

会社が破産する際には、従業員を解雇しなければなりません。破産によって会社の法人格が消滅し、従業員の雇用継続が不可能になるためです。

従業員の解雇に当たっては、未払い賃金の取り扱いや年金・保険・税金の手続き、解雇を予告するタイミングや従業員のケアなど、さまざまな注意点があります。適切な形で従業員の解雇を進めるためには、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、法人破産に関する企業のご相談を随時受け付けております。破産に伴う従業員の解雇手続きについても、円滑に進むように法の専門家として適切なアドバイスをいたします。また、法人破産を申し立てるために必要な書類の準備や、実際の法人破産手続きへの対応についても、全面的に弁護士へお任せいただけます。

会社の破産をご検討中の経営者の方は、法務実績のある弁護士が多数所属するベリーベスト法律事務所へ、お早めにご相談ください。

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