企業法務コラム
契約書を取り交わす際には、一般的に割印が用いられます。割印は、契約書の改ざんを防ぐために重要な方法ですので、企業の担当者としては、割印の役割をしっかりと理解した上で対応することが大切です。
また、近年では、書面の契約書ではなく電子契約書が利用されるケースも増えてきましたが、電子契約書では割印はどうなるのでしょうか。
今回は、契約書に用いられる割印の役割や基本的なルールなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
割印とはどのような役割があるのでしょうか。また、割印と契印とではどのような違いがあるのでしょうか。
割印とは、複数の文書にまたがって、印章(はんこ)を押す押印方法です。印影が割れて複数の文書に押されることから「割印(わりいん)」と呼ばれています。
このような割印は、契約書を作成する際に用いられる押印方法です。契約書は、当事者の人数分用意しますので、2部以上の契約書が同じ内容であることを示すために割印を行い、当事者双方が1部ずつ受け取るのが一般的です。
なお、割印は、法律上要求されているものではありませんので、割印がなかったとしても契約書の効力には影響はありません。
契約書に押す割印は、複数ある契約書の関連性の証明と改ざんの防止という重要な役割があります。
契約書は、契約内容を明らかにし、将来のトラブルを防止するものとして、ビジネスでは非常に重要な文書です。そのような契約書が改ざんされ、自社に不利益な内容に書き換えられてしまうと莫大な損害が生じるおそれがあります。しかし、割印をすることで、契約書の関連性を担保することができますので、契約書が改ざんされるリスクを回避することができます。
割印と似た言葉に「契印(けいいん)」というものがあります。契印とは、1つの文書が複数枚に及ぶときに、各ページにまたがって印章(はんこ)を押す押印方法です。契印は、複数枚ある文書の連続性を証明し、文書の抜き取りや改ざんを防止する目的で利用されます。
契約書が複数ページにわたる場合には、各ページに契印が必要になりますが、製本テープで製本すれば、製本テープの部分に契印をするだけで足ります。
割印と混同しやすいですが、割印は、文書が複数部数あるときに利用される押印方法で、契印は、1つの文書が複数ページあるときに利用される押印方法だと理解しておけばよいでしょう。
以下では、割印をする際の基本的なルールを説明します。
割印をする際の印章のサイズには特に決まりはありません。しかし、複数枚の文書にまたがって押印するという性質上、小さいサイズの印章ではうまく押印できませんので、以下のような割り印に特化した縦長サイズの印章が使いやすいでしょう。
割印に利用する印章は、契約書に押印した契約印でなくても問題ありません。契約印には実印を、割印には認印を利用することも可能です。
割印をする際は、複数の文書をまとめた状態から少しずらして重ねます。そして、すべての文書に印影が残るような位置に押印をします。
契約書が3部以上になると印章の長さが足りないこともありますが、その場合には、2か所に割印をすることも可能です。たとえば、A、B、Cという3つの契約書がある場合に、AとBに割印、BとCに割印をすることで、全体としてABCの文書の関連性を担保することができます。
なお、複数の当事者で割印をする場合には、最初に押印した印影がずれないように注意して押印しましょう。
割印を失敗してしまったときは、別の場所に押し直してください。
特別な訂正方法があるわけではありませんが、失敗した割印に重ねて押印することは避けましょう。このような方法では、印影がずれてしまい割印としての役割を果たすことができません。
契約書が印紙税法の定める課税文書に該当する場合には、収入印紙の貼付が必要になります。また、印紙税法では、契約書に収入印紙を貼付したときは、印紙と台紙とをまたぐようにして押印することが求められています。このような押印を収入印紙の割印または消印といいます。
収入印紙の割印は、収入印紙の再使用の防止を目的としたものですので、契約書の割印のように契約当事者全員で押す必要はありません。どちらか一方の割印さえあれば、収入印紙の割印としては十分です。また、会社の代表者印だけでなく、代理人や従業員の割印でも可能です。
電子契約書の場合、割印は必要となるのでしょうか。また、どのように改ざんなどを防止すればいいのでしょうか。
詳しく確認していきましょう。
電子契約書とは、電子データの形式で作成された契約書をいいます。一般的な紙媒体の契約書とは異なり、電子契約書は、契約内容を電子データによって保存・管理することが可能です。
電子データで保存・管理する契約書という性質上、紙媒体の契約書のように当事者の直筆での署名や押印はできませんので、当然割印も不要になります。
すでに述べたように、割印は、契約書の法的有効性とは無関係なものになりますので、割印がなかったとしても契約書が無効になるということはありません。そのため、電子契約書に割印がなかったとしても法的効力には何ら問題はありません。
割印は、文書の関連性を証明し、文書の改ざんを防止するという重要な役割があります。電子契約書で割印が不要だとすると、どのような方法で契約書の真正性を担保するのでしょうか。
電子契約書では、「電子署名」という方法により契約書の真正性を担保しています。電子署名とは、紙媒体の契約書におけるサインや印鑑に相当するものであり、電子証明書を用いた電子署名を行うことで、電子契約書の同一性の証明や改ざんの防止を図っています。
電子証明書は、紙媒体の契約書における「身分証明書」にあたるもので、認証局と呼ばれる第三者機関において厳しい審査を経て発行されます。そのため、電子証明書を用いて電子署名がなされた文書は、間違いなく本人により作成されたものとして、信用性が付与されます。
また、電子署名が付与された文書は、作成者以外の人が変更などを行うと警告が表示されますので、それにより契約書の改ざんを検知することが可能です。
このように電子契約書では、電子署名を用いることで、割印と同様に文書の改ざんを防止する効果がありますので、割印は不要とされています。
契約関係での悩み事は、弁護士に相談することをおすすめします。
契約書の取り交わしをする際には、割印、契印、訂正印、捨印などさまざまな押印を行うことになります。それぞれの押印の種類によって役割が異なりますので、正確に理解していなければ、契約締結後に思わぬ不利益を被るかもしれません。
企業の担当者では、どのように対応すればよいかわからないという場合には、まずは弁護士に相談しアドバイスを求めるとよいでしょう。
契約書を作成する際には、過去の契約書を流用したり、ひな形を利用したりする企業も多いと思います。しかし、当事者や取引内容が異なれば、当然契約内容も異なってきますので、過去の契約書やひな形では実情に合致しない可能性があります。また、相手方企業が契約書の作成をした場合には、自社に不利な条項が含まれている可能性もありますので、法的観点からしっかりとチェックする必要があります。
弁護士であれば、取引の実情に応じて、一から契約書を作成することができますので、契約内容をめぐって疑義が生じるリスクを回避することができます。また、弁護士によるリーガルチェックを利用すれば、自社に不利な条項も漏れなく発見し、修正することが可能です。
弁護士というとトラブルが生じたときに単発で依頼するというイメージを持たれる方も少なくありません。
しかし、企業活動においてはトラブルが生じてから対応していては手遅れになるケースがあります。安定的かつ継続的に発展していくためには、トラブルを未然に防止するという視点が重要です。
企業法務においては、日々さまざまな疑問や悩みが生じますが、顧問弁護士がいれば日常的に相談することができますので、トラブルの芽をあらかじめ摘み取ることができます。企業の頼もしい味方として機能しますので、この機会に顧問弁護士の利用をご検討ください。
契約書を取り交わす際には、契約書の関連性を証明し、改ざんを防止するためにも割印をすることが大切です。また、将来契約内容をめぐってトラブルにならないようにするためには、契約締結前に弁護士によるリーガルチェックを受けることが有効な手段です。
契約書を作成するにあたって、疑問や悩みがある場合には、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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