企業法務コラム
アプリをリリースする際には、円滑な運用のためにも利用に関するルールなどをまとめた「利用規約」を作成することが大切です。
ただし、利用規約の内容に不備があった場合、トラブルや利用者の減少につながるおそれがあるため注意が必要です。利用規約を作成する際には、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
本記事では、アプリの利用規約を作成する際に気を付けるべきポイントなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「利用規約」とは、アプリサービスの利用に関して、すべての利用者に共通して適用されるルールです。
スマートフォンなどのアプリサービスは、不特定多数の利用者に対して提供することが想定されます。
サービス提供者である事業者としては、個々の利用者との間でアプリの利用ルールを個別に合意することは事実上不可能です。
そこで、統一的なルールを定めた利用規約をあらかじめ定めた上で、すべての利用者に適用します。利用規約によって、統一的なルールに基づく円滑なアプリサービスの提供が可能となります。
アプリの利用規約に定めるべき内容は、対象サービスの内容や想定される利用者などによって個々に異なります。
インターネット上には利用規約のひな形が掲載されていることがありますが、ひな形をそのまま用いると、実際の運用に当たってトラブルが生じるリスクが高いです。
ひな形を一定の参考にする場合でも、実際に提供するアプリサービスの内容等に沿った形で条項を修正する必要があります。
アプリサービスの利用規約には、主に以下の内容が定められることが多いです。
アプリの利用規約では、そのアプリに特有の用語が多数用いられます。各用語の意味を明確化するため、定義をまとめた条項を定めましょう。
事業者が利用者に対して提供するアプリサービスの内容は、利用規約において明確に記載する必要があります。
利用者が利用できる機能の内容に加えて、事業者が対応しないことを明確にしたい事項についても明記し、サービスの範囲を明確化しましょう。
アプリ内課金の仕組みを導入する場合は、利用料金の金額・発生時期・支払方法などを利用規約に明記しましょう。
利用料金については、事業者と利用者の間でトラブルになるケースが非常に多いです。弁護士のアドバイスを受けながら、さまざまなトラブルに対応できるような条項を定めましょう。
アプリの利用に当たって、利用者がしてはならないこと(=禁止事項)を利用規約に明記しましょう。
たとえば法令に違反する行為・公序良俗に反する行為・反社会的行為などは、あらゆるアプリサービスにおいて共通して見られる禁止事項です。そのほか、アプリサービスの内容や性質に応じて、利用者にされたら困ることを禁止事項として掲げましょう。
利用規約に違反した利用者に対しては、利用禁止(強制解約)や損害賠償などの対応を行うことが考えられます。利用禁止や損害賠償については、利用規約においてそのルールを明確化しておきましょう。また、そのような強固な効果以外に、アカウント停止などの措置をとった際の、利用者から異議申し立てやクレームにおいても、あらかじめ定めた利用規約に基づいて処理していることを説明すると、問題が過熱せずにおさまる効果も期待できます。
アプリの利用規約においては、利用規約の変更手続きを定めておきましょう。事業者が一方的に利用規約を変更する場合は、変更手続きに関する定めがあるかどうかが、その有効性を判断する際の重要な要素となります。
具体的な利用規約の変更手続きの内容については、後述します。
アプリの利用に関して、事業者と利用者の間でトラブルが生じた際に、訴訟を提起する裁判所をあらかじめ指定しておきましょう。アプリの利用規約においては、事業者の本店所在地を管轄する裁判所を専属的合意管轄裁判所に指定するのが一般的です。
アプリの利用規約に対しては、民法における定型約款についてのルールが適用可能であると考えられています。
定型約款に関するルールとの関係で、アプリの利用規約を作成する際には、以下の各点に注意が必要です。
定型約款である利用規約をアプリ利用者に対して適用するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります(民法第548条の2第1項)。
アプリの利用規約については、申し込み画面などにおいて、事業者が利用者に対してあらかじめ表示する方法(=上記②)がとられることが多いです。
利用者が確実に利用規約を確認するように、申し込み画面や操作方法などを工夫しましょう。
アプリの利用規約の条項のうち、以下の要件をいずれも満たすものについては、事業者と利用者の間の合意内容から除外されてしまいます(民法第548条の2第2項)。
たとえば、事業者側の損害賠償責任を免除する条項や、利用者側の契約解除権を否定する条項などは、不当条項として合意内容から除外される可能性が高いのでご注意ください。
不当条項とまでは言えなくても、不意打ちになりかねない条項が含まれていることが広く知られれば、利用者側から不満が噴出してSNS等で炎上するおそれがあります。そうなれば、アプリや運営会社の評判が失墜する事態になりかねません。
たとえば、著作権が誰に帰属するかなどについて、実際に炎上したケースなども存在します。
利用規約において定めるルールは、利用者の目線でどのように捉えられるかを意識しつつ定めることが大切です。
一定の条件に該当する場合には、定型約款である利用規約を変更することで、事業者が利用者の同意を得ることなくサービス利用契約の内容を変更できます(民法第548条の4第1項)。
利用規約を変更するときは、その効力発生時期を定めた上で、変更の旨・変更後の利用規約の内容・効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法で周知しなければなりません(同条第2項)。
利用者に対して周知した効力発生時期が到来した時点で、利用規約の変更が効力を生じます(同条第3項)。
利用規約においては、上記の変更方法を明記しておきましょう。
アプリの利用規約を作成するに当たっては、アプリサービスの内容を適切に反映すること、利用者とのトラブルを想定した規定を盛り込むこと、民法における定型約款の規定を踏まえることなど、さまざまな注意点があります。そのためには、アプリサービスの内容や、提供している会社について良く理解している弁護士の方が最適化した利用規約を作りやすいです。
適切な内容の利用規約を作成するためには、弁護士のサポートを受けると安心です。
弁護士と顧問契約を締結すれば、普段からアプリサービスや会社についてよく理解している弁護士より、利用規約の内容について具体的なアドバイスを受けられます。利用者情報の取り扱い(個人情報保護)や利用者とのトラブルへの対応などについても、いつでもスムーズに相談可能です。
アプリサービスを提供する事業者や、今後アプリの提供を予定している事業者は、顧問弁護士との契約をご検討ください。
アプリの利用規約の内容は、個々のアプリサービスの内容・性質等に応じて設計しなければなりません。弁護士のサポートを受けながら、適切な内容の利用規約を作成しましょう。
アプリのリリースやアップデートなどに当たって、トラブルのリスクを防げる利用規約を作成したい事業者は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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