企業法務コラム
顧客や取引先との間で何らかのトラブルが生じると、裁判を起こされてしまうケースがあります。顧客や取引先から訴えられた場合、裁判所から訴状が送られてきますので、そのまま放置するのではなく、適切な対応をとらなくてはなりません。
具体的には、まずは答弁書を作成し、裁判所に提出することになりますが、答弁書はどのような方法で作成すればよいのでしょうか。
今回は、顧客や取引先から訴えられた場合における答弁書の作成方法や訴訟の流れについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
顧客や取引先から訴えられた場合、会社としては、まずはどのような対応をすればよいのでしょうか。
訴えられた場合には、裁判所から以下のような書類が送られてきます。
訴状には、原告の請求や訴訟提起に至る経緯や理由などが記載されていますので、まずは、訴状を確認して、相手がどのような理由(請求の原因)で、どのような請求(請求の趣旨)をしているのかを確認します。
企業が訴えられた場合には、顧客や取引先などとの間で何らかのトラブルが生じていたといえます。企業内には、部署ごとに担当する取引や業務が異なってきますので、当該トラブルがどの部署、どの担当者で発生していたのかを把握するためにも、企業が訴えられたという事実は企業内で共有することが大切です。
特に、訴えられた場合には、答弁書により反論を行っていくことになりますが、トラブルの当事者でなければ適切に反論を行うことができません。そのため、できるだけ早く関係部署との間で情報共有するようにしましょう。
裁判所から送られてくる「口頭弁論期日および答弁書催告状」には、第1回口頭弁論期日の日時、場所および答弁書の提出期限が記載されています。
裁判では、事実無根の訴えであったとしても、相手の訴えに適切に対応しなければ、欠席判決により相手の請求をすべて認める内容の判決が言い渡されてしまいます。そのため、身に覚えのない訴えであったとしても、相手の訴えを無視するのは禁物です。
そこで、第1回口頭弁論期日の日程を確認し、どのように対応していくのかを検討していく必要があります。
訴えられた被告は、期限までに答弁書を作成して、裁判所に提出しなくてはなりません。以下では、答弁書の概要と作成方法などについて説明します。
答弁書とは、原告の訴状に対する被告の言い分を記載した書面であり、被告が裁判所に最初に提出する書面です。訴訟では、その後も原告および被告間で書面により主張反論が繰り広げられていきますが、それ以降に提出する書面は、答弁書ではなく、「準備書面」と呼ばれます。
答弁書を提出せず、最初の口頭弁論期日を欠席すると、訴状記載の事実をすべて認めたものとみなされ、原告の請求をそのまま認める判決が言い渡される可能性があります。原告の請求や主張を争うためには、答弁書の提出が必要です。
なお、最初の口頭弁論期日に限り、答弁書を提出していれば欠席することもできます。
答弁書に記載すべき事項としては、主に以下のものが挙げられます。
① 請求の趣旨に対する答弁
請求の趣旨に対する答弁とは、訴状記載の「請求の趣旨」に対して、被告としてどのような裁判を求めるのかを明らかにする事項です。原告の請求を争う場合には、以下のような記載になります。
② 請求の原因に対する認否
請求の原因に対する認否とは、訴状記載の「請求の原因」に記載された事実についての認否を記載する事項です。認否は、事実を認めるかどうかに応じて、以下のように記載します。
なお、原告主張事実を「認める」と法律上の自白が成立し、後から争うことが困難になりますので、主要な事実の認否は、慎重に行わなければなりません。
③ 被告の主張
被告の主張とは、原告の請求および主張に対する、被告の反論を具体的に記載する事項です。主に、認否において否認した理由や被告の抗弁などを記載することになりますが、裁判所に有利な心証を抱いてもらうために、証拠に基づいて主張を行うことが大切です。
弁護士に答弁書の作成を依頼することで以下のようなメリットがあります。
① 期限までに対応できる
答弁書には提出期限がありますので、期限までに答弁書を作成して、裁判所に提出する必要があります。しかし、会社が訴えられる事案では、事実関係も複雑で、証拠も膨大な数が提出されていますので、期限までに対応するのが難しいケースも少なくありません。
弁護士であれば、依頼を受けたタイミングに応じた適切な対応をとることができますので、欠席判決という不利益を回避することが可能です。
なお、期日が近くなっている場合にも、ご相談いただければ手続のスケジュール調整なども弁護士として行うことができるため、焦って回答する必要はありません。
② 法的観点から適切な反論ができる
原告の主張に対して反論をする場合には、法的観点から適切な反論をすることが大切です。そのためには、法律の知識や経験が不可欠になりますので、答弁書の作成は、弁護士に任せるとよいでしょう。
特に、主要な事実の認否を誤ってしまうと、大きな不利益を被るおそれがありますので、弁護士に任せるのが安心です。
③ その後の対応も任せることができる
弁護士に依頼をすれば、答弁書の作成だけでなく、その後の訴訟対応も任せることができます。慣れない訴訟対応に時間や労力を割かれるのは、企業経営上も大きな損失となりますので、訴訟対応は弁護士に任せるとよいでしょう。また、弁護士が出席していれば、ご自身は期日に行かなくて良くなるのも、時間的拘束がなくなってメリットです。
答弁書の提出後、訴訟手続きはどのような流れで進むのでしょうか。以下では、一般的な民事訴訟の流れについて説明します。
裁判所により指定された日時、場所において、第1回口頭弁論期日が行われます。口頭弁論期日は、公開の法廷で行われ、原告による訴状の陳述と被告による答弁書の陳述が行われます。
被告が答弁書を提出している場合には、陳述擬制により答弁書が陳述されたものとみなされますので、第1回口頭弁論期日に限り欠席することも可能です。
第1回口頭弁論期日の終わりに次回期日が指定され、その後、1か月に1回のペースで期日が行われます。続行期日では、原告および被告の双方から主張反論が行われ、当該事案の争点を整理していきます。
具体的には、
・争いのある事実は何か
・争いのある事実のうち証拠により認定する必要がある事実は何か
・証拠による認定が必要な事実のうち、証人および当事者尋問が必要な事実は何か
を明らかにしていきます。
争点整理が終了した時点で、当事者は、証人および当事者本人の尋問を求めることができます。裁判所が証人および当事者尋問が必要と判断した場合には、証拠調べ期日において尋問が行われます。
争点整理がある程度できた段階や証拠調べ期日(尋問)の前後において、裁判所から和解の打診が行われることもあります。裁判所から提示された和解案について、当事者双方が合意した場合には、和解により訴訟は終了となります。
和解がまとまらない場合には、最終的に裁判所による判決が言い渡されます。判決に不服がある場合には、判決送達日から2週間以内であれば、控訴することが可能です。
訴訟対応にかかる費用としては、主に「訴訟費用」と「弁護士費用」の2つがあります。
訴訟費用とは、民事裁判の手続きを利用する際に発生する費用のことをいいます。
訴訟費用には、以下のようなものが含まれます。
訴訟費用は、訴訟を提起した原告が支払うことになりますが、最終的には、裁判で敗訴した当事者が負担することになります。
訴訟の対応を弁護士に依頼した場合、上記の訴訟費用とは別に弁護士費用が発生します。
弁護士費用には、主に以下のような項目が含まれます。
弁護士費用は、相手に請求する内容および金額によって異なってきます。また、訴訟費用は、最終的に敗訴者が負担することになりますが、弁護士費用は、裁判の結果にかかわらず、弁護士を依頼した当事者が負担しなければなりません。
なお、上記は一例であり、報酬体系は事案や弁護士によってさまざまな形があります。
訴えられてしまった場合の訴訟対応については、弁護士に相談することをおすすめします。
相手から訴えられたら、身に覚えのない訴えであったとしても、きちんと対応しなければなりません。相手の訴えを放置していると、欠席判決により、相手の請求がすべて認められてしまうおそれがありますので注意が必要です。
そのため、裁判所から訴状が届いたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談するようにしましょう。弁護士に相談すれば、訴状の内容を踏まえて、被告としてとるべき対応をアドバイスしてもらうことができます。
企業に法務部があれば、法務部が訴訟対応を行うことになりますが、そうでない企業では、不慣れな経営者などが訴訟対応を行う必要があります。弁護士に依頼をすれば、答弁書の作成や期日の対応は、すべて弁護士が対応しますので、当事者の負担はほとんどありません。
知識や経験がない方だと訴訟対応の誤りから、敗訴してしまうリスクもありますので、専門的な訴訟手続きは、弁護士に任せるのが安心です。
企業が顧客や取引先から訴えられたら、すぐに裁判所から届いた書類を確認し、今後の対応を検討していく必要があります。その際には、弁護士に相談することで、今後の対応についいてのアドバイスを受けることができ、弁護士に依頼すれば、今後の答弁書の作成や裁判期日の対応をすべて任せることも可能です。
顧客や取引先から訴えられてお困りの経営者の方は、まずは、訴訟対応実績が豊富なベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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