就業規則とは、事業場の労働者(従業員)に適用される労働条件や服務規律を定めた文書です。
就業規則の記載事項や作成・変更の手続きなどについて、労働基準法のルールをあらかじめ確認しておきましょう。
本コラムでは、就業規則の概要や労働基準法のルール、作成時の注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「就業規則」とは、事業場の労働者に共通して適用されるルールを定めた社内規程です。
事業場における労使関係や服務規律などを明確化することにより、使用者と労働者の間のトラブルを予防することを目的としています。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成および労働基準監督署への届け出が義務付けられています(労働基準法第89条第1項)。
就業規則の作成・届け出義務の有無は、事業場単位で判断されます。
たとえば、2つの事業場(事業場Aと事業場B)を有する会社において、常時使用する労働者が事業場Aでは9人、事業場Bでも9人だとします。
この場合、会社全体では18人の労働者を雇用していますが、事業場A・Bにおいて常時使用する労働者はいずれも10人未満なので、就業規則の作成・届け出義務は生じません。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となります。この場合、無効となった部分については、就業規則で定める労働条件が適用されます(労働契約法第12条)。
つまり、就業規則より悪い条件での個別契約はできないということです。
ただし、労働契約を締結した後で就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働条件を変更することは、原則として認められません(後述)。
就業規則を作成することのメリットは、大きく以下の3点です。
問題社員のトラブルから、
就業規則の作成・届け出義務がない会社においては、就業規則を作成しなくてもペナルティはありません。
ただし、労働条件や服務規律などが曖昧になり、労働者とのトラブルのリスクが高まる点に注意が必要です。
就業規則を作成しないと、労働基準監督官による是正勧告の対象となります。
また、就業規則の作成・届け出義務違反は刑事罰の対象とされており、「30万円以下の罰金」に処される可能性もあるので注意が必要です(労働基準法第120条第1号)。
就業規則の記載事項は、以下の3種類に分類されます(労働基準法89条)。
「絶対的必要記載事項」とは、就業規則に必ず定めなければならない事項です。
「相対的必要記載事項」とは、事業場におけるルールを定める場合には、就業規則に定めなければならない事項です。
「任意的記載事項」とは、絶対的必要記載事項または相対的必要記載事項に当たらない就業規則の記載事項です。
任意的記載事項として何を定めるかは、公序良俗等に反しない範囲で、使用者が自由に決めることができます。
就業規則には、絶対的必要記載事項および事業場において定めがある相対的必要記載事項を定める必要があります。
厚生労働省が公表している「モデル就業規則」を参考に、事業場の実態に合った内容の就業規則案を作成しましょう。
就業規則の作成に当たっては、その内容につき、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者の意見を聴く必要があります(労働基準法第90条第1項)。
その後、作成した就業規則を労働基準監督署に届け出ましょう。
届け出の際には、上記意見を記した意見書を添付しなければなりません(同条第2項)。
就業規則を変更する際の手続きも、基本的には作成時と同様です。
使用者において変更内容を決定した上で、労働組合または過半数代表者の意見を聴き、変更後の就業規則に労働者側意見書を添付して労働基準監督署へ届け出ます。
常時雇用する労働者が10人未満の事業場では、上記の記載事項・意見聴取・届け出に関する労働基準法の規定は適用されません。
使用者が任意に就業規則を作成・変更した上で、その内容を労働者に周知すれば足ります。
就業規則を作成・変更する際には、以下の各点に注意しましょう。
作成・変更した就業規則の内容は、以下のいずれかの方法によって労働者に周知する必要があります(労働基準法第106条第1項、同法施行規則第52条の2)。
就業規則の周知を怠った場合には、労働基準監督官の是正勧告や刑事罰の対象となるので要注意です。
労働契約を締結した後で就業規則を変更しても、労働条件を労働者の不利益に変更することは原則としてできません(労働契約法第9条)。
就業規則の変更による労働条件の不利益変更が認められるのは、以下の要件をいずれも満たす場合に限られます(労働契約法10条)。
就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更する場合は、その有効性について事前に弁護士のアドバイスを受けましょう。
新たに就業規則を作成する際には、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」を利用するのが便利ですが、モデル就業規則はあくまでも汎用的なテンプレートなので、社内事情との整合性のチェックが欠かせません。
弁護士のアドバイスを受けながら、自社の実態に合った内容に調整しましょう。
就業規則において、労働者の副業を制限する会社が多数見られます。
しかし、副業は労働者のプライベートな時間で行うものであるため、過度に制限する規定は公序良俗違反により無効となる可能性があり、また仮に有効であったとしても違反者に対して強い手段はとれないことがままあります。
副業制限規定を就業規則に定める場合には、その有効性について弁護士のアドバイスを受けましょう。
就業規則には、労働者の秘密保持義務を定めておきましょう。
営業秘密等の漏洩は、会社の業績や信用に対して重大な悪影響を及ぼします。
就業規則において秘密保持義務を定め、漏洩を発生させた労働者に対してのペナルティを設ければ、労働者側のセキュリティ意識の向上につながります。
就業規則の作成・変更を含めて、企業の労務管理についてはベリーベスト法律事務所へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、全国にオフィスを構える大規模な総合法律事務所です。
ベリーベストグループには社会保険労務士も在籍しており、ワンストップでご相談に対応することが可能です。
企業の担当者だけでは就業規則の作成・変更が難しい場合には、社会保険労務士へ相談されるとよいでしょう。
またお客さまのニーズやご予算に合わせて選べる顧問弁護士サービス(月額3980円/税込から)もご用意しておりますので、就業規則の作成以外にもあらゆる労働トラブルに対応が可能です。
企業によっては、相談することがそれほど多くなく、毎月高額な顧問料金を支払うことに抵抗があるというケースも少なくありません。
当事務所の顧問弁護士サービスであれば、必要なときに必要な分だけオプションを追加していく形で、お得に案件のご相談・ご依頼をしていただくことができます。
就業規則の作成以外にも、労働問題やトラブルについてお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。
問題社員のトラブルから、
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成した上で、労働基準監督署に届け出る義務があります。
労働基準法の規定を踏まえつつ、自社の実態に合った内容の就業規則を作成しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、労務管理に関する企業のご相談を随時受け付けております。
就業規則の作成・変更や労務管理などでお悩みの企業担当者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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